卒業式
ぱちり、と目を開けると、そこに映るのは自室の天井。
ドンドンと誰かが扉を叩く音がしている。
まだ眠い……
「紅、紅!いい加減起きて!こんな大事な日に寝坊しないで!」
ハッとして時計を見ると、時計の針はそれぞれ8と1を指している。
―――8時5分!?
「やばっ………ごめん新奈、先に行っててくれ!」
「もう、絶対に遅れないでよね!」
パタパタと新奈が走る音を聞いている余裕もない。制服に着替えて適当に髪を解かして、部屋をとびだした。
俺と新奈は、幼い頃に親に捨てられた。でも、近くに住んでいる親切なアパートの管理人が俺達を拾ってくれた。
そのアパートの管理人――真紀さんが今までずっと俺達を育ててくれたお蔭で、俺達は今日、高校の卒業式を迎えられる。
俺達が通っていたのは田舎の高校で生徒も少ないが、この三年間はそれなりに楽しかった。仲間とバカやって騒いで、しょっちゅう赤点ギリギリだけど、仲間に助けられたり助けたり。
取り敢えず、俺が言いたいのは。
「…卒業、したくねぇな。」
「何いってんのよ今更、仕方ないでしょ。」
久しぶりに教室の角の席で窓の外を眺めている俺に話しかけてきたのは、やっぱり新奈。
「だって、なんかメンドクサイじゃん。他の奴はどーだか知らないけど、俺はまだまだ高校っていうぬるま湯に浸かっていたいんだよ。」
そう言って、机に突っ伏す。
「それでカッコつけているつもりなの?ほら、もう体育館前に収集かかってるから、行こ!」
「うぅー…」
新奈に引き摺られつつ、体育館前に向かう。
あぁ、憂鬱だ。
卒業式は面倒臭くて嫌だ。でも、そんな事は大して気にならない。俺が嫌なのはその後。卒業したら、俺は地域の役場に就職。新奈は奨学金で四年制大学に進学。他の奴だって、皆各々の道を生きていく。
この退屈な世界を構成しているものの一部となり、世間の言う「普通の生活」をしていく。それが嫌で嫌で仕方がない。
俺達は、変わっているようで変わらない日々を送っていくのだろうか。
今までも、今も、これからも。




