俺の事が嫌いな幼馴染に好感度逆転アプリを使ってみた
俺、月島湊は、幼馴染である藤宮綾乃に嫌われている。
特に嫌われるような事をした覚えはないのだが、何故かいつの間にか嫌われていた。
嫌われてはいるのだが、毎朝一緒に通学している。
なんでも、綾乃がストーカーに追われた事があるとかなんだとかで、一緒に通学しろと親に言われたのだ。
そんなこんなで今日も、俺は俺の事が嫌いな綾乃と一緒に通学する。
「遅いんだけど。もっと早くしてって、いっつも言ってるよね?」
「悪い……おはよう」
「…………」
家のドアを開くなり、綾乃の毒舌が飛んでくる。
謝りながら挨拶をしても、綾乃は返してくれず、スタスタと歩き始めた。
綾乃の背中を追い掛けながら、再度謝る。
「な、なあ、悪かったって……」
「悪かったと思うなら、言葉じゃなくて行動で示して。明日はもっと早く来なさい」
「分かったよ……」
一度もこちらを向く事なくそう言った綾乃に頷く。
そういえば、ここ最近、ずっと目を合わせてもらえない気がする。
いっその事、なんで嫌われているのか訊いてみようか。
「……なあ、俺、何か嫌われるような事したか?」
「……はぁ? 何を言っているの?」
「い、いや……だって、なんか俺にだけ冷たいし、目も合わせてくれないし……」
「目を合わせないだけでそんなに落ち込むとか、あまりにも精神が幼いわよ。そういう事をチマチマ言っているから、いつまでも彼女ができないんじゃないの?」
「うっせ……余計なお世話だ。彼女なんて作ろうと思えば作れるわ」
「そう? じゃあ作ってみたら?」
「…………」
言い返せなかった。
ていうか、上手い事話を逸らされたせいで、結局理由が聞けなかった。
ただともかく、俺が嫌われているという事は、確からしい。
あー、もう!! なんで私はいっつもこうなんだろう!!
私は湊の前を歩きながら、心の中で絶叫した。
私は湊の事がずっと好きなのに……いっつも自分に正直になれない。
湊の顔を見るとなんだか胸が熱くなって、目を合わせようものなら顔を真っ赤にしてしまう。だから、ずっと目を合わせられない。
本当は湊ともっと話したいのに、何故か口からは毒舌ばかりが出てきてしまう。
「…………」
湊、怒ってないかな?
……彼女なんて作ろうと思えば作れる、って言ってたけど……本当に作ってしまったらどうしよう。
私は用済み? こうやって、毎朝通学する事もできない?
……それは、嫌だ。
でも、かといって、これ以上関係を進める事もできない。
私はもどかしさから段々歩調を速めて、学校に向かった。
その日の学校終わり。
俺はベッドに寝っ転がって、スマホを見ていた。
ボーッと動画を眺めているだけだったのだが……突然、通知がピロンと鳴った。
「なんだ……?」
通知には、名前もアイコンも無く、ただ『通知』とだけ表示されていた。
訝しくなりながらも、それをタップする。
「わっ!?」
すると、画面に突然『インストール中…』という表示が出てきた。
キャンセルボタンを探すが、どこにも見当たらない。
あたふたしている内に、『インストール完了』という表示と共に、ホーム画面に謎のアプリが追加された。
名前が無く、アイコンはハートマーク。
「……なんなんだ、これ」
少し気になったので、ハートマークのアイコンをタップし、アプリを開く。
キュイン……という謎の効果音と共にアプリが立ち上がった。
そこには、『好感度逆転アプリ』と表示されている。
「えーと……何々? 『名前を入力した相手の好感度を逆転させる事ができます。一度使用した相手には再使用できません』?」
そこに書かれていた説明を見て、俺は鼻で笑った。
「こんなの、有り得るわけねえだろ……はっ、馬鹿馬鹿し」
そう思ってアプリを閉じようとしたのだが……ふと、気紛れに、名前入力欄をタップした。
有り得ないだろうが……もし本物なら……。
減るものでもない。
俺はスマホを操作して、入力欄に『藤宮綾乃』と入力した。
「…………」
意を決して、『逆転』ボタンを押した。
その場で何が起こるわけでもなく、アプリが本物なのかは、明日まで分からない。
俺はスマホを閉じて部屋の電気を消し、眠りに就いた。
翌日の朝。
いつも通り朝食を済ませ朝の準備をし、家を出たのだが――綾乃が、居なかった。
なんだ? 珍しく寝坊か?
そう思い、スマホのSNSアプリで綾乃にメッセージを送る。
しかし、一向に既読が付かない。
通話を掛けてみても、最終的に『応答なし』と言われた。
……なんなんだ?
俺は怪訝な顔になりながらスマホを仕舞い、隣の綾乃の家のインターホンを鳴らした。
「は~い」
家から出てきたのは綾乃ではなく、綾乃の母親の綾音さんだった。
「あら? 湊くん? どうしたの?」
「あの……綾乃、居ませんか? 今朝はこっちに居なかったんですけど……」
「あらぁ? おかしいわね、綾乃なら、大分前に出ていったけど……」
「……?」
その割には、綾乃と会っていない。
もしや……例のストーカーとやらに遭遇してしまったのか?
「あの……メッセージも、既読が付かないんです」
「本当に? ちょっと待ってね……」
綾音さんはスマホを取り出すと、何やら操作した。
そして数十秒後、俺に言った。
「あら、私は既読が付いたわよ? ……もう学校に居るって」
「あ、そうなんですか……すみません、お騒がせして」
「ううん、大丈夫よ。それより、綾乃と喧嘩でもしたの? 普段は一緒に通学してるわよね?」
「はい……喧嘩とかした覚えはないんですけど……」
「そう……」
首を傾げる綾音さんに頭を下げ、俺は学校へと向かった。
学校に着くと、俺は教室に駆けこんだ。
教室には、普段と変わらない様子で、俺の隣の席に座りスマホを弄っている綾乃が居た。
俺は自分の席に鞄を置きながら、綾乃に話しかける。
「なあ……今日、なんか用事あったのか? 朝居なかったけど……」
「…………」
綾乃は俺を無視して、スマホを弄り続ける。
「なあ、綾乃――」
「……チッ」
舌打ち。
綾乃は無言でスマホを閉じると、女子の友達の元へと向かっていった。
……なんなんだ?
これまでも嫌われてるとは感じていたが、それでも無視されたり、あんなにあからさまに舌打ちされる事は無かった。
俺は綾乃の様子を不自然に思いながらも、黙って椅子に座る事しかできなかった。
その日一日、綾乃は俺を無視し続けた。
授業中に分からないところを訊いても、ペア活動になっても、綾乃はずっと俺を無視した。
「……綾乃、流石にそろそろ機嫌を治してくれないか……? 悪い事したなら、いくらでも謝るから……」
ずっと無視され続けて傷付いた俺は、ホームルーム終わりに、綾乃に話しかけた。
すると、綾乃は露骨に嫌な顔をして、舌打ちを一つ。
そして、早口で言い切った。
「謝るなら、私の家の前で24時間土下座でもする事ね。ああ、もし本当にやったら、警察に通報するから。あと……」
一呼吸置いて、綾乃は俺の目を真っ直ぐと見た。
「大嫌いよ。二度と話しかけないでちょうだい」
そして、綾乃は教室から出ていった。
残された俺は、呆然と立ち尽くす事しかできなかった。
もし好評であれば、連載版を書こうかな……と考えたり。
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