第46話 旧都市へ進軍、そして始まる怠惰戦#1
決戦当日、旧都市トルネラの前には「怠惰」のアビス王を打倒せんと集まった者達で溢れかえっていた。
総勢六十五名の特魔隊所属の主戦力および道中までの露払い部隊。
同じく、特魔隊に所属し、魔力を持たない一般戦闘員部隊。
その部隊が扱う戦車部隊、強化装甲部隊、人型武装兵器部隊など現状で生み出せる最高戦力が集結している。
そんな中の直接「怠惰」のアビス王と戦う強襲部隊にいるノアは、静かに戦意を高めていた。
これから始まるのは、事実上の人類の命運を賭ける戦い。
その大一番に自分がいれることの高揚感と、そしてあまりにも大きい責任にプレッシャーを感じていた。
そんなノアの様子を知ってか知らずか、脳内に直接声が響き渡る。
『ノア君、体調の方は大丈夫?』
声をかけてきたのはオルぺナ――ではない。
本来、ライカの担当オペレーターである彼女が、引き続きノアを兼任で担当する予定だったが、相手が相手であるためにそのマルチタスクは本部からも憚られた。
とはいえ、それではノアは誰もオペレーターがいないことになってしまう。
オペレーターが直接勝利に貢献することは少なく、ましてや強敵相手の一対一などではほとんど役には立たないとはいえ、それでもリアルタイムでもたらされる情報は大きい。
加えて、隊員が首につけているチョーカーの操作権をオペレーターも持っており、チョーカーの中にある緊急回復薬を投与したり、ドーピング剤の注入をしたりなどのサポートもオペレーターは担っているのだ。
だからこそ、隊員にはオペレーターが必要であり、そんなの時に声をかけたのが――、
「カナリアさんですね。今日はよろしくお願いします」
『えぇ、よろしく。急に頼んでしまってごめんね』
声の主――カナリア=アルベルスタはクルーエルの担当オペレーターである。
しかし、先日の任務でクルーエルの生存は確認できず、特魔隊としては死亡扱い。
故に、担当隊員がいなくなったカナリアにノアの担当があてがわれた。
そのこと自体は事前にオルぺナから聞いてあったことであり、ノアとて不満はない。
不満はないが――、
「カナリアさんの方は大丈夫ですか?
緊迫している状況とはいえ、僕の担当になってしまいましたが」
先日の任務があったのが一週間と少し前ぐらいだ。
たったそれだけの期間で心の傷が癒えるとは思えない。
隊員とオペレーターは唯一無二のパートナーであり、その信頼関係も並大抵のものではないと聞く。
であれば、もう十数年と連れ添った相手が死に別れたとなれば、心に与える影響も大きいはずだ。
しかし、そんな誰もが同情する心境でも、カナリアはノアの担当になった。
その覚悟は早々出来るものじゃないとノアは思っていたが、
『実はね、私の方からお願いして担当にさせてもらったのよ』
「そうだったんですか? でも、どうして.....」
『ノア君の言う通り、私はまだ友人の死の全てを受け入れられたわけじゃない。
それに、こうした今でも死体を確認してない以上、生きていることをずっと望んでいる。
でも、それは仕事を放棄していい理由にはならない』
カナリアから語られる固い意思に、ノアは静かに瞠目した。
本人がそういう意思であるならば、ノアとてそれ以上言うことは無く、意見を尊重するつもりだ。
しかし、それでも個人的には、休んだ所で文句は言われないような気がして。
『それにね、私は個人的に君に感謝してるの』
「感謝、ですか?」
『クルーエルの妹――アスちゃんを戦場から強引にでも助けだしてくれたでしょ?
そのことに、クルーエル本人から感謝の言葉を伝えて欲しいって言われててね』
クルーエルからの伝言、その言葉にノアは一瞬喉を詰まらる。
しかし、考えてみれば当然の話で、カナリアはクルーエルのオペレーターだったのだ。
であれば、クルーエルの最期の言葉を聞いていてもおかしくない。
僅かに体が強張るのがわかる。言葉を聞くことに自分は緊張している。
ほとんど話したことない相手だ。
しかし、故人の言葉であるなら、聞かねばなるまい。
「......クルーエルさんはなんて言ったんですか?」
『ただ一言、『ありがとう』って』
「.....そうですか」
カナリアから伝えられる言伝に、ノアは胸が締め付けられる気がした。
クルーエルの感謝の気持ち、しかとこの胸に受け取り、刻み込む。
しかし同時に、そんな感謝を述べられることはしていないとも思ってしまう。
特魔隊の一員になった以上、仲間を助けるのは当然で、自分はその行動をしたにすぎない。
それに、助けるのであれば、クルーエルやマークベルトだって助けたかった。
もはや考えても仕方のない仮定の話だが、それでも思ってしまう。
(だけど、もう僕は後ろを見るのや止めたんだ)
自分が辿って来た道を振り返り、後悔したところで前に進めない。
本当に、あの二人に報いたい気持ちがあるのなら結果で示すべきだ。
そう、「怠惰」のアビス王を倒すという結果でもって。
自分の心臓に近い隊服を右手でギュッと握り、黒の双眸を正面に向けた。
既に開かれている巨大な鉄の門、その先には荒廃した都市が見える。
その先に、倒すべき、否、倒さなければいけない宿敵がいる。
『――落ち着こうぜ、兄弟』
その時、「怠惰」のアビス王から逃げる際にかけられた言葉をノアは思い出した。
あの時、かの存在は自分のことを「兄弟」と呼んだ。
それは自分を誰かに重ねて言った言葉なのか、もしくは自分の中にいるシェナルークが「怠惰」のアビス王の兄弟なのか。それはわからない。
しかし、それが単純な呼称としての言葉ではないことはわかる。
だから、その「兄弟」というのはどういう意味なのか。
それと同時に、そもそもアビスとはなんなのか、どうして人を殺し食らうのか、どうして人間の姿を真似るのか。
はるか昔からアビスを倒すためにこの人生を歩んできたからこそ気になる。
だから、もし可能であれば、それを聞いてみたい。知りたい。
そのためにも――、
「カナリアさん、初対面でこういうのもなんですが、僕は生きて帰ります。
だから、安心していてください。僕は約束を果たすまで死にませんから」
『ノア君......そう言われると、死亡フラグで逆に不安になってしまうわ』
「あれぇ?」
力強く言った言葉が、思った以上に肩透かしな結果に終わり驚くノア。
すると、その反応に小さく笑う声とともに「冗談よ」と言うと、
『えぇ、信じてる。クルーエルの仇をお願い』
「はい、任せてください」
そう返事をするノアの言葉を最後に、カナリアとの会話が終わる。
そして、彼女からの強い信頼の言葉に、意図的に胸を張った。
緊張してるし、不安もあるし、なんだったら怖いと思っている。
だけど、それ以上に気持ちに応えたい、強くありたいと願う気持ちがある。
だからこそ、ノアはうそぶく。自分に宿るシェナルークの魔力を駆使して勝つ、と。
「全員、配置についたようね」
その時、一つの凛とした言葉が正面から聞こえてきた。
正面、巨大な扉を背にして立つ黒髪に赤ぶちメガネの女性――アリューゼ=サクリハが全体を見渡す。
そして、その横には後ろ手を組むライカの姿もあった。
今回、その二人が全体の指揮を取ることになっている。
当然ながら、両パレスとも代表がいないので、代わりに副代表が務めるのだ。
そして、中でも副代表歴の長いアリューゼが現場の総責任者となり、全体に告げる。
「今回の作戦指揮を務めます、アリューゼ=サクリハです。
私は挨拶が苦手なので、端的に必要な内容を伝えます」
そこで言葉を区切ると、アリューゼは一度深呼吸する。
それから、再び空気を肺の中に巡らせると、
「ただいまの時刻をもって、作戦コード『怠惰討伐作戦』を開始します。
本作戦において、『怠惰』のアビス王と直接戦うのは主力部隊のA級とS級のみ。
B級及びその他の部隊は、道中までのアビスの掃討をお願いします。
また、私達が敵主力と接触した場合、距離に関わらず旧都市の外壁から離れてください」
その一言は、十六年前の「鏖殺の傲慢戦」の状況を危惧してのセリフだ。
当時の戦いでは、余波だけで桁外れな人々が死傷した。
であれば、今回だってその可能性が起こると考えるのは当然のことだ。
「また、私達の任務が失敗した場合についても事前に報告しておきます。
任務が失敗した場合、私の担当オペレーターから全体へ通達が入る手筈になっています。
その場合、『怠惰』のアビスがどういう行動を取るか予測できません。
しかし、少なからず本部がある新都市トリエスへの襲撃は予想されます」
過去の特魔隊の歴史において、アビス王と戦ったという記録はいくつか残されている。
しかし、その時の戦いは十六年前ほど本格的ではなかったのか、もしくはアビス王自体、露払い程度にしか思っていなかったのかは定かでは無かったが、反撃されることは無かった。
だが、十六年前を境に状況が変わった。
人類がアビス王を倒せる実力を持ってしまった以上、命を脅かす存在をそのままにしておくとは考えにくい。
だとすれば、真っ先に考えられるのは、特魔隊本部への攻撃及び破壊だろう。
最悪の場合、新都市トリエスそのものが消える可能性がある。
もちろん、そんなことをさせないために死力を尽くすつもりだが。
「もし、本部への襲撃が確認された場合、部隊の皆さんはトリエスに戻るのではなく、華蘭都市シャンピンへと避難してください」
その一言は、事実上の都市を見捨てろと同じ宣言であった。
もっと言えば、そこにいる人達も隊員も一切残らず見殺しにしろという言葉。
その言葉に衝撃を受ける隊員は少なくなく、しかし誰も抗議の声をあげなかった。
なぜなら、これが軍の命令だから。軍は組織であり、命令が絶対順守される。
とはいえ、命令を忠実に守る軍であっても、機械の集団ではなく、人の集団だ。
故に、思う所があるように顔をしかめる隊員が散見される。
そんな隊員達の様子を、アリューゼは視線だけで巡らせて見ながら、結論を一言だけ述べる。
「理由は単純です――犬死するからです。
魔力を持つ者達で、それも精鋭の精鋭が戦って勝てない相手と戦うのは無意味しかありません。
ならば、あなた達は一人でも多く生き残り、他の特魔隊に現場での情報を伝えてください」
その役目は、かつてノア達が託された最重要任務である。
仮に、「怠惰」のアビス王の討伐が失敗したとしても、その情報はすぐに全パレスに伝わるだろう。
しかし、それで伝わるのはただの言葉の羅列であり、どの程度かはわかりずらい。
だからこそ、現場で直接見てきたという生の情報の価値が高まる。
戦争で被災した人々が「戦争は愚かだ」と語るように、現場での空気は現場を味わった者にしか語れないのだから。
「以上で、本作戦における伝達を終わります。
では、全員戦闘準備に入ってください――これより、旧都市トルネラへ突入します」
アリューゼが長い黒髪をサラリと揺らし、開かれた扉の先を睨みつける。
隣では同じようにライカが振り返って、他の隊員達に背を向けた。
魔力を持たない隊員達及びB級隊員達は、S級とA級の主力部隊を守護するように取り囲み、さらにその周囲や後方では強化装甲に身を包んだ隊員、戦車に取り囲む隊員、人型武装兵器に残りむ隊員が位置につく。
全体があらかじめ予定されていた配置に移動したことを確認すると、アリューゼは遠くまで通るような大きな声でもって宣言した。
「全体――突入ぅー!!」
「「「「「ラジャー!!」」」」」
全部隊が一斉に動き始め、その部隊の中心にいるノアも流れに沿って歩き始める。
緊張がひときわ強くなるように心臓が激しく鼓動し、僅かな武者震いを起こした。
そんなノアをの様子を、隣を歩くアストレアが小さく笑う。
「緊張しすぎよ、そんなんじゃ出すものもちゃんと出せないわ。
まぁ、無理ない話であることは理解してるけれど」
「そういうアストレアは緊張してるようには見えないね。
表情というか、こう、雰囲気に出てないというか」
「それは当然よ。だって、光の怪物さんが隣にいるんだもの。
今も隣にいて私の暗い足元を歩けるように照らしてくれている。
その安心感がある以上、私が恐怖に呑まれることはないわ」
「......そう言われると弱いね。でも、そうだね。
光の怪物は僕自身の在り方を位置づけるものなんだ。
だったら、ビビってるわけにはいかない」
そう返答すると、ノアは大きく息を吸って深呼吸を始めた。
一度、二度と繰り返し、隣にアストレアがいることを意識すると少しだけ心が落ち着く。
『ノア、大丈夫か?』
と、その時に、ライカからの個人通人が来た。
あまりに急な通信に落ち着きかけていた心がドキッと跳ねる。
しかし、不思議と広がるのは安堵であった。
とはいえ――、
(心配かけてるなぁ......)
そのことにノアは苦笑いを浮かべた。
なんというか、一周回って少しだけ申し訳なく感じる。
「大丈夫だよ、心配してくれてありがとう。
ライカの方こそ大丈夫? くれぐれも僕のために無茶しないでくれよ?」
『うっ、それは.......いや、わかった。
どっちにしろ、誰かを気にしてる余裕なんてないだろうしな。
でも、お前こそ自分を蔑ろに行動するなよ。いいな?』
「うん、肝に銘じておくよ」
その返答を最後に、ライカとの会話が終わる。
すると、会話内容から当てをつけていたアストレアが口を開き、
「ライカから?」
「うん、どうにも心配してくれていたみたいで。でも、大丈夫って答えておいた」
「けど、ライカのことならノアが危なくなったら無茶するわよ?」
「さすがわかり手だね。うん、案の定それっぽい反応はしてたよ。
だから、それに関してもちゃんと釘を刺しておいたから」
「釘ぐらいで止まればいいけど」
その一言には、ライカの幼馴染としてノアも大賛成だ。
過去のノアを守るためのSPみたいな幼少期を思い返せば、そうなる可能性の方が高い。
とはいえ、それは自分がピンチになった時だ。
だとすれば、自分がそういう立場に置かれなければ何の問題もないというわけで。
『アビス反応確認、周囲の部隊が殲滅すると思うけど、念のため注意しておいて』
「「了解」」
脳内から聞こえたカナリアからの注意喚起。
奇しくも、アストレアのオペレーターであるユリハの報告の伝え終わったタイミングが同じであったために、返事が重なる。
「全体、攻撃開始!」
直後、聞こえてきたアリューゼの声とともに、一斉掃射が開始された。
ほぼ全方向からバババババと弾丸を放たれる音が響き、鼓膜をガンガン震わせる。
同時に、鉛合金製の雨が横もしくは斜め下に向かって降り注いだ。
ハチの巣にするような威力でもってほとんどのアビスが死滅。
灰のような粒子となって空気に溶けていく。
しかし、その死をなんとも思わないように、音に引き寄せられてアビスが集まって来た。
中には上手く被弾を最小限に抑えて本隊に突撃するアビスも出てくる。
「てぇやあああ!」
一人のB級隊員がアビスを迎え撃ち、手に持っていた剣で一撃で屠る。
その横では強化装甲を着た隊員が鋼鉄の拳を殴りつけ、地面に圧し潰した。
部隊の後方からは戦車による砲撃が行われ、近づいてくるアビス達が爆散。
「グオオオォォォ!」
戦闘が始まってから一分、それだけで数十のアビスをあっという間に蹴散らした。
しかし、ハチの巣を叩いたようにアビスはどこからでも湧いて出て、中では五メートル級の大型アビスまで出てきた。
「人型武装兵器部隊、出動!」
そういう相手を買って出るのは、巨大人型ロボットだ。
巨大といっても、せいぜい四メートル程度だが、それでも自立するロボットとしては最新鋭である。
そんな鉄塊が大型アビスと衝突、スクラムを組むラグビー選手のような体勢で大型アビスの突撃を受け止める。
そして、一人が受け止めている間に、もう一機の人型武装兵器が手首から露出する刃でもって大型アビスの心臓に一突き。
巧みな連携攻撃によって大型アビスを仕留めていく。
「すっご」
その映画のワンシーンみたいな光景には、さしものノアも興奮を隠せない。
男の子たるカッコいい光景に目を輝かせる姿、まさに小学生といっていい。
すると、視線だけで様子を伺っていたアストレアが口を開き、
「武器の素材にアビス魔鉱石を使用してるからアビスも倒せるのよ。
それに、人型武装兵器はもともとこれぐらいやるわ」
「そうなんだ。実際に戦ってる部分は初めて見るなぁ」
「あれ? 前にお姉ちゃんが戦ってる所.....って、アレはただ一方的にぶっ壊してただけだったわね」
そう言って苦笑いを浮かべるアストレアに、ノアも同調するように笑った。
以前の任務の際では、侵食された機械がクルーエルによって蹂躙されたために、人型武装兵器の印象が希薄になっていたが、実際こう見ると十分に兵器である。
それに、基本的に通常のアビスはフィジカルを活かした肉弾戦だが、人型武装兵器は肉弾戦に限らず、遠距離攻撃も持っていると考えれば、侵食した人型武装兵器というのは案外脅威だったのかもしれない。
ともあれ、今は印象回復するように頼もしい活躍する人型武装兵器及び隊員達の活躍により、ノア達主力部隊は一回も戦闘せずに移動することができた。
「全体、停止!」
そのまま移動すること数十分、まるで数が減らないアビスの猛攻による鈍行になりながらも、無事に目的地に辿り着いたことを示すようにアリューゼが声を張った。
厳密に言えば、今いる場所は依然交戦した場所からはまだ遠い場所だ。
しかし、それでも、ここからは自力で目的地まで辿り着かなければいけない。
原因はひとえに、今なお取り囲むように滞在する緑色の瘴気。
「全体に告ぐ! ここから先は侵食領域の中枢になります!
これ以上の侵入は私達以外は危険です!
ですから、ここからは先の手筈通りに!
くれぐれも帰りの道中には気を付けてください!」
全体に声を届けると、今度は正面、主力部隊の隊員達に目線を向け、
「それでは、皆さん。これより、『怠惰』のアビス王――リュドル=アケディアを倒しにいきます。
この先に足を踏み入れれば最後、隣にいる仲間は確実に死ぬものと思ってください。
私達はそれほどまでに危険な領域へと突入するのです」
「死ぬのは仲間に限った話じゃねぇ。
テメェすら死神とのタップダンスを一度でもミスれば、死というペナルティが降り注ぐ。
だがそれでも、アタシ達は踊り切って前に進まなきゃならねぇ。
気合を入れろ。死ぬ気で踊りきれ。そんで出来る限り皆で生きて帰るぞ」
「.....カッコいい所を取られてしまいましたね。
ですが、ライカさんの言う通り、私達は死ぬ気で勝つのではありません。
生きるために勝って、そして帰った先で代表達に自慢してやりましょう」
その言葉に、隊員達の表情が少しだけ和らぐ。
しかし、その目線には怖気以上に覚悟があり、もう誰も迷っていない。
(さすが、ライカ。太陽みたいな存在だ)
先のライカの言葉、それがノアの心を勇気づける。
その立ち振る舞い、声色、言葉、それらがノアが思う太陽たる所以。
だからこそ、身が焼かれるような場所に、自分も行くことを決めたのだから。
前髪につけた太陽の髪留め、それに手で触れ、意識に太陽を刻み込む。
その太陽がある限り、そしてその太陽になるために――自分は「光の怪物」となるのだ。
「では、行きますよ。ついて来てください」
最後、そう一言だけ言って、アリューゼは背を向けて歩き出す。
その隣をライカが伴って歩き、全体が動き出す中、ノアも大きく一歩を踏み出した。
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