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 大至急って書いただけあって、宰相さんからはその日の内に返事が来た。

 大至急調査する、とのこと。

 あと宰相さんと同時に、王姉様と王弟様にも同じ内容の手紙が出され、それを読んだお二方はお城に突撃したそう。

 国王様と王妃様は、突然の訪問と話の内容に、全く心当たりがなかったらしく、酷く狼狽えてた様子。

 って事が、宰相さんの返事の片隅に書いてあった。

 それを確認して、私達は現場に出発。


 王都から乗り合い馬車で6日、1日半歩いた森の奥に、この国で唯一妖精の結界と接している場所がある。

 ちょっと走れば隣国に出てしまうような場所で、本来なら魔物も多く出て、国境警備も中々やってこないような場所。

 今は、先に来ていた魔法使いや騎士によってある程度道が切り開かれ、魔物も間引きされているようで、とてもすんなりと通れた。

 と思ったら、私達より先に騎士団が来てた。

 結界を壊すために派遣?されてた人達が、全員捕縛されてる。

 騎士団の人達が私達に気付いて、


「冒険者、今、ここは立ち入り禁止だ!魔物討伐なら他所へ行け!」


 とか居丈高に命令してくる。


「私達は冒険者ギルドから派遣され、その人達がこの場から連れ出されるのを見届ける為に来ました。邪魔はしませんので、お仕事を続けて下さい」


 ってちゃんと言ったのに、


「は?そんなことは聞いていない!去れと言ったらさっさと去れ!」


 とか言ってる。

 微妙に剣を抜く真似までしてるし。

 そんなことされたら、こっちだって武器に手を掛けるよね?

 一触即発の雰囲気を察したのか、ちょっと離れた位置に居た指揮官ぽい人がこっちに来て、


「ヒュージムジェルカ様?!ヒュージムジェルカ様ではありませんか?!生きて居られたのですね?!しかし何故この様な場所に?!」


 疑問一杯の大声での問いに、双方困惑してますね。


「はぁ、ローマリオ卿、お久しぶりですね?ですが今の私はヒュージムジェルカ・アティアンデスではなく、冒険者ギルド職員のヒムカです。貴方の知ってる令嬢は、既に死亡届が受理されているでしょう?」


 昨日の内に役所で確認した事実を告げる。


「それは。はい。私も確認しました」


「幼い頃に師事した方のお陰で、路頭にも迷わず、誰に騙される事もなく、平穏に穏やかに暮らせています。どうぞ、私の事にはお構い無く、お仕事をお続け下さい。私も私の仕事を全う致しますので」


「……………はい。部下が失礼を致しました。我々は我々の仕事を致します」


 お互いに黙礼しあって、その場を離れる。

 私達冒険者は、結界のすぐ側へ。

 捕縛された人達が連れていかれるのを見守る。

 騎士団の人達の姿が完全に見えなくなったところで、結界の内側から今も見張っているだろう妖精の代表に手を振る。

 答える様に結界からニュッと顔だけ出した代表が、


『終わったのか?少々剣呑な雰囲気になったのに、残念だ』


『長様に争いを止められているのでしょう?』


 心底残念そうに言うので突っ込んだら、


『人間同士の争いを見物するくらい許される』


 とか言ってる。


『それは残念でしたね?長様に争いは回避されたとお伝え願えますか?』


 スルーして要望を使えると、フンッ、と鼻息で答えられ、またニュッと結界の中に戻っていった。

 まあ伝わるだろう、と、私達はまた王都のギルドへと戻った。

 私のここでの一番の仕事は、妖精側へ争う意思は無いと伝えることだったからね。


 王都のギルドで報告を済ませ、折角外国に来たのだからと、メンバーが観光したいと言うので、すぐには帰らず、3日程滞在を伸ばした。


 一日目はミクリーナさんと実は甘い物好きだったらしいメイズさんと三人で王都のカフェ巡りをして、甘味三昧を楽しんだ。

 二日目はケントさんとルパンダさんと植物園に行った。

 三日目はメンバー全員で王都周辺に出る魔物の討伐をしてみようと相談して、ギルドで依頼を受けようとしたところに、ギルドマスターが現れ、城に連行された。


 どうも、協定を破った事に対する謝罪の気持ちを妖精族に伝え、お詫びの品を渡したいそうなのだが、上手く妖精との意志疎通が出来ないそうで、通訳を兼任していた私を連れてきたかった様子。

 他のメンバーはとんだ巻き添えだけど、まあ、これも経験だ、と寛大な心で付き合ってくれるそう。

 この中で一番城に行きたくないのは私なんだけどね!


 ギルドマスターと連れ立って謁見の間に到着すると、この国の重鎮と呼ばれる高位貴族の当主や大臣達、それとご意見番的な今もまだ権力を持っている引退後の元当主のご老人の方々、それと王家が勢揃いして、小さな妖精族の方々を囲んでいた。


『おお!話の通じるものが来てくれたか!』


 妖精族の長様が、私の顔を見てホッとして声を掛けてくる。


『どうされたのですか?ここは謝罪の場ではないのですか?』


『その様に聞いて参ったが、いらぬ物ばかり押し付けようとしておる上に、謝罪の言葉など一言も無い。もうこの場に居るのも苦痛だ』


『成る程、少々お待ち下さい』


 ギルドマスターに長様の言葉を伝えると、


「ああ?どういう事だ?呼びつけておいて謝罪の言葉1つ無い?いらんもんを押し付ける?この国は妖精族を敵に回してーのか?事と次第によっちゃ~ギルドも撤退するぞ?」


「ですよね~?そもそも何故妖精族の長様のお怒りを理解してないのでしょう?魔法言語を話せる人は大勢居ますよね?」


「俺ら庶民には縁遠いが、ここに居る奴等は当然習ってんだろ?」


「ええ。貴族の必須の嗜みですから」


「なら、言葉が通じねーんじゃなく、聞く気がねーんじゃねーの?妖精族と戦争でも始める気か?正気か?」


 私がこの場所に現れてから、物凄い形相でこっちを見ていたこの国の人達は、私とギルドマスターの言葉に、慌てて割って入ってくる。


「ま、待ってくれないか!貴女はヒュージムジェルカ・アティアンデス嬢だろう?!何故君がここに居るんだ?」


 宰相さんの言葉に、


「いいえ。私はミーグレヌス王国冒険者ギルド職員の、ヒムカです。ヒュージなんちゃらではありません。その令嬢は死亡届も受理された死人なのでしょう?」


「いや、だが!どう見ても貴女はヒュージムジェルカ・アティアンデス嬢だろう?王太子殿下に婚約破棄され、男と駆け落ちした後に、盗賊に襲われて死亡した、と届け出があったので受理したのだが?」


「はぁ。今更この国でどう思われてどう扱われようと関係ないですが、混乱されてるようなので、一応説明しますね?」


 と前置きしてから、


「確かに、私は子供の頃から祖母に似ているからとの理由で、虐待を受けて育ち、母親が甘やかしまくった頭アッパラパーの妹に寝取られて、王太子に婚約破棄されました。その後王都の家を追い出され、領地に帰った途端、祖母からは家の恥だと罵られ、離れと言う名の掘っ立て小屋に監禁されそうになりました。そんな場所では生きていけないので、家を出まして、ミーグレヌス王国に行き、冒険者として活動した後に冒険者ギルドにスカウトされて、職員になり、妖精族の緊急の知らせを受けて現場を確認し、この国に来て、現状を説明し、撤退現場を確認して、今朝ここに呼び出されました」


 一息に説明したら、誰も何も言わなくなった。

 それに真っ先に痺れを切らしたのは、妖精族の長様。


『ワシはもう帰っていいかの?戦の準備をせねばならん』


 長様の言葉をギルドマスターに通訳したら、


「で?この国は妖精族を敵に回すって事で良いのか?これは最終確認だ。戦争をおっ始める気なら、冒険者ギルドも商業ギルドも、全冒険者もこの国から撤収するが、どうなんだ?」


 ビリビリと空気を震わすようなギルドマスターの声に、今は私の素性に構っている場合ではないと気付いた人達が、慌てた様子で言い訳をはじめた。

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― 新着の感想 ―
比較対象が凡庸国王とかゴミ王子だから宰相が優秀っぽく見えてただけか とてもじゃないけど凡俗の域を出ない
宰相は優秀って話だったのに、この会談中は何してたんだろう……? 妖精に喧嘩売ってるのを見てただけ??
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