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「って事があった訳!」


「それで何でギルドの受付とかやってんだよ?その話だとまだ公爵家の令嬢だったろう?」


「いやいやいや~、領地にはそれはそれは厳しいお婆様がいらっしゃったんだよ?妹にとは言え婚約者を奪われた傷物の孫なんて、家の恥!とか真顔で言っちゃうお婆様。たった一言の言い訳も聞かずに、掃除もされてない離れに閉じ込めて、反省しろ!とか言っちゃうお婆様。入婿だったお祖父様はお婆様に逆らえないし、そんな家に閉じ込められて、おとなしく反省とか出来ると思う?」


「俺なら無理だな~」


「でしょ~?私にも無理だった!だから丁度お金も持ってた事だし家出して、国外脱出して、まずは冒険者になって、スカウトされてギルドで働き始めたのよ!」


「いや、それが良く出来たな、って話だよ!貴族家のご令嬢様ってのは、世間知らずなんだろう?よく騙されずに隣国まで逃げられたな?」


「あー。それはね、家庭教師の一人に、元冒険者の護衛騎士が居たのよ」


「家庭教師で護衛騎士?」


「一応王族へ嫁ぐ予定だったから、最低限の自衛手段は持つべきだって建前で、それはそれは厳しい体術の訓練を受けてたわけ!」


「ああ」


「お母様は私が痛め付けられるのが楽しかったらしくて、体術の授業は令嬢としてはあり得ないくらい多かったわけ」


「うわー」


「で、元冒険者の護衛騎士も、家の様子を見てれば、私が虐げられてるってのは丸分かりじゃない?もし万が一逃げ出したくなったら、って、お母様や使用人に見付からないように、密かにギルドへの登録方法とか、逃げられる国とか、どんなルートなら貴族に見付からないとか、後は魔物を素手で倒せる方法とかを血を吐く勢いで鍛えてくれたのよ!」


「はー。その元冒険者の護衛騎士だけが、ヒムカちゃんの役に立つ情報を教えてくれたって事か?」


「アハハッ!別に彼だけじゃないけどね!外国語がペラペラなのも、魔法言語がペラペラなのも、無駄に詰め込まれた知識のお陰だし、そのお陰で今、他の人よりお給料良い訳だし?」


「なんつーか、とても貴族のお嬢様には見えねーんだけど?」


「だって、お嬢様言葉でゆっくり丁寧になんか話してたら、ここじゃ舐められてろくな目に遭うわないじゃない?郷に入っては郷に従えよ!このギルドの環境が私を鍛えたのよ!」


「いや、そもそも無表情?薄笑い?のヒムカちゃんが全然想像出来ねーんだけど?」


「あー、それね。仕方無いじゃない?お父様には物心付いてから会った覚えは無いし、お母様は八つ当たりで虐げてくる人だし、家庭教師達もお母様の命令でめちゃめちゃ体罰ありありで教育してくるし、朝起きてから夜寝るまで延々何かの教育に当てられてるし、クスッとでも笑えば容赦なく叩かれるし。叩かれるの覚悟で笑いたい程楽しいことなんて無かったし」


「なんか俺、泣きそうだよ!元冒険者の護衛騎士の気持ちも分かるわ!俺だってもしその場に居たら、何とかして逃がしてやろうと思うだろうしよ!」


「フフフ、ありがとう!でも大丈夫!今はもう自由だし、好きなこと何だって出来るし、叩かれそうになったら、逆に叩きのめせるくらい強くなったから、これからは好きなだけ笑って過ごすんだ!」


「ああ、それで良いんじゃねーか?貴族令嬢だった頃のヒムカちゃんを知ってる奴が現れたら、腰抜かして驚くだろうが、そんな奴等はほっとけば良いしな!」


「うん、そのつもり!まあ、見付からない程度に、一発くらいは入れるかもしれないけどね!」


「おう!一発と言わず何発か入れてやれ!バレない程度にな!」


 バチンとウィンク1つ置いて買い取り窓口に行ったのは、このギルドでも指折りのAランク冒険者のアルガンさん。

 査定中暇だからと話しかけられて、何故か昔の話しになって。

 別に隠すことでもないので明け透けに暴露したら、周囲がシーーンとしてしまう程聞き耳を立てられたけど、それも別に今更。

 公爵家の領地から出奔して既に2年も経ってるし、今は母国から二つも離れた国に居るし。

 もうすぐ丸2年この国に居て働いているので、この国の戸籍も作れるようになるし。


「ヒムカちゃん、ここ代わるから、あっちの通訳お願い!」


「は~い」


 先輩の声に返事をして席を代わると、あっちと言われた場所には何やら盛んに訴えている妖精族のお客さんが。

 今このギルドには魔法言語を話せる者は3人しか居ない。

 まあ、どこのギルドも一人か二人居れば良い方なんだけど。


『どうされました?ご依頼ですか?納品ですか?』


 魔法言語で話しかけたら、涙目で、


『あなた!わたしの言葉が分かるのね?!』


『ええ。分かりますから、落ち着いて』


 カウンター備え付けの水差しから小さなコップに水を入れて差し出すと、チャプンと手を浸してふぅと一息付く妖精さん。

 それでちょっと落ち付いたのか、


『あのね、あのね、人間がわたしたちの町をおそおうとしてるの!きょうていいはんだから、長様がギルドに知らせろって言ってね、きたの!』


『それは本当ですか?まだ襲われてはいないんですね?』


『うん。まだおそわれてはないけど、擬態のとくいな仲間が、ぶきを持った人間が、きょうかいを越えようとしてたのをみたって!それで長様がかくにんしてくるから、ギルドにもしらせろって!』


『分かりました。ギルドマスターに伝えます』


『うん、お願いね!じぁね!』


 妖精族と言うのは、別名小人族とも呼ばれる小さな種族で、独自の生活環境と食生活と魔法を使う種族で、一時は人間の貴族達のペットとして大流行して絶滅の危機に陥り、エルフ族やドワーフ族等に協力を求め、仲間を奪還するために貴族狩りと言う大事件を起こした種族。

 理由を聞けば、人間の貴族達が一方的に悪いことは証明され、エルフ族やドワーフ族の説明では、妖精族とは、自然界の魔力の調和を取るのに重要な存在だと知らされ、それ以来冒険者ギルドと商人ギルドでは、保護対象に指定され、妖精族の依頼や保護は最優先事項となった。


 妖精族をペットとして捕らえ、飼育し切れず死に到らしめた人間の貴族達は、手酷い報復を受け、関係無い貴族にも少なくない被害が出た事で、各国の貴族達は魔法言語と言われる、妖精やエルフ、ドワーフや精霊に通じる言葉の習得が必須項目となったり、妖精族との接触は極力控える、との協定が結ばれたり。


 ただ、妖精族と人間族では文化や生活習慣、食生活や生態も全く違う為、しばしば問題が起こり、その仲介役としてギルドに問題が持ち込まれる事は多い。

 今回の事もそんな行き違いの1つだろうと思ったのだけど、ギルドマスターに報告したら、念のために確認はしなくてはいけないとのことで、急遽チームが組まれた。


 数少ない魔法言語を話せる人材として、私もチームに加えられてしまった。

 チームメンバーはAランクのアルガンさんを筆頭に、Bランクのメイズさんとルバンダさん、Cランクのケントさんとミクリーナさん、と私。

 アルガンさんはベテランで、長剣から暗器まで武器は幅広く何でも使えて、少しなら魔法も使える頼もしい存在。

 Bランクのルバンダさんは大剣使いで兎に角大きくて力持ち、でも性格はおっとりと優しいと評判。

 メイズさんは目付きが悪くて無口だけど、視野が広くて斥候役としては一流。

 Cランクのケントさんは魔法使いで水と土の魔法が得意。

 ミクリーナさんも魔法使いだけど、治癒魔法が得意で、普段はギルドからの依頼でギルドに常駐して、怪我人に治癒魔法をかけてることが多い。

 私はギルド職員だけど、一応子供の頃から鍛えてたので、冒険者としては体術だけでCランクまではいった。

 その後ギルドにスカウトされてからも鍛えてるので、今はもう少し強いかな?とは思ってる。

 毒やトゲのある魔物も多いので、ダガーは使えるようになったしね。

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― 新着の感想 ―
なるほどな、脳みそスカスカの老害がそのままあの豚に受け継がれた感じか
毒親による単純な愛玩子と搾取子の話かと思えば、祖母も中々の毒だったか、まあその毒親による躾の反動が嫁から孫に出たんだからなあ。
ドアマット展開が一話で終わって一気に除湿されて素晴らしい
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