第5話 入隊、そして幼馴染の案内#1
「全く、無茶しやがって.......」
病室の一角。
ベッドのそばに座る黄色い髪をポニーテールにまとめた少女――ライカはそう呟く。
青の双眸で見つめる先にいるのは、ベッドの上で眠るノアだ。
というのも、駅前広場で共闘した直後、意識を失ってしまったのだ。
突然の出来事で随分と焦ったが今は落ち着いてる。嘘だ、今も心配が拭えない。
病院に運んでから数時間後が経過するが、今だ目を覚ます気配はなし。
時刻はとっくに夜中になっているのに。随分と寝坊助なことだ。
このまま目覚めなかったら、と脳裏に過る一抹の不安を振り払うように頭を振り、それを懐かしさで塗り潰すように視線を移動させる。
「髪飾り、まだつけてくれてたんだな......」
視線を移動させる際、そんなノアの幼さ残る寝顔に頬を緩めつつ、辿り着いた先は前髪。
そして、前髪の一か所に太陽の形をした髪留めをつけている。
もっとも、そのせいで印象がより女の子寄りになってしまっているが。
しかし、それもいい。いや、それがいい。
それになにより、それを今もつけてくれていることが嬉しい。
「お前はアタシが『太陽みたいな大きな存在感で皆を照らしてくれるから』ってことで、その髪留めをプレゼントしてくれたっけな。
んで、それに対して、アタシはお前がパートナーとして一番だってことで『アタシが昼ならお前は夜だな』って言ってこれを渡したんだっけ」
一言一句、当時のやり取りが思い出せる。
そして、それを言葉にしてみれば、胸に広がる温かさに、ライカは頬を緩めた。
それはライカとノアが離れ離れになる前の頃に、互いの誕生日にプレゼントしたもので、生涯忘れることのない大切な思い出の品だ。
しかしその当時、ノアがプレゼントしたのは今彼が身に着けている太陽の髪飾りだ。
そして当然、ライカもあげたはずの月のネックレスを自分自身につけている。
つまり、互いのプレゼントが手元に戻ってきてるわけだが、これにはちゃんと意味がある。
というのも――、
「けど、アタシが特魔隊への入隊を理由に離れる時に、互いの大切なものをもう一度交換したんだよな」
互いに、互いの大切なものを交換し合う。
幼馴染のことを忘れないように。
それが信頼を示す証であり、決して千切れない絆の証でもある。
左手で襟もとをめくり、ネックレスを右手でつまみ出して、掌に乗せる。
そこにある月と雲で構成されたネックレスを見て、ライカは少し目を細め、瞳を潤ませた。
それほどまでの想いが籠った物をノアがちゃんと身に着けていてくれた。
それは自分とノアの気持ちが一緒だったということで。今度は胸がキュンと弾む。
「とはいえ、やっぱお前が傷つくのは見てらんねぇんだよ」
高まる鼓動を胸に、ノアの顔にそっと手を伸ばす。
目にかかる前髪をそっとズラした。
細いけど触り心地の悪く無いサラサラとした毛質が手に感じる。
柔らかい髪に、女顔よりの童顔、そして鍛えているはずなのに細く見える体。
瞬間、口元がさらに緩み、弾ける乙女思考。
(あ~~、やっぱめっちゃ可愛いなぁ)
ノアと顔を合わせるのは、それこそ一年に一回あるか無いかだ。
自分の性格が男寄りなので、滅多なことじゃ電話しない。
それこそ、あっても「なんか声聞きたいな」と思った時ぐらい。
いや、見栄を張った。本当は自制が出来なくなりそうだから我慢してるだけだ。
にしても、母親寄りの顔だとは思っていたが、まさかここまで童顔になるとは。
男はなんだかんだ男らしい顔になるので、てっきりイケメン寄りになると思っていたのに。
だが、これも悪く無い。むしろ、良い。
幼馴染に対するライカの気持ち。
雪解けにより増水した河川のように、積年の想いが溢れ出る。
そして、それは簡単には止まらない。止まれない。
(それに、華奢な体つきの割には、男骨格であることがわかる筋肉のつき方。
こうして触ってみると、意外と筋肉質ってわかるんだよな)
若干熱暴走し始めた思考、幼馴染という距離感もあり倫理の扉をライカに突破させる。
それ即ち、抗えぬボディータッチ。否、ここはあえて触診と言い換えよう。
そう、これは幼馴染の無事を確かめるための立派な治療行為。
だって、こんな線の細い体に傷がついたら事だろう。
いや、待てよ。ふむ、そうか、そうかそうか。
昔のノアは髪も眺めだったので寄り女の子っぽかったが、今もイケるのでは――、
(うん、女装させたらちゃんと女の子に見えそうで......おいおい、最高かよ!)
脳裏に思い浮かべるはノアをモデルにした数々の不純。
乙女的思考――というよりは、厄介幼馴染思考であり、思わぬ性癖が漏れてしまう。
しかし、口に出さなければいいのだ。脳内で思うだけは自由。うん。自由。
そんなことを考えながら、愛おしそうに見つめ、口角を深めるライカ。
いや、先ほどのライカの思考を踏まえて端から見れば、少々愛が歪んで見えるかもしれない。
とはいえ、それだけノアはずっと昔から自分の推しなのだ。
そして、自分は未来永劫のファン第一号。
少なからず、まだノアと離れ離れになる前、自慢の幼馴染をからかう狼藉者どもをぶちのめす程度には。
(ぶっちゃけ再会した時、めっちゃ抱きしめたくなったもんな。
今更ながら、よく我慢したぞ、アタシ)
もっとも、その頃に抱きしめようものなら、ノアは漏れなく大熊にサバ折りにされる苦痛を味わっていただろうが。
いや、それ以上に、魔力が発動してない時点で死ぬ。
ただでさえ、自分は魔技の特性でフィジカルモンスターになってるのに。
危ない危ない、我慢してなければ、ノアを殺していた所だった。
そんな思わぬ最悪の未来の回避に、ライカがホットしたところで、一つの記憶が疑問に浮かんだ。
それはノアが魔力を明かした証拠とされる紅い瞳をした時だ。
魔力の発露で体の一部が変化する事例はまず聞いたことないが、それよりも、
(そういや魔力を解放した時、ちょっと目つきがキリっとしてて、口調も雄々しくなっていたような)
共闘時のノアの様子をライカは思い出した。
その時の彼の言動、かつてを知る者からすれば、驚くべき変化だった。
魔力を解放できたことで、テンションがハイにでもなっていたのだろうか。
少なからず言えるのは、あの時もノアの新鮮で良かった。それは間違いない。
.......ん、新鮮? 待て、新鮮と言えば――、
(今もやばいよな。だって、久々に見たノアの寝顔だぜ?)
昔は何度も見た寝顔だが、今となれば感じ方も違う。
ライカ自身のテンションが上がり始めたせいか、先ほども見ていた寝顔なのにより可愛く感じる。
あどけない、素晴らしい。長いまつげ、良き。二重で目がハッキリしてる、最高。
(頬とか突いていいかな? いいよな? .......いやいや、我慢! 我慢だアタシ!
これでもし、タイミング悪くノアが起きてみろ! 引かれたら死ぬぞ、アタシは!)
煮えたぎるような衝動が容赦なくライカを襲う。
先程まで散々触診していたが、それでも衣服の上だ。
肌を触るとでは天と地ほどの差がある。
そう、そこは鋼......よりは柔らかい鉄......でもないガラスの理性で制御しなければ。
とはいえ、あくまで我慢してるだけなので、ガラスの容器に今にもリビドーが溜まりっぱなしだ。
所謂、据え膳のような状況で、もどかしく思うのに男も女もない。
「あ、不味い.....」
その時、拙く漏れた自制の言葉とは裏腹に、ライカの右手がノアの頬に伸び始める。
手が「幼馴染の顔に触れさせろ!」と訴えかけてくる。
制御が利かない。まるで自分の手ではないみたいだ。
「んっ......」
「――っ!?」
その時、ノアが短く声を出した。
瞬間、ライカの右手は何事もなかったように、膝上の定位置へ。
「ん......あれ? ......ここは.......?」
「起きたか。無事で良かった」
ノアが目を覚ましたことを確認すると、ライカは平静を装って声をかけた。
すると、彼は幼馴染に顔を向けては、フニャッとした寝起きの表情で返答する。
「あ、ライカ......おはよ」
「――っ!」
瞬間、ライカは手で口を覆った。
しかし、鋭くとがった口角が、両手から漏れ出る。
端から見れば容易にニヤけてることが想像つく頬を張り方だ。
もっとも、寝起きの低血圧でボーッとしてるノアは気づいていないが。
(よ、良かった......なんとか言葉に出なかった。
ノアにだらしねぇ顔は見せられねぇ。よく我慢したぞ、アタシ!)
のどまで出かかった推しを語る言葉を、ライカはゴクリと飲み込んだ。
早鐘を打つ鼓動は悪事がバレそうになったからか、貴重な寝起きを見れたからか。
ともあれ、今の状況は結果的に大助かりだ。早まらなくて良かった。
なぜなら、自分のスタンスはあくまで硬派だからだ。
そのイメージでこれまでやってきた。今更変えられない。
とはいえ、すぐさま普通に返答が出来そうにない。
一先ず、頷きでもって返答すると、ライカは胸に手を当てた。
そして大きく息を吐き、気持ちを落ち着かせると、
「......調子はどうだ?」
「特に痛いところはないかな。ただ、ここにいる理由がわからないって感じだけど」
大きくあくびをしようとして、ライカに気付きあくびを噛み殺したノアがそっと体を起こした。
そんな幼馴染をライカは見つつ、
「そりゃ、お前が気絶してたからな」
「気絶?」
「あぁ、お前が魔力を解放してアビスを倒した後、急に意識を失ってな。
最初は魔力が枯渇した際の症状かと思った。
だが、ここに来て調べてみりゃ別にそうじゃないって感じで。
だからまぁ、疲労なのかと思って待ってたんだ」
そう言って、ライカは腕を組み、ノアの顔をチラッと見る。
それから何かを考えるように一瞬目線を落とすと、「一応、確認しておきたいんだが」と続けて、
「ノアはこれまでに魔力を解放できたことはあるか?」
「いや、無いかな。あの時が初めてって感じで。
初めはどうやって出したかもわかってなくて......あ、いや、今は少しだけわかるって感じで」
「安心しろ、別にノアのことを疑ってるわけじゃねぇんだ。
ただ、急に魔力が解放出来たってことが気になってな」
幼馴染を憂慮するライカの言葉に、ノアは「そっか」と頬を緩めた。
そんなノアの表情を見て、ライカも腕組みを解き、一息吐くと、
「もともとお前は魔脈はあったんだし、あの時の襲撃がキッカケって感じなんだろうけど……ノア、どうした?」
その時、何やら妙にノアと視線が合わなくなったことに気づいたライカ。
それを指摘してみれば、ノアは少し挙動不審な様子で「なんでもないよ」と首を横に振るだけ。
「......」
ライカは首を傾げる。
しかし、深く聞くことは避けた。
誰だって言いずらいことはある。
ならば、幼馴染が自然と答えてくれるまで待つだけだ。
****
ライカと話していると、ノアがいる病室にコンコンコンと扉をノックする音が響いた。
「お話中、失礼。少しだけ時間貰えるかしら?」
病室に入って来た人物は、白衣を着た女性。見る限り医者であった。
金髪を後頭部でとぐろのようにまとめ、翠瞳はどこか煽情的な色香を放つ。
それに加え、青いワイシャツは胸元が見えるほど空いているのだから余計に濃艶に感じる。
そんなノアの感想をよそに、女性は右手を胸元に当て、
「私はコエノ=セントゥリーニ。見ての通りお医者さんをしているの。
そして主に、この特魔隊本部の総合病院で沢山の隊員を治療してきたわ。
ま、あなたは隊員じゃないのだけど、魔脈持ちということだから一応ね」
そう言うと、すぐに近くにいるライカをチラッと見るコエノ。
同時に、ライカに向かって意味深の笑みをニタリと浮かべる。
端から見ても一目でわかるイタズラっぽい笑みだ。それもライカに対して。
どうやらそれなりにライカと長い付き合いらしい。
じゃなきゃ、ライカ相手にからかうなんてことはしないはずだから。
「ふふっ、知ってるかしら? 君をここまで運んできたライカちゃん。
今ではこんな感じだけど、実は駆け込んできた時とっても慌ててたのよ?」
「ちょ、コエノ先生!? なんで急にそんなことを!?」
コエノの言葉に、ライカは慌てた様子で声を出した。
そして、すぐにノアの方を見れば「違くないけど、違うんだ」とよくわからない言い訳を始める。
その謎の言動に首を傾げるノアだが、しかしライカを心配させたのは事実。
そのことに対しては、純粋に申し訳なさが募り、
「心配させてごめん」
「あ、いや、別にノアが謝ることじゃ......コエノ先生! さっさと本題入ってください!」
「はーい」
ぷんすかと怒るライカが分が悪いことを察して、すぐに話題を逸らすように声を荒げる。
そんなライカをケラケラと笑うコエノは、ノアのベッドに腰をかけると、艶めかしく足を組む。
それから、言われた通りに本題へと移り、
「とりあえず、君が寝ている間にメディカルチェックさせてもらったわ。
大した怪我はないようね。だから、このまま退院しても問題ない」
「そうなんですか。診てくれてありがとうございます」
「大したことはしてないわ。医者の使命を果たしただけだもの。
にしても、聞いたわよ。ライカちゃんと一緒に戦ったそうじゃない。無茶するわね。
一般人でも魔脈持ちは一定数いるけど、その人達は大抵戦うのが怖いから一般人なのに」
興味本位といった様子で、コエノは当時の行動について言及してくる。
僅かに苦笑いを浮かべたノアは、返答にどうしたもんかと迷った。
確かに、あの時は無茶をした感覚はある。というか、無茶しかしてない。
あそこは本来逃げて正解の場面だったのに。
だけど――、
「そう.....かもしれませんね。無茶したことは反省しています。
ですが、僕の場合はもともと特魔隊志望でして。
これまではなぜか魔脈を持ちながら魔力が扱えず、そのせいで一般人としての生活をしなければいけなくて......でも、諦めきれなくて」
今思い返しても、魔力を得るまでの日々は劣等感と戦う毎日だったかもしれない。
魔脈という鞘から抜けない剣を持っていたから余計にそう感じて。
でも、それでも、前に進み続けたのはライカとの約束、そして自分の夢があったから。
諦めきれなかった。それが、その言葉が、掛け値なしの本音だ。
自分の手を見つめると、ノアはギュッと握る。
「そんな時、駅前広場でアビスゲートが現れて、そこで偶然ライカと再会して。
僕を守るためにライカが傷つく姿に、何もできず指を咥えてるだけの自分にムカついて......って、あ、すみません、聞いてもないのに一人語りしてしまって」
「ふふっ、愛ね」
「ちょ!?」
ノアの言葉に、コエノは内容を端的にまとめた。
確かに、客観的に聞けば、幼馴染への愛に溢れた発言だったかもしれない。
もっとも、それは「親愛」や「友愛」の類だが。
瞬間、いち早く反応したのは当然ライカだ。
厄介を働く女医の発言に、彼女はツッコもうとしている様子で口を開く。
しかし、それよりも先に、ノアが言葉を発した。
「そんな大層な気持ちじゃありませんよ。でも、僕はライカと約束してたんです。
一緒に全てのアビスを倒そうって。片時も忘れたことのない約束です。
だから、じっとするしかできなかった自分自身に、きっと嫌気がさしたのかもしれませんね」
「何それ、す――むっ!」
瞬間、反射的に出そうになった言葉を押し留めるように、ライカが手で自らの口を覆った。
まるでこの場で相応しくない雄たけびをしそうになったのを必死に抑える様子で。
そんな初々しい彼女を、ノアは首を傾げ、コエノは横目に見て微笑んだ。
そして、コエノが「そうそう」と話題を変える前置きを入れると、
「ここに来たのはもう一つ理由があってね。
これは検査してわかったことなのだけど......ノア君、あなた面白い体してるわね」
「面白い体ですか......?」
「えぇ、実は、君に魔脈の損傷などを調べる魔力超音波機を使った時、君の魔脈から強い跳ね返りを受け取ったの。
で、跳ね返りの強さは、そのまま魔脈の硬度に繋がるんだけど......つまり君の魔脈はとっても固い」
それから、コエノの説明を聞くに、「魔脈」は人間が持つ血管のようなものであり、そこには血液の代わりに魔力が流れるという。
それを駆使して戦うのが特魔隊員であり、それ以外を「一般人」と区別しているようだ。
そんな一般人であるが、その中でも魔脈を持つ人は、二種類のタイプに分けられる。
それが「魔力が少ない」タイプと、「魔脈が固い」タイプである。
前者の場合は、そもそも体を最低限強化する魔力すら持たない人だ。
魔力量は基本生まれつきによるものなので、普通の人より少し頑丈という程度。
ただし、後者の場合は魔力量とは別である。
なぜなら、魔力を流すパイプが錆びついてしまっているだけなのだから。
つまり、一定以上の魔力があり、なおかつ錆さえ剥がせれば、特魔隊員として活躍することができる。
「そう、だったんですか」
そのコエノ説明に、ノアは初めて聞いたような反応をした。
しかし実の所、その情報はすでに知っている。
というのも、シェナルークと契約した後に、どうしてノアがこれまで魔力が扱えなかったかを、契約者本人から教えてもらったのだ。
「傲慢」な王様曰く、魔脈が固いのは必要な処置だったらしい。
なぜなら、王様の魔力量はあまりにも膨大であったから。
(確か今の僕って、例えるならプールほどの魔力量が体内に収まってるんだよな。
通常の人の何千倍だかって、あの王様は言ってた)
されど、人の許容範囲を超えるものが内側にあるとすれば、それはもはや大量の火薬が詰まった爆弾も同じ。
些細なキッカケで爆発し、人の形などあっという間になくなってしまうだろう。
故に、体が壊れないように、シェナルークによって魔脈があらかじめ固く作られていたのだ。
そのため、自分は魔脈を持ちながら魔力を使えないという状況に陥っていた。
そのノアの情報を知る由もないコエノは、シェナルークから聞いた情報をなぞるように丁寧に説明してくれ、
「君の体には膨大な魔力......それこそ、特魔隊員でも多いとされる隊員のはるか数十、下手すれば数百倍の魔力を内包しているの。
そんな魔力が体の中で解放できずに暴れているとなれば、魔脈が異様な硬度を持ったとしても無理のない話よね」
そんなコエノの言葉に、ライカはそっと腕を組んだ。
目を瞑り、理解を示すように頷く姿勢も見せる。
「なるほど、それが理由だったわけか。
どうりで魔力を開放しただけっつーのに、あのデカアビスを殴り飛ばせるわけだ。
さすがアタシの幼馴染だな。やることなすことスケールがちげぇ」
「あはは......それは言い過ぎじゃない?」
というか、実際、言い過ぎだ。
あの力はシェナルークの魔力で無理やり肉体が強化されたものだ。
自分の力でどうにかできたと言えたら、どんなに胸が晴れるだろうか。
「いいや、そんぐらい凄いことだったんだ。だったんだが――」
前半の誉め言葉から一転して、後半を少し言い淀むライカ。
聞きずらそうに眉根を寄せ、腕を解けば、両手を膝の上に置いた。
それから少しして、コエノの方を見ると、青い瞳をキリッと向けると、
「で、これからノアの処遇はどうなる?」
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