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 今私達が住んでいる大陸には、大小様々な国があるけれど、大陸中央を占領するようにあるエーンダイム帝国の西と東では話す言葉が違う。

 大陸最強国であるエーンダイム帝国の言葉が大陸共通語として、各国の貴族家の必須の教養とされて久しいけれど、それまでは国によって独自の言葉が使われていた。

 今居るサーマルロッツ王国も、私が逃げ延びて住み着いたミーグレヌス王国も大陸の東にあり、似たような文化、風習、気候である事から、使う言葉は似通っていたものの、国ごとに微妙なアクセントの違いや読み方書き方の違いなどがある。


 結界の向こうから聞こえてくるのは、聞き間違いようのないちょっと懐かしさすら感じる、サーマルロッツ王国の言葉に間違いない。


 サーマルロッツ王国の貴族達に取っては、妖精族の大粛清は恐怖の対象として、幼い頃からの教訓として、何度も何度も習う事で、間違っても宝石目的で妖精族の結界を壊そうとするなんて有り得ない事と認識されるはず、なんだけどね?

 現に結界の向こう側でも、弱い攻撃をたま~~~に繰り出すくらいで、本当に結界を壊そうととしてるとは思えない。

 結界を壊す作戦を練っている、と言い訳して、ダラダラしてるようにしか見えないし?

 たまに現れる指揮官みたいな人が来た時だけは、シャキッと姿勢正しく対応してるけど、それも本気で攻撃してるようには見えないしね?

 現場に居る人達は、本当はやりたくないけど上の命令で渋々来てるのかな?

 なら、その命令してる人を何とかしないと問題は解決しないって事ね?

 ここは一先ず放置しても結界が壊れる事は無いだろうと予想して、ギルドに帰って報告するのが先決かな?

 他のメンバーにも相談したら同じ結論になった。


「だな。あいつら、見るからにやる気ねーし?」


「ええ、見せ掛けだけの全く威力を感じない魔法しか使ってないようですしね?」


「思ったよりも早く帰れそうでよかったわ~!」


 メイズさんとルバンダさんは既に帰り支度をしてる。


 妖精族の代表に事情を話して、引き続き見張りはしてもらうものの、そこまで心配はいらないだろうと話す。


『なに、攻めてくれば蹴散らすまで』


 との代表の言葉に、弱冠不安にはなるものの、妖精族から攻めるのは長様に止められてるそうなので、私達は一旦ギルドに戻る事に。


 帰りは国を越えるような距離を徒歩で帰るのか、とうんざりしてたら、兵士の案内でまた、来た時とは別のトンネルに案内され、矢張長い長いトンネルを越えると、今度は枯れ葉の山に突っ込んだ。

 枯れ葉の山の方が出るのに凄く苦労した。

 長様に事情を話し、また乗り合い馬車に乗ってギルドでも報告。


「はぁ?サーマルロッツぅ?なに考えてんだあの国は?」


 とギルドマスターもとても訝しげ。


「目的は宝石の出る鉱山らしいですよ?」


 と言えば、


「宝石だぁ?たかが宝石の為に国を傾けるってか?どんなアホがそんな命令出してんだ?」


「そ~ですね~?何人か心当たりがありますが、独断なのか、国を挙げてなのかは分かりませんね~?」


「おいおい、国の上層部にアホが何人も居るだけで問題だろう?」


「う~ん。国王陛下とかはまともだと思うんですが、どうなんだろう?」


「軽く国王陛下とか言うのな?実際に会った事があるんだろう?どんな奴だよ?」


「えー、一言で言うと、凡人?」


「ブヒャッ!アッハッハッハッ!一国の王を捕まえて凡人って!」


「そうとしか言いようがないんですよね?真面目だし誠実だとは思うんですが、それは思い切った事をして失敗したり人から責められたりするのを恐れるあまり、無難な方法しか取れない、って印象でしたし」


「ふ~ん。そんな国王なら妖精を敵に回そうとはしねーだろーな?」


「しないでしょうね」


「なら王妃か?王子とかの線もあるのか?」


「王妃様は、国王陛下の補佐で精一杯な感じの人なので、こちらも大した事は出来ないと思いますね」


「へー。じゃあ残るは王子か?どっかの高位貴族か?」


「王子、が一番ありそうですかね。結界の外に居た人達、魔法使いも騎士団も略装でしたけど、小さく国の紋章縫い取られたお揃いでしたし」


「王子はアホなのか?」


「ええ。アホでクズで色ボケですね」


「ククク、はっきり言うね~?」


「まあ、元婚約者でしたから。その恨みで悪口言ってる訳じゃないですよ?国王陛下も王妃様も凡人なのに、その自覚はなくて、息子の事は甘やかしまくりで、息子の出来ない仕事は部下や側近、婚約者に丸投げしてやらせればいい、って考えの人達でしたから。本人は好みの女の尻を追いかけるのに夢中で、自分にやるべき仕事が山積みだって気付いてもなかったですし」


 何も妹だけが浮気相手だった訳じゃないしね。


「……………それって、国がヤベーって事なんじゃねーの?」


「あの国には、宰相を始め文官とか騎士団とか、王家なんて鼻息で転がせる程有能な人達が居るんですよ。どうしてクーデター起こさないんだろう?って心底不思議でした」


「?そんな奴等が居て、何で妖精族への干渉を許してんだよ?」


「あー、たぶん王子辺りの独断で人を動かして、偉い人達にはまだ気付かれてないとか?たぶんギルドから警告を入れると、大慌てで調査して、王子のすげ替えとか起こるかもですかね?」


「だが確かあの国の王子って、一人だけだろう?」


「王姉も王弟もその子供達も居ますよ?皆様超優秀だし」


「何でその優秀なのが跡継ぎじゃねーんだよ?」


「担ぐ御輿は軽い方が良いんでしょ?超優秀な跡継ぎを国の天辺に置いたら、好き勝手出来ない人達が多いからでしょ?」


「おおーう。なんかこえぇな王族とか貴族!俺、平民で良かった!」


「まあ、私達には関係ないんで、ギルドとしてはさっさとサーマルロッツに警告文を送ってくださいよ!あとサーマルロッツのギルドマスターにも話を通して下さいね!」


「あ!それなら今回のチームでサーマルロッツ行ってくれよ!そんで報告と警告文を出すように手配してきてくれ!」


「え、嫌ですよ。万が一あの国に私の戸籍が残ってたら、ギルドクビになるじゃないですか!どうしても行けって言うなら、ミーグレヌス王国の戸籍、作れるように推薦状出してくださいよ!そんで無事にミーグレヌス王国国民になったら、行っても良いですよ?」


「何でだよ?!サーマルロッツの戸籍が生きてるならお前、公爵令嬢だろう?権力使い放題だろう?」


「いやいやいや!ギルドに就職する時事情を説明しましたよね?散々虐げられて育った私の生い立ち!そんな名ばかりの公爵令嬢に欠片ほどの権力も無いですよ!なんならギルド職員の今の方がはるかに権力持ってますからね!」


「そ、そんなにかよ?」


「そんなにだよ!」


「わかった!わかったから、ミーグレヌス王国の戸籍、作れるように推薦状書くから!そんな血走った目で睨むなよ!」


「本当ですか!ありがとうございます!じゃ、ちゃちゃっと書いちゃって下さい!今すぐ!」


「いまぁ?」


「ギルドマスターの書類仕事を手伝ってるのは誰でしょう?ギルドマスターの書類仕事が遅いのは、誰よりも知ってますけど?」


「わかった!降参!書くから急かすな!」


 こうして私は、ギルドマスターからの推薦状の力も借りて、正式にミーグレヌス王国の国民となりました!勿論平民で!今更堅苦しくて窮屈で面倒極まりない貴族の身分とかいらな~い!

誤字報告、スタンプをありがとうございます!


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