総理の反応
西暦2025年 3月15日
内閣危機管理センターとは、政府の危機管理活動の中枢となる施設だ。平時から24時間体制で情報を収集。緊急事態発生時には内閣危機管理監・内閣官房副長官補の指揮下、官邸連絡室・官邸対策室が設置される。
現在、災害が極めて激甚であるため、内閣総理大臣によって緊急災害対策本部が設置されていた。
そこで、内閣総理大臣である上村は重大な報告を受けていた。
「海上保安庁からの報告です。巡視船あたごの船員らが不審船からの敵性攻撃を受け、多くの死傷者が出たとのことです」
「何!?死者が出たのか!?」
「そのようです、総理」
「そんな……!」
上村はこれが夢であって欲しいと心の底からそう思った。
「何人だ?」
「調査中です。現在確認された死亡者は少なくとも10名以上になると見られています。未だ正確には把握出来ておりません」
「……頼むから嘘であってくれ」
彼はもう倒れようかなとさえ思った。次から次へと異常事態が……糞がッ!
「確認を急いでくれ!」
「我々に言われても……」
頭痛を必死で堪えている総理の姿に、秘書官の真下は問うた。
「……総理。大丈夫ですか?」
「これが大丈夫に見えるのかね、君には?」
「いえ。ただ、社交辞令的に聞いただけです」
「まぁ、そんなことは良い。報告はこれだけじゃないだろう?」
「はい。それで不審船の船員ですが……」
「捕縛したのかね!?」
上村の言葉は自然、大きくなった。
多数の死傷者を出したのだ。絶対に罪を償わせなければならない。
まぁ、本音は違う。そんな倫理的な問題ではない。
日本で何が起こっているのか……そして世界がどうなっているのか。それを判断するための情報が不足している現在、異変が起きてから、初めて公海から日本周辺海域に到達した船なのだ。何らかの情報を持っているかもしれない。この絶好の機会は絶対に逃すべきではない。
「現在、捕縛を確認したのはわずか5人とのことです」
「何だって!?それほど船員が少なかったのかね?」
「いえ、40名程度だと。ただ、殆どの船員は射殺されました」
「……つまりそれほど激しい戦闘だったということか」
「そう思われます。それと、一つ総理に確認して頂きたい報告がありまして……」
急に歯切れの悪くなる真下に疑問符を浮かべる上村。
「何だね?」
「それが……不審船の船員らは銃ではなく、刀剣類で戦闘を行っていたとの報告が海上保安庁より上がっております」
「……ハァ!?」
上がってきた報告は信じられないものだった。