第6話 入隊、そして幼馴染の案内#2
病室の一角、ノアがいるベッドの脇でライカが神妙な顔つきで質問した。
ライカがコエノに聞いたのは、今後のノアの人生に関わること。
つまり、一般人が許可なく魔力を使用したことについてだ。
というのも、「一般人が市街地で魔力を使うこと」は法的に禁止されている。
その答えは明白で――危ないからだ。
「魔力が簡単に人の力の限界を超えられる特殊な力だってのは自明の理だ。
それを使えば、魔力を持たない人を生かすも殺すも自由自在ってのもな」
「魔力」に関して、現段階でも解明されていないことは多い。
その中でもわかっていることは、「魔力」は空気中の「魔素」と呼ばれる存在を体内へと吸収し、「魔力」へと還元していること。
そして、還元された「魔力」は全身を巡り、体中の細胞を活性化させるということ。
それは、本来なら、常人が必死に体をイジメて超回復をするというルーチンを、幾度も幾度も重ねて得る代物だ。
それを「魔力」という物質がコストゼロで肉体を強化するのだから、そのチートぶりったらない。
しかし、それは悪意的に捉えれば、同じ人間の姿でありながら怪物になったも同じ。
それこそ、魔力をもった小学生が、大のゴリマッチョを病院送りにしたというのは、今まで一般人として過ごしてきたノアにも流れる有名な話だ。
つまり、「魔力」を持つ人はその体に「肉体」という名の凶器を抱えていることになる。
当然、その凶器は本人が望もうと捨てることができない。
捨てるということは死ぬことなのだから。
ならば、魔力を持つ人間が自らルールを敷いて、意識的に行動制限を心掛けるほかない。
(......そういうことか)
ライカの質問、それがコエノに向けられた時、ノアは言葉の意味をちゃんと理解できていなかった。
しかし、続けて言う幼馴染の言葉に、魔力を得た今は言わんとすることがわかる。
そして、どうしれライカがそんなことを聞いたのかも。
だからこそ、この先も続けられるライカの言葉に、ノアは黙って耳を傾けることにした。
「だから、アタシ達は普段その力を公的に仕える立場に所属している」
特魔隊の立場は警察と同じだ。取り扱うのが人間か怪物の違いでしかない。
だからこそ、警察が銃の携帯、果ては使用が許されているように、特魔隊も特定の状況下のみの魔力の使用が都市から許されている。
その特定の状況の一つが、ノアが襲われた「アビス災害」によるものだ。
「んで、生まれて五歳になった子供に魔力の有無を調べる魔脈測定試験もその一環だ」
聞き覚えのある言葉に、ノアの目が細くなる。
その試験はノアとライカが離れ離れになる原因になったものだ。
魔脈があるライカは隊員になり、当時は魔脈が発見されなかったノアは一般人と判定を受けた。
その時の悲しさは今でも思い出せる。
一緒の戦場に立てないと現実に言われたのだから。
「その検査の目的の大半は、人類を脅かすアビスと戦える適正を持った子供の選別であるけど、同時に都市の治安を維持するために、「魔力」を使える子供を把握しておく必要があるものね」
ライカの話を聞き、その先に続くであろう言葉をコエノが引き取った。
その話を受け、忌々しく思っていた測定試験に別の側面があることをノアは知る。
悪い言い方をすれば、選別していたのだ―人間か、怪物の卵かに。
そんな別の話に気を取られているノアをよそに、ライカは「だけど」と言葉を挟み、最初の質問の核心たる内容に触れる。
「ノアは一般人でありながら、街中で魔力を使ちまった」
問題部分を強調するように、ライカの言葉で病室が静まり返る。
ライカの言葉をもう少しかみ砕けば、一般人が凶器を振り回したということだ。
この場合の「一般人」はもちろんノアであり、「凶器」は魔力を帯びた肉体である。
あの時は非常時であり、同時にライカが幼馴染であったから黙認された。
しかし、それは特魔隊全体から認められたわけじゃない。違法は違法だ。
今のノアの状況は、裁判長から判決を下される直前も同じ。
「いくらアタシが正当性を主張しようと、使った事実は変わりない。
それに、今のアタシの立場だと発言力もあんまないし、守り切れない」
だから、自分より発言力のあるコエノに、ライカはノアの処遇を尋ねた。
一端の隊員でしかないライカには、ノアの処遇を決める決定権がないから。
なればこそ、自分より立場が上のコエノの判断が、この場ではノアの社会的生死に関わる。
コエノの一言で、ノアは街を救った名誉ある一般人か、犯罪者のどちらかに決まるのだ。
そして、言うまでもなく、犯罪者となった時点でライカとの約束も何もなくなる。
せっかく魔力を使えるようになったノアにとって、それが一番恐ろしいことだった。
一抹の不安が脳裏に過り、ノアの額にじんわりと汗が浮かぶ。
静寂と緊張が帯びた空間の中、ライカの質問にコエノはゆっくり口を開き、
「そうね、客観的に言えば犯罪者よ。
凶器が肉体である以上、それも抜き身の凶器を振り回した以上、普通の罪よりよっぽど重罪。
もちろん、私としてはよく利用するあの駅を救ってくれたんだし、このまま見逃したいんだけどね」
「そう、ですよね......」
眉尻を下げ、ライカはガックシと肩を落とした。
その言葉には先程の覇気は無く、膝上で拳を握る姿は自分の無力感を嘆いているようにも見える。
いや、実際その通りなのだろう。だって、言葉にしていたから。
そんな優しい幼馴染の姿を見て、ノアは「大丈夫」と声をかけようとしたその時――
「だけど――」
続きを言うように、コエノが接続詞を加えた。
瞬間、ライカの顔が希望を見せるように上がる。
ノアの視線も漏れなく口を開くコエノへ注がれた。
その二人の視線を一斉に浴びながら、コエノは話を続ける。
「特魔隊は常に人手不足なのよ。ほら、命を張る危険な仕事だし?
だから、新しい人材......特にアビスと戦える存在は常に欲してるのよ。
その点で言えば、ライカちゃんと共闘したとはいえ、ノア君は大きな実力を示した」
「僕が戦っていることを知ってるんですか?」
「ライカちゃんの首にあったチョーカーデバイスでの魔力反応や、近くの防犯カメラで見てたのよ。
で、今さっきまで本部では『あの一般人は誰だ!?』や『特魔隊に引き入れろ!』やら大慌て。
ま、本部が欲してる強い人材がポッと現れれば、そりゃ騒ぎにもなるわね」
その当時の状況を思い出しているのか、コエノは「フフッ」と笑った。
しかしそれもすぐに収まると、真剣な顔つきで人差し指を立てる。
「それで今あなたには二つの選択肢がある。ただし、人生を大きく左右する選択肢。
一つが特魔隊に入るという選択。先も言ったけど、特魔隊は戦える人を欲してる。
そしてあなたの実力に、本部はより多くの人を救えると判断した」
特魔隊の貴重な戦力、それも精鋭の中の精鋭と呼ばれる存在は十六年前にほぼ全滅した。
長年かけて集めた何十体ものSランクキャラが、何かの手違いで数える程度しか手元に残らず、ボックスにあるのはそこそこの数のAランクキャラと、大量のBランクキャラとサポートカード。
その状態にある特魔隊からすれば、実態は掴めずともAランク以上のポテンシャルを見せるノアという存在が、喉から手が出るほど欲しいと考えるのは至極当然の話だ。
「その結果、あなたの入隊はほぼ強制状態。
当然、犯罪者になりたくなければ......という脅しつきでね」
そこまで言えばもはや一択のように思えるが。
そんなノアの頭に浮かぶ疑問の種を潰すように、コエノは中指を立てる。
「二つ目が一般人に戻るという選択肢。個人的にはこっちね。
本部は脅しはするだろうけど、実際に犯罪者にするつもりはないと思うの。
ただし、あなたの力は度が過ぎるから、かなり酷な制約が課せられる。
だけど、それを鑑みても、私はそっちの選択肢の方がいいと思ってしまう」
「それはどうしてですか?」
随分念押しするその言葉に、ノアは首を傾げた。
すると、目を真っ直ぐ合わせると、コエノは少し寂しそうな顔を浮かべ、
「特魔隊は命の価値が軽すぎるのよ。医者をやってると常々そう思う。
確かに、世のため人のために、アビスと戦ってくれることには感謝しかない」
一度瞑目したコエノ、言葉に出した重みに頬を固くした。
それから目を開けると、言葉の重みをさらに大きくするように、
「でも、彼らは決して英雄ではない。ただの人間なのよ。
『傲慢』のアビス王を倒した栄光の裏で、多大な犠牲を生んでいる。
ノア君......あなたのお父さんだって決して例外じゃないのよ」
(そっか、コエノ先生なら当然お父さんを知ってるか.......)
その表情を見て、コエノの言わんとすることをノアは察した。
コエノは、特魔隊員を数多く見てきた医者である。
これまで、アビスと戦い傷ついた者達を多く癒し続けた。
時には、戦場近くに設置した野戦病院で治療した隊員もいるだろう。
しかし、それでも奮闘空しく息を引き取ってしまった隊員もいたはずだ。
その時の医者が抱える自身の無力感など、当然ノアに理解しきれるはずがない。
加えて、治療が出来た隊員は無事に医者のもとまで生き残れた隊員の数に過ぎない。
その原因がアビスか、建物による圧死かと多少の違いはあれど、大抵は医者の治療を受ける前に事切れるのだ。
そして、その中には十六年前――父親であるオルガも含まれる。
そんな知り合いの子供が、死に一番近い場所に向かおうとしている。
その行動は医者として、そしてオルガを知る人物として、とても看過できないことだろう。
そんな意味合いを含んだ感情が、コエノ言葉の端々から伝わってくる。
それは全て、自分の身を案じての忠告だった。
「あなたがライカちゃんとの約束を果たそうとしているのはいいと思うわ。
けれど、それは命を賭してでも叶えないといけない夢なの?
先に入ってしまったライカちゃんは、今までの功績からしても簡単には抜けれない。
でも、まだ君なら引き返せる。それでも――あなたは前に進むの?」
「僕は.....」
コエノの真っ直ぐな問いに、ノアは僅かに言葉を零しながら考えた。
自分の気持ち、コエノの気持ち、ライカとの約束、そしてこの世界のありさま。
どれも決して蔑ろにしてはいけないものであり、されど大事なのは自分の答え。
質問を脳内に反芻させ、心に沁み込ませるように、やがてノアは瞑目する。
その言葉に対する自分の解、それ心の中から紡ぎ出すように意識に手を触れた。
それから数秒後、ノアは目を開ける。病室の電灯が少しだけ目を焼いた。
考えた時間は僅か数秒、それでも自分の大切な「熱」を言葉に変換し、
「僕はそれでも特魔隊に入りたいです。
どうか僕にもコエノ先生の平和を守らせてください」
「――っ!?」
端的に自分の意思を示したノアに、コエノが瞠目する。
一方で、ノアの発言に、ライカは鼻を啜っていた。
そのノアの口説き文句とも捉えかねない言葉に、コエノは短く息を吐き、
「......ハァ、酷い殺し文句ね。違う意味であなたの将来が心配よ。
けれど、わかったわ。あなたが自ら望む限り、特魔隊は快く迎えてくれるはず。
それじゃ、また後で諸々の手続きをやることになるけど、大方私がやっとくわ」
「え、いいんですか? そんなことしてもらって」
「いいわよ、それぐらい。
それよりも一日でも早く馴染めるように努めなさい。
明日にでもライカちゃんに学校の方を案内してもらったら?
ほら、ライカちゃんも泣いてないで反応する」
「泣いてないから!」
重たくなった空気を散らすように、コエノがライカに水を向ける。
突然のからかうような言葉に、ライカは大きな声で言い返した。
しかし、すぐに言い足りない言葉をため息に吐き出し、ライカは一度瞑目し、次にゆっくりと目を開ければ、
「ノア、アタシもお前を守るから。絶対だからな!」
「なら、僕もライカを守るよ。そうすれば、死角無しだね」
「ノアああぁぁぁ!」
瞬間、感情を爆発させたライカがノアに抱き着いた。
両腕をホールドするように回した腕は、ギギギッと万力のようにノアの体を締め付ける。
「いだだだだだだ! ライカ、ちょ、たんま! 離れ......て......」
感情のふり幅が限界突破した幼馴染。
その喜び表現がとても激しすぎる。
ゴールデンレトリバーもびっくりな飛びつきっぷりだ。
いや、この身が締め付けられる感覚はクマに襲われたと言った方が正しいか。
背中辺りをタップしてギブ宣言を出してるが、もはや届いていない。
というか、不味い.......痛いを通り越して、もはや意識が――
「ん? ノア? ノアー! コエノ先生、ノアがまた気を失っちまったー! どうしよう!?」
「あーもう! この怪力娘が! 加減を考えなさい! 加減を!」
―――翌日
病院から無事退院すれば、ライカに特魔隊本部付属の教育機関――もとい、学校を案内してもらった。
広い敷地にダンとそびえる強大な建物。
近くに首がもたげそうなビル群に囲まれながら、そこには確かな緑もあって、それがある意味そこが特別な施設であることを印象付けている。
そして、その学校は高校というより大学のキャンパスに近かった。
「へぇ、教室や食堂だけじゃなくて、アビスの科学研究室や武器加工室なんてのもあるんだね」
「それだけじゃねぇぜ。ちゃんと外にも中にも訓練場があるし、射撃場もある。
訓練場は時々隊員同士の力試しとして使われる場合があるんだ」
そんな場所の一つの廊下を歩いているノアは、完全にお上りさんだ。
顔を忙しなく動かし、あっちを見たり、こっちを見たり。
特に、射撃場があるというのは心ときめく。
やはり手は出来るだけ銃の形に馴染ませておきたいし。
そんな幼馴染を見て、ライカは「子供みたいにはしゃいじゃってよ」と頬を緩め、言葉を続ける。
「一般人が通う軍の大学に似てる感じだな。
ま、最低限のルールさえ守ってれば、そこら辺よりかはだいぶ緩いけど。
で、このまま向かって右手側に移動すると食堂が見えてくるはずだ。
昼まで少し早いけど、良ければ食ってくか?」
「いや、今はお腹空いてないからいいかな。
にしても、わざわざ休日に案内させてごめんね?
週明けには、すぐに転入予定のせいでバタバタしてる感じで。
なんだったら、僕は未だ自分の住む部屋の場所すら知らないけど」
「気にすんな。こっちだって好きでやってることだしな。
それにまぁ、久々に二人でゆっくり話せるし......」
「ん、何か言った?」
「あ、んん、いや、なんでもない。
寮の場所なら最後に案内してやるよ。
内装は極力元の部屋と同じにしてあるらしいぜ。
さすがに部屋の広さばっかりはどうにもならねぇけど」
学生以下の隊員は、基本寮で過ごすことが義務付けられているらしい。
なので、昨日入隊したノアは今現在引っ越しの最中だ。
もっとも、それをやっているのは引っ越し業者で、ノアはこうして暇してるわけだが。
その時、のほほんとしているのの顔をライカがじっと見てきた。
それも訝しむような視線で。
その視線に気づいたノアは首を傾げる。
「ん? こっちをジッと見てどうしたの?」
「あ、いや......なんというか普通に気になんねぇのかと思って」
「何が?」
「勝手に軍の業者に家の荷物運ばれるってこと。
ほら、こう......アタシが言うのもなんだが、見られたくない荷物もあるんじゃないかと思って」
その言葉に、ノアは「あー」と緩い返事をすると、
「ま、別にいいかな。確かに、ちょっと恥ずかしいけど、見られても特に問題ないし」
「そんなことない!」
瞬間、ライカがノアの前に立ち、ガシッと肩を掴む。
そして、睨むような目つきでそう言った。
まるで自分がおかしな発言をしたことを問い質すような視線。
それこそ、さっきの訝しむ視線より圧がある。
ライカが何を言いたいのかわからないノアは眉根を寄せ、
「き、急にどうしたの?」
「お前は可愛いんだから、よからぬことを考える奴はいる!
例えば、布団のニオイをかいだり、下着を盗もうとしたり!
挙句には、お前のこれから住む部屋に、盗撮カメラや盗聴器を仕掛けるかもしれない!
いいか、ノア! その慢心が取り返しのつかないことに繋がるんだ!!
女の子としての自覚を持て!」
本当に何を言ってるんだろうか、この幼馴染は。
加えて、真剣に言ってそうだから余計に質が悪い。
確かに、昔は女の子っぽかったからよく同性からからかわれたし、それをライカが守ってくれた。
とはいえ、昔は昔。今でこそ、こんなにも立派な男になったではないか。
「忠告ありがとう。でも、まず僕、男の子......」
「男の娘はもっとダメだ!!」
「ライカ、一旦落ち着こう。ね?」
ライカの突然のスイッチの入りように、ノアは戸惑うばかり。
一体何がどうしたら彼女をそうさせてしまうのか。
この十数年で何があったのか。うん、全くわからない。
とりあえず、荒れ狂う幼馴染をなだめることに成功すると、ノアは両肩に乗る手を下ろしつつ、「ともかく、僕は大丈夫だから! 」と無理やり納得させ、広がる前に話を変えた。
「それよりも、確か訓練場みたいな場所があるんだよね。
そこまで僕を案内してくれないかな?」
「あるけど......なんで急に?」
「ほら、僕はこれまで魔力を使えなかったじゃん?
でも、今こうして特魔隊になって、それならライカのいる位置まで頑張ろうって思って、同じレベルの動きが出来るように――」
「わかった。ついて来い」
ノアが言葉を言い切る前に、ライカが突然歩行スピードを上げた。
それこそ、あっという間にノアを置き去りにしていく速度でもって。
先程から態度が急変する幼馴染に困惑しつつ、ノアは駆け足で追いかける。
「ライカ、なんか歩くペース早くない?
別に場所を知りたいだけだから、そんなに急がなくても......」
「早くなってない。急いでもない。
だから、横に並ぶな。顔を見ようとすんな。
お前は黙ってアタシの後ろをピッタリついてこい。いいな!?」
「い、イエッサー.......?」
肩越しに振り返り、返事の確認をするライカ。
その目はギロッと睨んでいたが、同時に頬と耳が赤かった――気がした。
変わらず不審さを見せつけるライカに、ノアは首を傾げる。
そして、言われた通りに後ろをついていく。
それから数分後、不自然なほど会話もなく訓練場にノアは辿り着いた。
その頃には顔の赤みが引いてたライカが、ドームのように大きい訓練場を見て口を開く。
「ここが室内訓練場だ。多くの人がここを利用する。今は休日でいないみたいだがな。
一応、さっきも言ったが、外にもスタジアム的な訓練場がある。
ただ、あっちは基本上司の許可がいるがな。
で、この場所の入り口からすぐ右に曲がって奥に射撃場がある」
「なるほど、あの位置か。僕の武器は銃だし、ちゃんと慣らしておかなきゃ」
「あぁ、頑張れ。もっとも、使うのは魔力量があまり多くない連中だけどな。
ちなみに、メイン武器で銃って案外珍しいんだぜ?
汎用武器で銃が多いからか、見かけることが少ない」
「そうなんだ。じゃあ、僕はラッキーな方なんだね」
「で、ここまで案内したはいいけど、これからどうすんだ?
なんだか顔に『ここで動きたい!』って書いてあるけど」
「っ! アハハ、バレちゃったか......」
ライカの指摘に、ノアは照れ臭そうに後頭部をさする。
しかしすぐに、一つ咳払いして気持ちを切り替えると、キリッとした目でライカを見た。
「ライカ、実は.....折り入って頼みがあるんだけど」
「頼み? いいぜ、何でも言ってくれ」
「僕の師匠になってください!」
あまりに男らしい発言に胸を借り、ノアは勢いよく頭を下げる。
その瞬間、ノアには見えない視界の外、ライカの頬が再び緩み始めていた。
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