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俺の事が嫌いな幼馴染に好感度逆転アプリを使ってみた

作者: しぃ
掲載日:2026/03/06

 俺、月島(つきしま)(みなと)は、幼馴染である藤宮(ふじみや)綾乃(あやの)に嫌われている。

 特に嫌われるような事をした覚えはないのだが、何故かいつの間にか嫌われていた。


 嫌われてはいるのだが、毎朝一緒に通学している。

 なんでも、綾乃がストーカーに追われた事があるとかなんだとかで、一緒に通学しろと親に言われたのだ。


 そんなこんなで今日も、俺は俺の事が嫌いな綾乃と一緒に通学する。


「遅いんだけど。もっと早くしてって、いっつも言ってるよね?」

「悪い……おはよう」

「…………」


 家のドアを開くなり、綾乃の毒舌が飛んでくる。

 謝りながら挨拶をしても、綾乃は返してくれず、スタスタと歩き始めた。


 綾乃の背中を追い掛けながら、再度謝る。


「な、なあ、悪かったって……」

「悪かったと思うなら、言葉じゃなくて行動で示して。明日はもっと早く来なさい」

「分かったよ……」


 一度もこちらを向く事なくそう言った綾乃に頷く。


 そういえば、ここ最近、ずっと目を合わせてもらえない気がする。


 いっその事、なんで嫌われているのか訊いてみようか。


「……なあ、俺、何か嫌われるような事したか?」

「……はぁ? 何を言っているの?」

「い、いや……だって、なんか俺にだけ冷たいし、目も合わせてくれないし……」

「目を合わせないだけでそんなに落ち込むとか、あまりにも精神が幼いわよ。そういう事をチマチマ言っているから、いつまでも彼女ができないんじゃないの?」

「うっせ……余計なお世話だ。彼女なんて作ろうと思えば作れるわ」

「そう? じゃあ作ってみたら?」

「…………」


 言い返せなかった。

 ていうか、上手い事話を逸らされたせいで、結局理由が聞けなかった。


 ただともかく、俺が嫌われているという事は、確からしい。




 あー、もう!! なんで私はいっつもこうなんだろう!!


 (綾乃)は湊の前を歩きながら、心の中で絶叫した。


 私は湊の事がずっと好きなのに……いっつも自分に正直になれない。

 湊の顔を見るとなんだか胸が熱くなって、目を合わせようものなら顔を真っ赤にしてしまう。だから、ずっと目を合わせられない。

 本当は湊ともっと話したいのに、何故か口からは毒舌ばかりが出てきてしまう。


「…………」


 湊、怒ってないかな?

 ……彼女なんて作ろうと思えば作れる、って言ってたけど……本当に作ってしまったらどうしよう。

 私は用済み? こうやって、毎朝通学する事もできない?


 ……それは、嫌だ。


 でも、かといって、これ以上関係を進める事もできない。


 私はもどかしさから段々歩調を速めて、学校に向かった。







 その日の学校終わり。

 ()はベッドに寝っ転がって、スマホを見ていた。


 ボーッと動画を眺めているだけだったのだが……突然、通知がピロンと鳴った。


「なんだ……?」


 通知には、名前もアイコンも無く、ただ『通知』とだけ表示されていた。

 訝しくなりながらも、それをタップする。


「わっ!?」


 すると、画面に突然『インストール中…』という表示が出てきた。

 キャンセルボタンを探すが、どこにも見当たらない。

 あたふたしている内に、『インストール完了』という表示と共に、ホーム画面に謎のアプリが追加された。


 名前が無く、アイコンはハートマーク。


「……なんなんだ、これ」


 少し気になったので、ハートマークのアイコンをタップし、アプリを開く。


 キュイン……という謎の効果音と共にアプリが立ち上がった。

 そこには、『好感度逆転アプリ』と表示されている。


「えーと……何々? 『名前を入力した相手の好感度を逆転させる事ができます。一度使用した相手には再使用できません』?」


 そこに書かれていた説明を見て、俺は鼻で笑った。


「こんなの、有り得るわけねえだろ……はっ、馬鹿馬鹿し」


 そう思ってアプリを閉じようとしたのだが……ふと、気紛れに、名前入力欄をタップした。


 有り得ないだろうが……もし本物なら……。


 減るものでもない。

 俺はスマホを操作して、入力欄に『藤宮綾乃』と入力した。


「…………」


 意を決して、『逆転』ボタンを押した。


 その場で何が起こるわけでもなく、アプリが本物なのかは、明日まで分からない。


 俺はスマホを閉じて部屋の電気を消し、眠りに就いた。







 翌日の朝。

 いつも通り朝食を済ませ朝の準備をし、家を出たのだが――綾乃が、居なかった。


 なんだ? 珍しく寝坊か?


 そう思い、スマホのSNSアプリで綾乃にメッセージを送る。

 しかし、一向に既読が付かない。

 通話を掛けてみても、最終的に『応答なし』と言われた。


 ……なんなんだ?


 俺は怪訝な顔になりながらスマホを仕舞い、隣の綾乃の家のインターホンを鳴らした。


「は~い」


 家から出てきたのは綾乃ではなく、綾乃の母親の綾音さんだった。


「あら? 湊くん? どうしたの?」

「あの……綾乃、居ませんか? 今朝はこっちに居なかったんですけど……」

「あらぁ? おかしいわね、綾乃なら、大分前に出ていったけど……」

「……?」


 その割には、綾乃と会っていない。

 もしや……例のストーカーとやらに遭遇してしまったのか?


「あの……メッセージも、既読が付かないんです」

「本当に? ちょっと待ってね……」


 綾音さんはスマホを取り出すと、何やら操作した。


 そして数十秒後、俺に言った。


「あら、私は既読が付いたわよ? ……もう学校に居るって」

「あ、そうなんですか……すみません、お騒がせして」

「ううん、大丈夫よ。それより、綾乃と喧嘩でもしたの? 普段は一緒に通学してるわよね?」

「はい……喧嘩とかした覚えはないんですけど……」

「そう……」


 首を傾げる綾音さんに頭を下げ、俺は学校へと向かった。







 学校に着くと、俺は教室に駆けこんだ。

 教室には、普段と変わらない様子で、俺の隣の席に座りスマホを弄っている綾乃が居た。


 俺は自分の席に鞄を置きながら、綾乃に話しかける。


「なあ……今日、なんか用事あったのか? 朝居なかったけど……」

「…………」


 綾乃は俺を無視して、スマホを弄り続ける。


「なあ、綾乃――」

「……チッ」


 舌打ち。


 綾乃は無言でスマホを閉じると、女子の友達の元へと向かっていった。


 ……なんなんだ?

 これまでも嫌われてるとは感じていたが、それでも無視されたり、あんなにあからさまに舌打ちされる事は無かった。


 俺は綾乃の様子を不自然に思いながらも、黙って椅子に座る事しかできなかった。







 その日一日、綾乃は俺を無視し続けた。

 授業中に分からないところを訊いても、ペア活動になっても、綾乃はずっと俺を無視した。


「……綾乃、流石にそろそろ機嫌を治してくれないか……? 悪い事したなら、いくらでも謝るから……」


 ずっと無視され続けて傷付いた俺は、ホームルーム終わりに、綾乃に話しかけた。


 すると、綾乃は露骨に嫌な顔をして、舌打ちを一つ。

 そして、早口で言い切った。


「謝るなら、私の家の前で24時間土下座でもする事ね。ああ、もし本当にやったら、警察に通報するから。あと……」


 一呼吸置いて、綾乃は俺の目を真っ直ぐと見た。


「大嫌いよ。二度と話しかけないでちょうだい」


 そして、綾乃は教室から出ていった。


 残された俺は、呆然と立ち尽くす事しかできなかった。

 もし好評であれば、連載版を書こうかな……と考えたり。

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