吸血姫(序盤を統合し、加筆修正しました)
スイーツ編も改稿したい。待ってて。
ただ果てしなく広がり続ける砂漠。そこで私は、たった一人で歩いていた。自分がどうしてここを歩いているのかわからない。自分が誰なのかすらわからない。でもたった一つ
「世界をめぐり、悩める少女を救え」
誰の言葉かわからない。でも、どうしてだかこの言葉に従わないといけない。そんな気がする。だから歩き続けた。
そして何日か歩き続け、ついに建物を発見した。ああ、やっとだ。やっと食事にありつける。喉もカラカラなんだ。水もたくさん飲みたい。そう考えながら歩き続ける。しかし、いざ建物に近づいてみると人の気配はなく、すでに廃墟と化している。誰かに出会える。空腹と喉の渇きを癒してもらえる。そんな淡い期待は打ち砕かれた男。しかたない。ひとまず廃墟の中を探索してみよう。何かいいものがあるかもしれない。そう思って動き出したその時、
「あら?珍しいわね。こんなところに人間が来るなんて。何十年ぶりかしら」
美しい少女が背後に立っていた。人の気配なんてなかったはずなのに。
「こんにちは。突然で悪いんだけど、食料と水を分けて欲しいんだ。お家の人はいないかな」
「家の人?そんなのいないわ。私人間じゃないのよ?」
少女がニヤリと笑う。言われてからよくよくみてみると、少女の背中には蝙蝠のような翼が生えていた。口元も、鋭利な犬歯がのぞいている。
「吸血鬼さんなのかい?」
「……吸血鬼さん……まあそうだけど。ねえあなた。吸血鬼が怖くないのかしら」
「吸血鬼は怖いよ。でも君は可愛い女の子だからね。怖さなんて気にならないよ」
「……そう。変わってるのね。いいわ。ついてきなさい。あなた、少しだけおもしろいから、生かしておいてあげる」
「ありがとう。えっと、なにちゃんかな」
「スカーレットよ。ちゃんはいらない。私あなたより年上なのよ?」
「そっか。よろしくね。スカーレット」
スカーレットに連れられるまま砂漠を歩き、オアシスにやってきた。異様に広いオアシスだ。砂漠のど真ん中なのに、妙に緑が多い。畑もあるみたいだ。
「吸血鬼って農業もするの?」
「普通はしないわ。私が特別なの。私はご飯だけでも生きていけるから」
自分を襲い、血を吸う必要性もないということだろうか。ラッキーだったね。
「はい。ここよ。そこに汲み置きの水があるから、とりあえずそれでも飲んで待ってなさい」
「ありがとう。スカーレット」
ニコリと微笑みながら告げると、スカーレットは顔を赤くしてどこかへ行ってしまった。
しばらく待っていると、料理を持ったスカーレットがやってきた。ああ、やっとだ……?
「妙に気合の入った前菜だね」
「別に気合いなんか入れてないわ。あと、これが主菜兼主食よ」
山盛りのサラダを目の前に出された。
「いつもこんな食事を食べてるの?」
「何か言いたいことがあるの?」
「……いや」
「当然でしょ。他になにがあるっていうのよ。こんな砂漠に。この野菜だって本来は育たないはずの環境なのよ?」
「……ありがたくいただくよ。ありがとうね。スカーレット」
「……っ。」
また顔を赤くするスカーレット。かわいい。
「……待ちなさい。ねえあなた。ちょっと立って」
「?」
言われた通りに立つ。すると
ぱんぱん……むにっ
「あっ……」
「やっぱり。妙な感じがすると思ったら、あなた男だったのね」
「……男が珍しいの?」
「え?……ああ、そう。そうね。多分あなたはこの世でたった一人の男よ」
「え?」
どういうこと?スカーレットはどうしてそう思うんだろう。
……迂闊にあなたを殺してたら、私が消されていたかもね。そう呟くスカーレット。よくわからない。でもいいや。あんまり聞かない方が良さそうだしね。とりあえず……
「おいしかったよ。スカーレット。ご馳走様」
「ええ。お粗末さま」
「ねえスカーレット。私と遊ぼうよ」
こんなに可愛い女の子には、もっと笑っていて欲しいな。だから、
「姫。お手を拝借いたします」
「……え?ちょっと?なっ、なにを……」
いっぱい遊ぼうよ。
……
「アハハッ。こんなの子供騙しの遊具、なんて思ってたけど、案外楽しいものね」
オアシスの木に蔦で作ったロープで木の板を結び、ブランコを作ったのだ。
「ねえ。あなたも乗ってみなさいよ。ほら早く」
背中に回り込まれ、ほらほらと押される。結構力が強いな。
「っ!案外……!スピードが出るものだね……落ちないかヒヤヒヤしてしまうよ」
作った木のブランコ。少女が乗る分にはともかく、男自身が乗るにはどうにも心もとなく感じてしまう。ああ、バキッといかないでね。そんな願いを込めながら、控えめに漕ぐ男。
「もっとスピードを出しなさいよ!ほら、私が押してあげるわ。それっ!」
「……」
「アハハッ!そーれ!アハハ!」
男は心のうちで悲鳴を上げながら、しかしとても眩しい笑顔で笑う少女を前に何も言えず、ただ微笑みながらブランコに揺られていた。
「ああ、こんなに楽しかったのはいつぶりかしら。あなたのおかげでとても有意義な時を過ごせたわ」
「こちらこそ。こんなに思いっきり遊んだのはいつぶりかわからないよ」
「……ああ。いいわねその顔。あなたのその表情。好きよ」
そう言って少女は笑う。かわいいな。スカーレット。私も君のその表情が、大好きになったよ。
「……?ねえ、私の顔を見つめてどうしたの」
「君ともっと仲良くなりたいと、そう思っていたんだ」
「あら、奇遇ね。私ももっとあなたのことを知りたいわ。でも……照れずにもっとはっきり言ってくれていいのよ」
「どういう意味?」
「私に子を産ませたい。そう思ったのでしょう?異性セックスというもの。文献の中でしか知らなかった概念だけど、今ならきちんと理解できる。だってあなたと少し会話するだけで、こんなにも昂ってしまうんですもの。あなたもそうなのでしょう?」
「……そうだね。私はスカーレットのこと、好きだよ」
「ええ。そうでしょう。私、初めて会った時からあなたのことが気になってしまったもの。あなたもそうあって然るべきだわ」
「……そうだね」
とりあえず微笑んで、スカーレットの手をとった。家に帰ろう。
……
「ねえ。あなたに頼みたいことがあるの」
家に帰った後、スカーレットは男に言った。
「私にできることかな」
「ええ。ここからずっと東に行ったところに、天まで届く、とても高い塔があるわ。そこに住んでいる私の友人から、トーカキという道具をもらってきて欲しいの」
「道具を貰えばいいの?」
「そう。トーカキは、呪いを解くための魔道具なの。それがあれば、私にかけられた呪いも解けるわ」
「スカーレットって、呪われてたの?」
「ええ。こんな小さい体が、本来の姿なわけないでしょう?」
「……小さいスカーレットでも私は好きだよ?」
「……そういう話をしてるんじゃないわ」
頬を染めるスカーレット。
「とにかく!お願いしたいの。私は呪いでここから動けないしね」
「スカーレットの友人に頼んで持ってきてもらうことはできないの?」
「私への愛がないとダメなの。友愛ではなくね。だから一生解くことのできない呪いだと思っていたのだけれど……」
熱っぽい視線を送ってくるスカーレット。照れちゃうよ。
「なるほど。了解したよ。君のいうとおり、まずは東へ目指してみよう。どうせ行く宛もなかったしね」
「ええ。明日の朝出発なさい。ちゃんと食料と水と……お金も用意してあげる。無事に帰ってくるのよ」
「うん。ありがとう」
「そして最後に。あなた名前がないんでしょう。私がつけてあげるわ」
そう言ってスカーレットは少し逡巡したかと思うと
「シアンよ。私の対となる名前をあげる。光栄に思いなさい!」
「シアン。……謹んで拝受いたします。お姫様」
翌朝。旅立って行った。
ワンチャンしばらく辻褄が合わないとこが出ます。ゆるして。頑張って修正するから。




