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 聞き間違いようのないくらいドきっぱり断ったら、理解出来ない!とか信じられない!みたいな目を向けられた。

 王姉様と王弟殿下が爆笑しております。

 私側のギルド関係者も遠慮無く爆笑しております。

 権力者なご老人方も爆笑しております。

 宰相をはじめ大臣達はすがるような目を向けてくんな!


「ククククク、はぁー、面白い!こんなに笑ったのは子供の頃以来だわ!あー、可笑しいったらないわね!自分勝手に婚約を破棄して、悪評をばら蒔いたくせに、今更すがろうなどと、恥知らずもここまでくると笑い話ね!そこに居る恥知らずの親も同様にね!これまでこんな愚物を玉座に据えて居たなんて、よくこの国は潰れなかったわねぇ?」


「はぁ~、姉上、仕方ないでしょう?御輿として担ぐだけなら、余計な知恵の無い愚物の方が操り易いのですから」


 そう言いながらチラッと宰相さんの方を見る王弟殿下。

 王姉様は宰相と共謀してる貴族達をチラ見した。

 そんなお二方から目を逸らす貴族家当主多数。

 本当にこの国大丈夫なのか?と他人事ながら少し心配になった。


 権力強めのご老人方が息子である当主達を諌め、国王様と王妃様を引退させる事が決定された。

 余生は離宮で軟禁される事に。

 当然王太子も王族籍剥奪。

 既に肉体関係がある妹と結婚させ、公爵家に婿として出されることに。

 ただし、今回の騒動の責任を取らせる為に、元王子か妹が領地を引き継ぐ際には、降爵されて男爵家となり、領地の大半を国に没収される事が決定。

 次の国王陛下は王弟殿下が立たれる事になり、最後まで何とか阻止しようと足掻いてた宰相さんも引き継ぎを終え次第引退することが決定された。

 王弟殿下が次代の国王として最初の王命として命じたのは、妖精の結界と接してるこの国の土地は、今回の騒動を穏便に治めた功績として、冒険者ギルドの所有とする。とお決めになり、その場で速やかに手続きがなされた。

 戦争が起こりかねない重犯罪の処罰としては、何とも甘い処罰内容だけど、まだまだ国王を傀儡として甘い汁を吸ってた貴族の炙り出しも終わってないので、この場は軽い処罰として追々追い込む予定なのだろう。


 ずっと何が何だか分からないって顔してた妹は、取り敢えず元王子と結婚できるって事に喜んでて、その場違いさに、頭悪いって強いわね?と妙に感心した。

 今後の公爵家はどう考えてもお先真っ暗だけど、今更私には関係ないので別に。


 と思って会議が終わって早々に城を出ようと思ったら、後を追ってきた両親に呼び止められた。


「ヒュージムジェルカ!貴女、今までどこに居たの?!何故領地を飛び出したりしたの!お陰で我が家は貴女の嫁入り予定だった家から、婚約不履行で訴えられて、慰謝料を支払わされたのよ!今からでも遅くないから、さっさと家に戻って、嫁に行きなさい!」


 金切り声で叫びながら迫ってくる母親を、温度の無い目で見返す。

 父親も何か言いたそうだが、ほぼ会話をしたことのない娘に何を言っていいのか分からず口をパクパクしてる。

 ちょっと息を切らしながら、私の腕を掴もうとした母親。

 当然避ける。

 つんのめって体制を崩し、信じられない?!って顔でこっちを見てくる母親。

 そんな母親を追いかけるように遅れてやって来たのは祖母。


「ヒュージムジェルカ、貴女それでも公爵家の娘なの?貴族令嬢として家のために成すべき事をなさい!」


 散々悪口を言っていたのに、結局は祖母と同じことを言っている母親。

 その事に気付いたのか、苦虫を噛み潰したような顔で、それでも嫁に行け、とか言い続ける母親。


 あまりに馬鹿らしくて思わず笑ったら、


「「何がおかしいの!」」


 2人、声が揃ってるし。


「フフフ、だって可笑しいでしょう?お婆様が憎くて憎くて、その八つ当たりのように虐待して育てた娘に、家のためになる結婚をしろ、だなんて?私が本当に嫁に行ったなら、絶対に家の為になる事なんて何一つしないと思いません?だって散々酷い目に遇ってきたんだもの。それでもお金のために嫁に出したいのなら、まずはこれまでの謝罪くらいしてみたら良いのに?許す気は無いけど」


「ぎゃ、虐待?わたくしに似ている、から?」


「そうですよ。ご存知無かったでしょう?お婆様もお父様と同じで、家柄にしか興味を持たず、家族の事になど全く感心を持ちませんでしたものね?公爵家のため、公爵家のためと言いながら、それに相応しくあるように厳しく鍛えられたお母様。その厳しさに恨みを募らせ、でもそれを直接お婆様にぶつける事も出来ずに、自分の生んだ子であるのにお婆様と同じ色味を持っているからと、育児は全て乳母任せ、教育だけは苛烈な程に詰め込んで、選び抜いた教師は体罰教師ばかり。わたくしが打たれる度に笑って居られたものね?」


「そ、そんなことはしてないわ!それに公爵家なら子育てを乳母に任せるのは当然の事よ!」


「妹の時は、自ら乳をあげ、下にも置かぬ扱いをして、片時も側を離さなかったのに?妹の教師は妹の意にそわないだけで次々と解雇していたのに?」


「ほ、本当に、貴女は虐待を受けていたの?」


 私がこれまでどんな育てられ方をしてきたかを知って、ブルブルと体を震わせ信じられない者を見る目で母親を見る祖母。


「何を驚いてらっしゃるんですかお婆様?貴女も婚約破棄をされたわたくしを、掃除もしていない掘っ立て小屋に閉じ込めたではないですか。一言の言い訳も聞かず、家の恥だと罵って。貴女もお母様と変わらないじゃないですか。お二人は仲も良くないのにとても似ていますね?」


 そう指摘したら、母親と祖母は顔を見合せ、母親は発狂したように頭をかきむしり呻き声をあげ、祖母は自分で自分の両肩を抱きブルブルと震えその場に膝を付いてしまった。

 そんな事態になってやっと、


「お前は、そんな目に遇っていたのか?だから誰にも言わず、一人で家を出たのか?」


 と溢すように呟く父親。


「そうですね。あのまま公爵家に居れば、わたくしはあの掘っ立て小屋で餓死したか、ろくでもない婚姻を強いられるか、妹の尻拭いとして王家に使い潰されるか、そんな真っ暗な未来しか想像できませんでしたから。幸い虐待としか言えないような厳しい教育を受けてきたお陰で、体術や魔法には自信が有りましたし、元王子から婚約破棄の謝罪金として多少の現金はいただいたので、これ幸いと出奔致しました。お陰様で今はとても充実した暮らしをおくっておりますわ」


「公爵家に戻るつもりは無いんだな?」


「フフフ、おかしな事を仰いますね?わたくしが出奔した翌週には、ろくでもない家に嫁入りさせる約束を交わし、わたくしが出奔したとわかるや否や、わたくしの悪評を吹聴した上で、わたくしの死亡届けが公爵家から出されており、国に認められ、ヒュージムジェルカ・アティアンデスと言う公爵令嬢は、2年も前に死亡しているのですよ?今の私は、ミーグレヌス王国の平民のヒムカです。それ以外の何者でもありません」


 きっぱりはっきり言い切ると、父親は項垂れ、祖母は目を見開き、母親は叫んだ後に気絶した。

 家族との決別もすんだので、さて帰ろう!と思ったら、バタバタとした足音の後に、


「まあ!お母様!どうしたの?!なぜお父様はお母様を助けないの?!」


 気絶して床に倒れてる母親を抱き起こし、父親に非難の目を向ける妹。

 そんな妹を見て、罰の悪そうな顔をする父親。

 そして、私の姿を見付けると、


「お姉様!お姉様がお母様に酷いことをしたんでしょう?!何でこんなことをするのよ?!婚約者を取られた腹いせなの?!散々わたくしに酷いことをしてきたくせに、お母様にまで酷いことをするなんて!本当にお姉様は、お婆様そっくりで酷い人間なんだわ!」


 母親そっくりの金切り声で、わざと周囲の注目を集めるように叫ぶ妹。

 引き合いに出されて驚いている祖母は、


「な、何を言うの?わたくしが、酷い人間?違うわ!わたくしは!公爵家に相応しい嫁となるよう、教育しただけよ!その女が、たかが子爵家の娘だったくせに、息子を誘惑して嫁になんてなるから!相応しくなるように教育したんじゃない!公爵家の為に!そのお陰で今公爵夫人として大きな顔をしていられるんじゃない!わたくしが教育しなければ、貴族の令嬢としても失格だった女なのよ!それをわたくしが!立派な公爵夫人にしてやったんじゃないの!感謝される事はあっても、恨まれる筋合いはないわよ!」


 凄い剣幕で妹に怒鳴ってる。

 母親は気絶したままなので、聞こえてないだろうに。

 妹は祖母のあまりの剣幕に怯えて言葉も出ず、ただただ震えてる。


「心底どうでもいいですね!」


 そう言ったら、その場の空気が固まった。

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