対馬でニュース
西暦2025年 3月15日
『午後8時になりました。次のニュースです。今日、午後6時過ぎ、海上保安庁は対馬近海で海賊船らしき不審船を発見しました。不審船は海上保安庁所属の船舶を認めると、武力を行使し、やむなく交戦状態に至りました。双方に多数の死傷者と行方不明者が出ました。現在――――――――――――』
「え………?」
対馬近海で………!?
宮間は驚愕の表情を浮かべた。が、すぐに無表情に戻った。
対馬は最前線だ。韓国とか中国から不審船が来るのはいつものことだ。だが、海賊船らしき不審船とは………?
………もしかしたら、事態は最悪なのかもしれない。全国で経済恐慌が起こってるって言うし、対馬も例外ではない。対馬にいる韓国人たちが市庁に怒鳴り込んでいるし…………それに加えて海の向こうから侵略されたらひとたまりもないぞ………!?
宮間は疑問に思う。と、その時、背中越しから村岡一士が話しかけてきた。
「宮間二尉」
「村岡か、どうした?」
後ろを振り向くと村岡はその端正な顔をこちらに向けていた。そしてふわりと微笑んだ。
ドキッとした。
自衛隊では女性が少ないため、宮間には女性経験があまりなかった。だからか、不意打ちされるとどうしたら良いのか分からなくなる。
どぎまぎしている宮間が面白いのか村岡は爆笑した。
「宮間二尉!」
そして、あろうことか宮間に抱き着いてきた。
「お前、ちょ、離れろやボケっ!」
女性特有の香りは、宮間をくらりとさせた。必死で抱き着いた村岡を引きはがす。
男っ気が強い隊内では女性に慣れていない者の方が多いのだ。宮間もその一人である。
「宮間二尉って意外とちょろいっすね!」
「………!」
忌々しいヤツだ………
そんな言葉も、唐突に見せた寂しげな表情の村岡を見た瞬間、頭の中から吹っ飛んだ。
「村岡……どうした?相談なら乗るぞ」
「いえ、何でもないんです」
村岡は頭を振りながら言った。
「何でもないんです……」
村岡の瞳はどこか遠くを見ているかのようだった。
「な~んちゃって!!テヘ♥」
バコン、という盛大な音ともに村岡智恵は頭を押さえてうずくまった。宮間の拳が直撃したのだ。
「ヘルメットがあるので痛くないはずなのに………」
「いや~、お約束かと思いまして」