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 必要な分の食料と水、それと着替えが数枚と手布巾数枚と、後は厚手の服を着込み、胸当てと肘当て膝当ての位置確認と、外套を羽織り、腰に装着した武器の確認と、念のために予備の武器も確認。

 ベルトに仕込んだお金も確認と、その他細々としたものの一通りの確認が終わると、待ち合わせのギルド前に行く。


「おはよう」

「おはようございます」

「おう」

「おっはよ~ございま~す!」


 ルバンダさん、ケントさん、メイズさん、ミクリーナさんの声に、


「おはようございます!よろしくお願いします!」


 と答えると同時に後ろから、


「お~はよ~」


 と気の抜けたアルガンさんの声も聞こえて全員が揃った。

 アルガンさんが代表して今回の依頼内容を確認して、早速出発。


 妖精族の住む町は、ギルドのある街から2日の距離で、1日半乗合い馬車に乗り、その後半日は徒歩となる。

 人間からするととても辺鄙な場所にあるので、乗合い馬車も朝一の馬車に乗らないと次は夕方に1本だけと言う不便さ。

 馬車には私達以外誰も乗っておらず、乗った途端に片側の座席を占領してアルガンさんが寝てしまった。


「よくこんな揺れる馬車で寝られますね~?」


「どこででも寝られるのは、一流の冒険者のたしなみだそうですよ?ですが、危険が迫ったら瞬時に覚醒出来ないと、一流とは言えないそうです」


 ミクリーナさんの口調はのんびりゆったりとして、少々間延びして聞こえる。普段からギルドで治癒を担当しているので、患者を落ち着かせるためにゆったりと話し掛けていたら、それが定着したそう。

 ケントさんはとても丁寧な話し方をする。

 見た目は、眼鏡で目は見えないし、前髪も長くて第一印象はあまり良く思われないんだけど、話すととても気さくで聞き上手な上に話題も豊富で魔法の腕も確か。

 ただ、魔力はそんなに多くないそうで、Cランクが限界だと本人は言っている。


「それも凄い話だわ~。わたしなら全然無理~!寝てる間にパクーっとやられちゃうわね~」


 アハハハ~と朗らかに笑うところが、ただ朗らかなだけじゃなく豪快な一面も垣間見える。

 メイズさんは投げナイフを磨いてたかと思ったら、今度はダガーを磨き、次は、と様々な小型武器の手入れに余念がない。

 ルバンダさんはミクリーナさんとケントさんの会話をニコニコ聞いてるだけ。


 乗合い馬車は度々休憩を入れながらも順調に進み、途中所定の場所で二泊した後に翌日の昼過ぎには妖精族の町に一番近い村に到着した。

 この村は、妖精族との橋渡し的な地として成り立っている村で、村長はギルド職員が就いている。

 まずは村長宅へ挨拶に向かい、周辺の状況などを聞きこむ。


「ああ、この辺で特に変わったことは無いが、妖精達はピリピリしているようで、ここ1ヶ月程は、妖精の実をあまり分けて貰えなくなった。在庫もまだ有るから、今すぐ困ることは無いが、これが続くと問題になるかもな?」


 妖精の実とは、妖精達が魔力を込めて育てた実で、魔力回復藥には欠かせない素材である。

 別の素材で代用出来なくもないが、薬効は著しく落ちるので、魔力症等の病気治療には妖精の実の魔力藥でないと命に関わる危険がある。

 この村は妖精の実を加工して、魔力藥を作ってギルドに卸す事で成り立っているので、死活問題でもある。

 村長自ら話し合いを申し込んだ事もあるらしいけど、村長自身は魔法言語は片言しか話せず、妖精族の中で人間の言葉を話せるのは唯一族長だけなので、その族長が事態を深刻と見て妖精族の町から動けないとなれば、話し合う機会も得られない、とのこと。


 村に一晩泊めてもらって村長が態々見送りに出てくれて、


「よろしく頼むよ」


 と送り出された。


 獣道のような細い道を歩き、傾斜の激しい山を上り、頂上を少し下りた先が妖精族の町。

 そこには目には見えない結界が張ってあり、触れて初めてそこが結界だと気付ける。

 結界に触れて、少しだけ魔力を流すと、見えている景色が一瞬揺らいで、ヌポンと表現したくなる様子で結界を越えた妖精の戦士が現れる。


『なんだ人間、結界はこえさせないぞ!』


『ええ。その事で族長様の依頼を受けて、冒険者ギルドから参りました。族長様にお取り次ぎお願いします』


『ぎるど、ギルドか!ちょっと待ってろ』


 またヌポンと居なくなった妖精兵士。

 暫く待つと、族長だろうお爺さん妖精を連れたさっきの兵士が戻ってきて、


『ほうほう、そなた達がギルドから来た者達か?』


『はい。こちらギルドが保管しております割符です。ご確認下さい』


『うむ。………確かに。早々に出向いてくれた事、感謝する。事情は中に入ってからとしよう』


 そう族長が言うと、結界に手をかざし、何やら聞き取れない呪文を唱えると、モヤモヤと見えないはずの結界が開いていき、人が1人通れる程の穴が開き、


『急いで入れ!閉じるまえにな!』


 と兵士に促され並んで入る。


 入った先は、子供の頃に絵本で見たような、小さな家が転々とあり、小動物が行き交い、妖精族の子供達が元気に飛び回る長閑な風景だった。


「まあ!なんて可愛らしい!素敵!」


 ミクリーナさんがはしゃいだ声を出すのも頷ける可愛らしい光景だった。


『こどもらにはちかよるなよ!こわがって泣くとうるさいからな!』


 妖精族としては大通りと思われるメインの道を歩きながら、兵士に注意を受ける。

 怖がって泣いたら可哀想、ではなくうるさいから止めろ!って、聞こえるのは私だけ?


 族長の屋敷は、石を積んで出来た平民の家族が住むような、人間サイズの屋敷だった。

 元々は魔女の屋敷だったのを、魔女が移動する際に妖精族に譲り渡した屋敷だそう。

 族長が使っているのはメインの部屋1部屋だけで、その他の3部屋は掃除もしてないそうだけど、好きに使って良いらしい。


 そして、指先でつまめるサイズのお茶を出され、事情を説明される。


『結界の端、人間の国と接する場所で、奴等は結界の破壊を目論見、魔法使いを大勢集めておる。何度か集団での魔法の攻撃を仕掛けてきたが、人間の魔法程度で我々の結界が壊れることは無い。だが万が一の事を考え、警戒せぬ訳にもいかぬ。常に見張りを置き、状況を見て結界を強めるには、力ある者を配置せねばならず、他の仕事が滞る。これは実に煩わしく腹立たしい。人間との間には協定があったはず。我々は我々を攻撃してくる者共を排除する事も容易。だが一応協定を守る気があるのかを、人間側にも問わねばなるまい』


 思ったら以上に悪い事態に、通訳しながらも汗が滲む。

 妖精族の報復は人間とは常識が違うので、人間側から見れば苛烈の一言に尽きる。

 問答無用で反撃されなかっただけで、ありがたいと思うべき事だ。


『ご配慮ありがとうございます。我々も一度現場を見せて頂き、対処致します』


『ああ、そうしてくれ。我々は何も人間と争いたい訳ではない。だが過去の事もあるゆえ、人間と共存するのは難しい。最低限の関わり以外、不干渉であることが、お互いにも平和に過ごせる方法だろう』


『はい。我々冒険者ギルドも、同じ考えでおります』


『現場に案内しよう。ちと遠いゆえ、通路の通行許可も出そう』


『ありがとうございます』


 全員で頭を下げて、族長に紹介された兵士に付いて現場に向かう。

 族長の言っていた通路とは、小さな洞窟のような穴で、中がツルツルになっており、それがずっと先まで続いていて、ここを滑り降りるようだった。

 妖精達にはかなり広い通路に思えるのだろうが、人間から見るとそうでもない。

 一般的な体格なら大丈夫に見えるけど、体の大きなルバンダさんは、大剣を背負ったままじゃ入れないので、大剣は手で持ち、バンザイするように通路に入ったルバンダさん。

 大丈夫?途中でつっかえない?ととても心配。

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