第五話 モビリティ革命の夜明け・前編 ~漏らした分だけ、人は成長する~
「てめえ、いい年してう〇こ漏らしやがって、このカスが!」
俺はソリーニに罵倒されながら、フル〇ンでパンツを洗っていた。
「いや、お前が俺をシバいたから漏らしたんやろがい!」と
心の中でツッコミを入れながら、黙々と洗う。
「パンツ洗って乾いたら、すぐに配達に行けよ、もう注文はきてんだ」
「あぁ、とりあえず注文来てる分は配達するよ。ただ、今日の午後は一旦
注文を受け付けないでほしい」
「はぁ?お前まだサボる気なのか、もう一発漏らしておくか?」
そういってソリーニは拳を握って威嚇してきた。
俺は反射的にちびりながら言った。
「ひっ(ブリ)、いや待てって、一度話を聞いてくれ!
このままじゃマジで身が持たないし、何より配達効率が悪いんだよ。
徒歩だけの配達じゃ物理的に限界があるんだ」
そう、このままやってても身体的に限界がるし、量をさばけない。
これは俺だけではなく、ソリーニの商売にも影響があることだ。
「一度効率よく配達できるよう、考えたいんだ。だから頼む!
今日の午後は時間をくれ!」
俺は半泣きで頼み込んだ。
「チッ、しかたねえ。じゃあ今回だけだぞ、その考えとやらをまとめてこい」
ふぅ、なんとかソリーニは納得してくれた。
その後、結構な注文量がたまっていたため、俺はパンツが生乾きのまま
配達を済ませていった。
-午後
俺は配達方法の思案と気分転換を兼ねて、
町の外をぶらつきながら考えを巡らせていた。
この世界の移動手段といえば馬や馬車がある。
だが目玉が飛び出るほど馬は高い。
しかも町中で馬をパカパカ安易に走らすこともできないし、
なにより馬が走るとかなり揺れるので、食事の配達には不向きだ。
となれば、自転車を作ってみるのはどうだろうか。
おそらく、鉄や木の加工技術はある程度発達しているので、
設計次第で自転車もどき自体を作ることは可能だろう。
だが、”もどき”から実用的なものにするためには大きな壁がある。
「・・・タイヤかぁ」
当然、この世界にはゴムなんて存在しない。
鉄や木でできた車輪では、現代のように整備されていない町の道では
使い物にならないし、馬と同じく振動で料理がこぼれてしまうだろう。
「はぁ、やっぱり自転車も無理か・・・」
俺は落胆し、近くの岩場に腰を下ろした。
気づけば俺はボーっと景色を眺め、明日ソリーニにどんな言い訳をして
この急場をしのぐか、というシミュレーションをしていた。
「親の急病で、田舎に戻ることになりまして」
「ほ~う、お前転生者のくせにどうやって親の病気を知ったんだ?
というかどうやって元の世界に帰るんだコラ?」
「しょ、しょれはですね、む、虫の知らせというやつでつ(ゴク)」
指の骨をポキポキ言わせながら無言で迫ってくるソリーニ、ちびり倒す俺・・・
「はぁ、やっぱあかんか」
もはや万策尽きた、よし、バックレよう。
そう思って立ち上がろうとしたとき、草むらが動いた。
なにか、にゅるにゅると動くものがいる。
「あれは・・・スライム、か?」
ああ、この世界にもスライムっているんだったな。
しかし、某国民的RPGに出てくるような顔があるタイプではなく、
ただただドロドロにゅるにゅるしている。
正直きもい。
たしかこの世界のスライムは激弱で、攻撃性も皆無で無害、と聞いた。
冒険者たちも素通りしていく魔物らしい。
生き物の生存戦略としては理にかなってるが、誰にも相手にされないって考えると
なんか可哀そうな奴だなと思う。
人間的感覚では、だれの役にも立てないって結構辛いことだからな。
役に立つ・・・・役に・・・・・・・・・・・・・!?
あれ、もしかしてこいつ、”俺”の役に立つんじゃないか?
そう、自転車の”あれ”の代わりになるんじゃないのかぁ??
このぶよぶよ感、いい感じで衝撃吸収するんちゃいますかぁぁ???
俺はニタァと気持ち悪い笑みを浮かべ、ソリーニ亭の常連配達先である
鍛冶屋に向かった。
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