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詩小説へのはるかな道 第51話 こども食堂のミナ

作者: 水谷れい

原詩:図書館のミナ


古い図書館の児童書のコーナー

靴を脱ぎ 座り込んで本を読めるスペースがある

初めのころは 絵本を読んでもらい

そのうち 文字を知って一人で読むようになる

たくさんの子どもたちが

この場所から巣立っていった


時には子どもたちの声が響く

色とりどりの本の棚

絵本も図鑑も児童書も並んでいて

子どもたちの夢をひらく手助けをしていた

そんな穏やかな場所


その国に戦の気配が忍び寄ってきた

軍事費に国の予算は取られ

図書館への補助金は削られていく


児童書を担当する司書のミナは困り果てた

購入のほとんどは一般書に向けられ

新しい児童書は数冊しか買えない

子どもの本は傷みやすいもの

修理するにも限度がある


ミナは いくつもの夜を眠れずに過ごした

そして呼びかけることにした


町のみなさん、子どもの本を寄贈していただけませんか

児童書の著者のみなさん、著書を寄贈していただけませんか


この古い図書館に 本が集まるかどうか

まだわからない

しかし 希望はある


ーーーーーーー


詩小説: こども食堂のミナ


ミナはこども食堂で、子どもたちにお弁当を作っていました。

市の補助があるうちは、色とりどりのおかずを詰めて、みんなに喜ばれていました。

唐揚げ、卵焼き、煮物、果物。

子どもたちは「今日は何かな」とわくわくしながら、こども食堂に集まりました。


ところがある日、補助が打ち切られ、材料費はぐっと減ってしまいます。

ミナは「もう豪華なお弁当は作れない」と肩を落としました。

冷蔵庫の中は寂しくなりました。

それでも彼女は工夫を重ねました。

畑で採れた野菜を漬け物にしたり、パンの耳を揚げておやつにしたり。

見た目は質素でも、子どもたちは「ミナさんのお弁当、あったかいね」と笑いました。

お腹だけでなく心も満たされるような、そんな味だったのです。


ある日、子どもたちの一人が「うちのおばあちゃんが梅干し作ってるよ」と言いました。

翌週には瓶いっぱいの梅干しが届きました。

別の子は「うちの鶏が卵を産んだ」と持ってきてくれました。

やがて、こども食堂を応援する人たちが少しずつ材料を持ち寄るようになりました。

梅干しを届けてくれる人、卵を分けてくれる人、畑のトマトをかごいっぱいに持ってくる人。

ミナはその材料を一つひとつ大切に使いました。

ご飯の真ん中には、蜂蜜と和えた梅干しのペースト。

卵焼きの黄色や、トマトの赤は彩りとしてお弁当箱を明るくしました。

子どもたちは

「おばあちゃんの梅干しだ」

「今日はうちの卵だ」

「これはうちのトマトだ」と誇らしげに食べました。


こうして、こども食堂のお弁当は再び彩りを取り戻しました。

以前のような豪華さではないけれど、町の人たちの心が詰まったお弁当でした。

食べるたびに「みんなで作ったんだね」という気持ちが広がりました。

ミナは思ったのです。

「お弁当は材料だけじゃない。

人の気持ちが集まれば、どんな料理よりも温かくなるんだ」と。


=====


わたしの詩小説をもとにAI君が詠んだ連作短歌です。


連作短歌:こども食堂のミナ


色とりどり

唐揚げ卵焼き果物に

子らの瞳は

「今日は何かな」


補助絶え

冷蔵庫には風の音

肩を落とせど

工夫の火灯す


漬け物に

パン耳揚げておやつとす

「温かいね」と

笑う子の声


梅干しを

瓶に詰めて届く手よ

卵とトマト

町の彩り


お弁当は

材料だけにあらずして

心を集め

温かき味

詩をショートショートにする試みです。

詩小説と呼ぶことにしました。

その詩小説をもとに詠んでくれたAI君の連作短歌も載せます。

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