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誤字報告、評価、感想をありがとうございます!

相変わらずエンドレス誤字修正してますが、懲りずにお付き合い下さる読者様には感謝に絶えません!

 ◆

「やー!」「えいえい!」「とぉーー!」「おりゃーーーー!」


 子供達の甲高い叫び声が庭に響く。

 子供達の相手をしているのはアルガンさんとルバンダさん。

 果敢に挑む子供達をゲラゲラ笑いながら相手するアルガンさんと、微笑ましそうに相手するルバンダさんを眺めながらお茶を飲む。


「はぁ~。あれだけ暴れれば、今夜はぐっすり寝てくれるかしら~?」


「一晩くらいはね?明日の朝になったらまた騒がしくなるわよ?」


「一晩だけでも寝てくれるならありがたいわよ~!」


「確かにね~。毎晩大変だものね!」


 同じ様に子供達を眺めているのはミクリーナさん。

 ママ友である。

 ギルドの依頼でチームを組んでから、何となく気が合って仕事以外でもよく出掛けたり同じ依頼を受けたりとしている内に、同じ様にチームを組んだアルガンさんやルバンダさん、ケントさんにメイズとも同じ依頼を受けることが多くなったりして親交が深まり、5年前にルバンダさんとミクリーナさんが結婚して、私もメイズと結婚をした。

 お互いに同時期に妊娠出産と重なって、治安の良い地区で家を求めた結果ご近所さんになって。

 今では3日と空けずにお互いの家を行き来してる。


 サーマルロッツ王国での騒動から6年。

 このミーグレヌス王国で平民として暮らし8年。

 まさか自分が平民としてお母さんになるなんて考えてもみなかった日常は、平和で穏やかで、賑やかで、大変ではあるけれど、充実した日々を送れている。


「でもここだけの話し、ヒムカちゃんはアルガンさんを選ぶと思ってたわ~」


「え?何でですか?」


「ヒムカちゃんはギルドの職員になった頃から、あまり周囲に馴染もうとしなかったじゃない?今思うと馴染もうとしなかったんじゃなく、平民としての距離感を計りかねていたんだと分かるけど。そんなヒムカちゃんは、ギルドでも高嶺の花扱いで、男達に遠慮されてたし~?」


「あれで遠慮してたんですか?」


「フフフ、そうなのよ~!あれでもだいぶ遠慮してたのよ~?実際にしつこく付きまとわれたり言い寄られたりはしなかったでしょ~?」


「それなりにしつこい人はいましたけど?」


「あんなのはしつこい内に入らないわよ~!他の受付嬢なんか、良い返事をするまで何時間も口説かれたり、カウンター越しに手を握られてベロベロ嘗められたりとか、持ち上げられて抱き付かれたりとか、家まで着いてこられたり、行動を見張られてたり、後は勝手に両親に結婚宣言されたりした子も居るんだから~!」


「うわ~、それはヤバイですね?!」


「そ~よ~!そんなのに比べれば、ヒムカちゃんに言い寄ってた奴等も大人しく感じるでしょ~?」


「いやいやいや、そんな奴等はギルドから追い出すべきですよ!もしくはボッコボコにして性根を叩き直さないと!」


「ふふふ、大丈夫!ギルドの受付嬢は人気者だから、そんな問題行動をした奴等は、自然と居なくなったり大人しくなったりするから~」


 いや、それは自然とじゃないよね?と思ったけど、ミクリーナさんの目が笑ってないのでそれ以上は聞かなかった。


「ま、そんな中、一番最初にヒムカちゃんと親しくなったのがアルガンさんだったでしょ?」


「まあ、そうですかね?別に隠してた訳ではないんですが、明け透けに聞かれたので答えただけなんですけどね?その後依頼とか色々あって親しくなったとは思いますが、それはミクリーナさんも一緒だったでしょ?」


「まあそ~ね~。私もあまり外の依頼は受けたことが無かったし」


「不思議だったんですけど、何故ミクリーナさんはギルド内の依頼ばかり受けてたんですか?ミクリーナさんくらい優秀ならチームにだって誘われたでしょうに?」


「あー、今だから言うけど、私ね、持久力は有るんだけど、瞬発力が全く無いのよ~!ヒムカちゃん達とチームを組むと、ヒムカちゃんやケントさんがバリアを張ってくれるでしょ~?だから安心して着いていけたけど、他のチームだとね~、自分の身は自分で守れ!って庇ってくれたり攻撃を止めてくれたりはしなかったから、怪我したり足手まといになったりして、チームを抜けることが多かったのよ~」


「えええ?治癒師を守るのはチームの基本でしょう?!」


「一応セオリーとしてはそうよね?でも、ランクの低い冒険者や、自分は強い!とか思ってる冒険者は、出来ない人を見下したり責めたりするのよ~。私も最初から優秀だった訳じゃないからそんな事が何度も続くと嫌になっちゃってね~。幾つかチームを渡り歩いた後は、ギルド内での依頼ばかり受けるようになったのよ~」


「ミクリーナさんも色々大変だったんですね」


「まあ、私はまだまだ良い方よ~。本当に酷いチームとかだと、公平であるはずの報酬を減らされたり、最悪男共の下の世話までさせられたりとかね!」


「それもう犯罪じゃないですか!」


「そんなチームは、他でも色々問題を起こして、自然と居なくなるけど、被害に遭った女の子は少なくないわね。ヒムカちゃんくらい強ければ、相手をボッコボコに出来るんでしょうけど、強い子ばかりじゃないからね~。ギルドも対策として、女の子の相談や声掛けは頻繁にしてるんだけど、なかなかね~」


「ああ、そうですよね。私はまだまだ信用されてないのか相談を受けたことはないですが、ベテランの職員は女性冒険者には積極的に声を掛けてますもんね。そう言った対策でもあったんですね」


「ヒムカちゃんは信用がないからってより、強いからと有能だから、他の業務を割り当てられた感じだけどね~!」


「ああ、まだまだ識字率低いですもんね」


「それもあるわよね~。私もギルドでの講習を受けて名前を書けるようになったしね!」


「最近では教会でも読み書きの教室を開いてますよね」


「孤児達に教えてたのが広まったってあれでしょ?そのお陰で寄付も集まって、孤児達も職に就けるようになったってね!良いことだわ!」


「そうですね。いざとなったら頼れる先があるのは有難いですよね」


 冒険者は何の保証もない職業のわりに、危険と隣合わせな職業でもある。

 一攫千金も狙える職業でもあるので人気はあるけど、一人前として稼げるまでにはかなりの鍛練と経験と忍耐力や交渉力や情報収集力なんかも必要になる。

 それでも酷い怪我をしてしまえば高額の医療費や薬代が必要になるし、治療中は稼ぎが0になる。

 治療費が払えずにギルドに借金をする冒険者は多いし、それを踏み倒して逃げようとする冒険者も多い。

 そんな逃げた冒険者を追う専門の依頼もあるし、捕まった冒険者はギルドの登録永久的抹消と借金奴隷として借金と利息を完済するまで魔法で誓約印を捺され過酷な労働を強いられる。

 女性冒険者は、冒険者同士結婚することが多いが、夫が怪我をしたり、妊娠中は働けない為困窮して、生んだ子供を孤児院に預けたり捨てたりする場合も多い。

 一応私はギルド職員なので、多少の保証はあるとは言え、怪我の治療費や長期休職しても生活していけるだけの蓄えがなければ、怖くて結婚なんて考えられなかっただろう。


「その点アルガンさんは稼ぎも多いし、強いし、人柄にも問題無いじゃない?受付嬢や女冒険者の中でも断トツの人気だし。ヒムカちゃんとならお似合いよね~、と思ってたんだけど~?」


「まあ、モッテモテですよね、アルガンさん」


「でしょ~?でも良い感じになった時期もあるのに、ヒムカちゃんはアルガンさんを選ばなかった。何か理由があるの~?」


「う~ん、良い感じ、でしたかね?確かに遠慮もなく話せる仲にはなりましたけど、それは他の皆もですし、特別アルガンさんとだけって訳でもないですし?そもそもそんな甘い雰囲気になった事も無かったですし?」


「そ~なの~?回りからは何時くっつくんだ?って賭けまでされてたのに?」


「何ですかそれ?知りませんよ!そもそも私、モテる男ってちょっと、って思うたちなんで、アルガンさんがいくら良い男でも、恋愛となると構えちゃって踏み出せなかったと思いますね?」


「モテる男が自分にだけ夢中って、女の子が夢見るものじゃない?」


「そう言うミクリーナさんだってアルガンさんを選んでないですよね?」


「まぁそ~だけど~、私の場合、アルガンさんの女性遍歴を知っちゃってるからね~。それでもあれだけモテるのにトラブルはかなり少ないのよ?」


「少ない、無い訳じゃないんですね?」


「どこの世界にも夢中になって見境がなくなるタイプの人は居るでしょう?」


「居ますね。一見大人しく見えるのに、そう言う人の方が厄介だったりしますよね?」


「沢山の女性とお付き合いすれば、一人や二人はそんな人を選んじゃうこともあるわよね~」


「お付き合いしていく内にそうなっちゃう人も居ますしね~?」


「アルガンさんも若い頃はまだまだ見る目がなかったから、まぁ、そう言う事よ!」


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