卒業式 2
「――俺から言いたいことは以上だ。言っても無駄だとは思うが、早めに帰れよー。じゃ、起立、注目、礼。」
「さよならー」
卒業式は、驚くほどあっという間に終わった。今回は(俺にしては珍しく)居眠りしていた訳ではなく、今まであったことを思い返しているうちに、気が付いたら終わっていたのだ。
クラスの連中の殆どが名残惜しそうに寄せ書きを書いたり、思出話をしたり、泣いている奴もいる。
仲間に入れてもらおうかとも思いつつ、鞄を手に教室の外に向かう。
すると、後ろから新奈の声が。
「紅!最後に皆と話さないの?」
「どうせ同窓会でまた近い内に会うだろ?思出話はまたその時にでもすりゃいいと思ってな。」
「………、それもそうね。」
反論してくると思いきや、納得したように頷くとそのまま着いてきた。
「…今日はどうしたんだ?」
「ふふっ…だって。ほら、前を見て。」
疑問符を頭に浮かべつつ、教室の外を振り返ると。
「…く、れ、な、」
タッタッという軽い足音と共にやってくるフワフワの茶髪が。
「いいぃぃぃーーー!!」
「のわあぁっ」
いつもの事だから倒れはしなかったが、それなりの衝撃と共に抱き着かれた。
「ちょ、伽楽!重いって!」
その茶髪の男子――伽楽は昔から俺を見るとこんな風にじゃれてくることが多く、一時期俺と伽楽はできてるんじゃないかという噂が起ったこともあったが、断じてそのような事はない。
最近は直ってきた筈だったが…
「伽楽、俺の体がもたないから止めてくれって言っただろ?」
「最後なんだし、今日くらいいいだろ~?」
「ねぇ伽楽、郁哉は?一緒じゃ無かったの?」
「あぁ、あいつは……うぉっ」
「時間が勿体無い。早く行くぞ。」
伽楽を紅から引き剥がした男子――郁哉は一言で言うと超イケメン。式が終わってからずっと女子たちに追い回されたらしく、疲れきった顔をしている。
「郁哉も最後の日まで大変ねー。あ、でもボタンは全部守りきったのね。」
「スゲーな、あの亡者達から逃げ切ったのか!?」
女なら誰もが欲しがる、好きな人の制服の第2ボタン。だが、郁哉の制服には全てのボタンが綺麗に付いている。
「当たり前だろ。約束だからな。」
卒業式が終わったら、四人でボタンを交換しようと約束していた。正直、郁哉のボタンは全部無くなるだろうと思っていたが、今回はいい意味で期待外れのようだ。
おっと、忘れるところだった。
「ちょっと待てよ、交換の前にやることがあるだろ?」
「ちゃんと予約してあるから慌てなくても大丈夫よ紅。」
高校を卒業したら四人ともバラバラになる。だから、今日だけは一日一緒に過ごすと決めていたのだ。
「打ち上げだー!!」
「紅も新奈も、早く来ないと置いていくぞ。」
まずはカラオケ。そしたら街で買い物して、ゲーセン行って、ファミレス行って……
(やばい、楽しみだ!)
今日が永遠に終わらなければいいと、願った。




