第31話 もう一つの戦い、そしてライカの実力#2
フードを被った包帯巻きの男――ファルラカ。
どうやらそれが対峙しているアビゲイルの名前らしい。
その猫背をして立つ姿に、ライカは目を細める。
まるで中二病を患ったような異様な見た目――が気になるわけではない。
別にどうも思わなければ、興味もない。
そうではなく、包帯の先端の一部が血濡れている事実に気付いたからだ。
油断せず、かといって緊張し過ぎず、努めて自然体で口を開く。
「自己紹介どーも。随分と親切じゃねぇか。
なら、アタシ達を狙った理由ぐらい聞けるんだろうな?」
「お前達を狙った理由? あぁ、そんなの簡単だ。
兄ちゃんが気に入ったみたいだったから。
お前達はそのプレゼントに過ぎねぇってわけだ」
「人をプレゼントたぁ随分な言い草だな。
誰が好き好んでテメェらのプレゼントになるかってんだ」
「でも、人間は好きだって聞いたぜ? プレゼントは私ってな」
「よく理解もしないで知りたての言葉を使いたがるのがガキそのものだな」
ヘラヘラとした様子のファルラカに対し、ライカは眉間のしわを深めた。
ライカの態度の、特に怒りに置いて、二人称が変わるという性質がある。
通常であれば「お前」だが、感情が高ぶれば「テメェ」になるのだ。
つまり、ファルラカに対して、「テメェ」と言葉を使った時点で、すでに怒りは規定値以上。
もはや今のライカは、導火線に火が付いた爆弾に等しい。
しかし、その導火線をどう捉えるかは、結局のところ相手次第。
それこそ、人間に対して大した恐怖も抱かない怪物となれば、当然気にするはずもなく。
明らかに怒気を放つライカに対し、ファラルカは口元を歪め、
「ま、それに関してはオレ達が決めることだ。
だが、その様子だと抵抗するつもりなんだろ?
キヒヒ、まぁ少しなら付き合ってもいいぜ。バトルは好きだからよ」
ライカの態度を見ても、ファルラカの軽口は変わらない。
それどころか挑発してくるほどの余裕を見せている。
そんなファラルカに対し、ライカは右手首のアビスリングを変形させると、
「ほぅ、奇遇だな。アタシもバトルは嫌いじゃねぇ。わかりやすく白黒着くしな」
左の掌と右拳を叩きつけるライカ。
硬質なのガントレットがガキンッと音を鳴らした。
その姿は、まるでバトル漫画の好戦的主人公のようなポージングだ。
事実、ライカの気合はそれぐらいなので、間違ってはいない。
ただし、そこにあるのは正義感より、舐められてることに対する純粋な怒りだが。
「なら、とっとと決めようぜ」
油断なく、始めからライカは自己強化術式を展開させた。
見える肌から顔は頬に至るまで角ばった白い脈が伸びる。
それら全てが魔脈に流れる魔力が素肌を透過させて光を放っているために起きる現象だ
そして、その効果は身体能力の向上や動体視力、感覚神経の鋭敏化。
特に、ライカに限り魔技の特性が「超強化」である以上、そのシナジーは測り知れない。
「テメェに時間をかけてる暇はねぇしな!」
バネを圧縮するように活発化した肉体を低くし、爆発。否、走り出した。
蹴った地面は爆散し、周囲に大小様々な土塊を吹き飛ばす様は正しく爆発直後の光景だ。
文字通りの爆発的な推進力を見せたライカの肉体、あっという間に数メートルの距離を移動してファルラカへ迫る。
戦闘開始の合図がライカ主導で強制的に始まる。
「おぉ、怖っ」
怖がってもいない怖がりの反応を示し、ファルラカが両手を伸ばした。
瞬間、両手から垂れ下がる二本の包帯の切れ端、合計四本の包帯が、ライカに向かって跳ぶ。
空気を斬り裂くように猛然と迫る包帯、しかしその速度はあまり速くない。
ライカの向上した動体視力であれば余裕で捉えられる速度であり、それこそタイミングさえ見誤らなければ、容易に弾ける。
その判断を裏付けるように、ライカは両手のガントレットで素早く弾いた。
「まさかそれで防げるとか思ってないよな?」
直後、ライカの視界の中で不可思議な現象が起きる。
弾いたはずの包帯が、まるで意思があるように軌道を変えたのだ。
それぞれが物理法則を無視したような動きを見せ、再びライカに襲い掛かる。
(軌道が曲がった!?)
見たままの光景を単純に結論付けるならそれだけに限る。
だから、その意見を確かめる意味でももう一度最初の二本の包帯を躱し、続いてきた二本の包帯をガントレットで弾いた。
その結果は同じで、攻撃が当たらなかったそばから軌道を変えてくる。
さらに行動を繰り返しても、やはり何も変わらない。
そんな検証でわかったことが一つ。
(この包帯は飾りじゃなくアイツの一部か)
この世界において、高性能なAIが積まれた砲弾がホーミングすることはあっても、鞭のような武器がターゲットに狙いを定めて自動追従することはない。
いや、仮にライカの知らないどこかであったとしても、そういったものは振るった際の「しなり」が重要であり、それが失われる追従機能はデメリットでしかない。
それを考えれば、残る可能性は一つ――もともとアビゲイルの一部だった可能性だけだ。
(アビゲイルには高い擬態能力がある。実際、人間に化けているのが良い例だ)
となれば、飛び交う包帯も、実際にある「包帯」にものに酷似させたものということだ。
もっとも、その硬度は布の柔らかさでは当然なく、イメージは腰帯剣に近い。
その証拠に――、
「おら、当たると痛てぇぞ!」
跳躍して躱したライカの足裏の下に、一本の包帯が通過する。
直後、後方にあったコンクリート製の建物に、直撃。
まるで豆腐にナイフを突き立てるようにサクッと貫通した。
その光景を、首だけ振り返って見ていたライカも冷や汗をかき、
(あの威力、下手に直撃なんかしたら手足吹っ飛ぶな。
受けるのはガントレットだけに絞らねぇと)
思わず千切れる光景を想像してしまい、若干血の気を引きながら頭を振って払拭。
目の前の光景に全意識をかけ、ライカはサッと着地。
ビュンビュンビュンと、一本一本が一匹の生き物のように動く包帯を躱していく。
もはや大きな網に囚われているかのような光景を繰り広げる攻撃は単調で、鞭のように振るわれない分瞬間速度が無く、躱すこと自体は楽だ。
包帯を弾いた際の移動箇所さえ把握しておけば、次に来る攻撃も予測できる。
とはいえ、それぞれが独立移動する以上、体感は複数人を同時に相手にしてる気分だ。
「.....」
しかし同時に、その攻撃に対して違和感もあった。
あまりに単調であることもそうだが、気のせいか数が合わない。
それが先程から、ライカを攻勢に出させない理由である。
振るわれる攻撃は四方八方で油断なく襲い掛かり、一瞬たりとも気が抜けない。
違う、四方八方から襲い来るのを対処しているのではない――対処させられている。
やたら視界をグルグルと回され、正面にいる標的に視線が合わない。
さながら、そちらに向かれることに不都合があるように。
その違和感を探るために、ライカは視線をファラルカへ向ける。
「一本だけ地面に刺さってないか......?」
疑問をボソッと口に出しながら、ライカの視線が一点に向いた。
それはファルラカの右腕から真下の伸びる一本の包帯。
それが地面に突き刺さったまま、そこから微動だにしない。
「――っ!」
瞬間、総毛立つような悪寒がライカを襲った。
襲い来る攻撃を跳ねのけると、その場から一歩下がる。
直後、足元からはズバッと一本の包帯が生えてきた。
ライカの鼻先数センチを包帯が通り抜け、浮いた前髪がスパッと切断される。
「前髪の一部、パッツンにされた!」
「おいおい、でも避けてんじゃねぇか。勘が鋭すぎるだろ。
だがまぁ、キヒヒ......それで避けれたと思わないことだな!」
ライカの視線が真下から外れた直後、別の一本の包帯がライカの左足に絡みつく。
左足が締め付けられる感触に、ライカが苦悶の表情を浮かべた。
左足が細くなる痛みに奥歯を噛みしめ、包帯に向かって咄嗟に手を伸ばすが、それよりも速く足が引っ張られる。
まるで一気にリールが巻かれたように、ライカの左足が大地から引っこ抜かれる。
まっすぐ立っていた体は急速に地面と平行に近くなり、さしものライカでも右足一本で体を支えきれない。
次に左足が横に開けば、体もそちらに引っ張られ、右足が引っこ抜かれた。
ライカの体は完全に宙に浮き、それでも地につくことがないのは回されているから。
ぐるぐるぐるぐるとファルラカの周囲を回転、遠心力がライカを苦しめる。
正常に流れるはずの血が滞り、頭に血が上って顔が赤く変化した。
たたでさえ、強化状態は肉体の躍動を最大にするために鼓動の動きも早いのだ。
それこそ、最速の肉食獣が最速たる所以を発揮するために心臓を激しく打つように。
「簡単に死んでくれるなよ!」
遠心力が最大にまで達したところで、ファラルカが右腕を振り下ろす。
直後、その腕から伸びる包帯の先にいるライカの肉体、五階建てのオフィスビルの三階窓ガラスを突き破って、三階の床を破壊し、二階の天井からそのまま床へ。
勢いは止まらず、やがて一階の天井から床まで叩きつけられた。
「――ぁ!」
咄嗟に頭を守るように両腕を揃えてガードするライカだが、いくら肉体強化で防御力が他の隊員の倍以上あってもその衝撃は耐え難いものだ。
その証拠に、口から短く息が漏れる。衝撃で頭の中が一瞬真っ白になった。
通過した際に、瓦礫が頬や額を切り、血が額から鼻筋を通って流れる。
細かく発生した擦過傷や切り傷に、体の各所から悲鳴代わりの痛みが生じる。
(チッ、痛ってぇな.....)
あちこちに感じる不快感に、ライカは舌打ちした。
その感情の中には、こちらの防御力や反応速度の高さから攻撃パターンを切り替えたファラルカに対する苛立ちも含まれる。
それこそ、防御無視の衝撃や体の各所から流れ出る血など防ぎようがない。
血は流れ過ぎるだけでもパフォーマンスに大きく影響するというのに。
鋭いズキッとした痛みが駆け抜けると、その後はジーンと鈍い痛みが続く。
両腕は折れていない。折れたらまずい。
徒手空拳の自分にとって両手両足は商売道具だ。
確認してみれば多少鈍い痛みを感じるが、我慢できないほどではないし、なにより動く。
その事実に、ライカは一先ずの安堵を得た。
――ズリッ
体が勝手に移動した。違う、引き寄せられているのだ。
左足に絡みつく包帯がピンと張り、それによりライカの左足が強制的に伸びる。
咄嗟に仰向けになり、床に両手の爪を立てるライカ。
バキッと五指が床に食い込み、そのまま抵抗を試みる。
が、少しずつ床に空いた穴が縦に伸びていく。
「舐めんなクソが!」
怒号にも似た気合を一発。
同時に、獣じみた目つきにさせるように青瞳を収縮させ、左足に力を入れる。
体を半身に捻りつつ、ライカは左足を横に振り抜いた。
「お、ちょ、嘘だろ!?」
直後、有利に立っていた盤面を下から覆されるような威力に、ファラルカの目が剥かれる。
包帯が繋がる右腕、それが肩から外れそうな勢いで横に移動し、次に体が同じ方向へ傾いた。
その動きとほぼ同時に、ファラルカの右足が浮き、左足も地面から一直線に伸びる。
正面の少し遠くに映るファラルカ体が傾いたことがわかると、ライカはすぐに起き上がりしゃがみ状態に移行。
瞬間、ファルラカの拘束が取れた。
仕事を失った包帯はスルスルとライカの元から離れていく。
散々好き勝手振り回しておいて、遊んだら「はい、さよなら」らしい。
軟派な男だ。硬派なライカの額に青筋が走る。
「逃がすかよ!」
逃げる包帯を追い、陽光が差す風穴の開いた壁からライカが飛び出す。
右手を伸ばし包帯をパシッと掴むと、重心を後ろに引き、肘を曲げて引き寄せる。
左手でもガッチリ掴めば準備完了。毒には毒を、振り回しには振り回しを。
「今度はアタシが誘ってやんだ。ちったぁ付き合え」
歯を食いしばるライカ、包帯を掴んだ両手を頭上まで掲げると、回転させて定位置へ。
それを三度、だんだんと速度を上げて繰り返す。
その次は左足を軸足に、自身を一つの駒のように見立て、回転し始めた。
一言で表すなら、ハンマー投げの動作フォームだ。
ライカの体並びに豪腕に振り回され、ファラルカの体が浮く。
一回転、二回転、三回転、四回転。ぐるんぐるんぐるんぐるん。
回転する度に速度が増し、包帯の先にいるファルラカの体が影になる。
当然、今のファラルカを襲うのは遠心力という名の防御無視攻撃だ。
内臓や血という概念がないアビゲイルに内部的ダメージは存在しない。
しかし、遠心力で動けなくなる――それも先のファラルカの回転速度より圧倒的な速さでかかる力に動けなくなるのは同じだ。
「う、え、うおおおおぉぉぉおおおぉお!?」
そんな轟音を鳴らす竜巻の中に放り込まれ、ファルラカの戸惑い混じりの絶叫が響く。
同時に、ファラルカを襲ったのはその絶叫好きも顔を真っ青にするの回転速度だけではない。
というのも、原因はハンマー投げを始めたライカの位置にある。
ライカが行動を開始させた地点は、ファラルカにぶつけられて半壊した建物のすぐ近く。
つまり、五階建てオフィスビルのすぐ横でハンマー投げをし始めたのだ。
結果、恐ろしい遠心力を伴うファラルカという「肉塊」が、分厚いコンクリートの壁に叩きつけられる。
ぶつかったらそばから別の瓦礫にぶつかり、そのまた次の瓦礫にぶつかり、次の瓦礫に、次に、次に。
止まらない衝撃の連鎖に、耐え切れなかったのかファラルカの肉体のどこもかしこか削げ落ち、砕き割れ、千切れ流れる。
「あっぐがああああぁぁぁあああぁ!?!?」
今や左腕の肘から下、右足の太ももの中間から下、頭の鼻から上が幾たびもぶつかる瓦礫でファラルカの体の一部が吹き飛んだ。
そんな体のまま振り回され、ファラルカの口から出るのは阿鼻叫喚の声。
肉体が欠損するだけなら、ファラルカの直接的なダメージはゼロと言っていい。
しかし、なまじ知能を持ってしまっただけに、今という状況に恐怖を覚える。
本来なら感じるはずのない強者のアビゲイルが、人間に対して。
そんなことを知る由もないライカは、さらにぐるんぐるんぐるん、回る回る回る回る。
やがて回転し過ぎて発生した上昇気流により、細かく砕かれた瓦礫の一切が天に舞った。
瞬間、ライカの足が開き、バキッと靴跡が出来るほどの圧力で踏み込み、
「せやあああああ!」
気合の声を一発、ブンッとファルラカをライカが投げ飛ばす。
もはや影すらも残さぬ勢いで砲弾のように空中を突き抜けるファラルカ。
やがて、百メートル付近で中くらいのビルを半ばからへし折り、そのまま五百メートルほどはなれた摩天楼の如きそびえ立つ高層ビルの中層付近に直撃した。
ドゴンと鈍く地鳴りがするほどの大きい音を鳴らし、直撃箇所からは砂煙が舞う。
中の様子は見えない。しかし、経験上からライカは理解している。
「これでも、たぶんまだ生きてんだろうな」
相手は人間に化けれるほど人を食らい、長生きしてきた。
つまり、それだけ強者として存在続けてきたのだ。
それに、そもそも核を壊さなければ、アビス類は死なない以上、まず生きていると疑うべき。
(油断なく行く!)
内心で気勢を上げ、ライカが高層ビル目掛けて走り出す。
しかしその勢いも数歩走った所で、ブレーキをかけ突如として失速した。
そして、視界に収めた「それ」に、ライカは目に力を入れる。
砂煙をモクモクと出す中層の僅か一瞬、煙の隙間から伸びた布。
それがライカの獣じみた直観にアラートを鳴らさせたのだ。
「――っ!」
煙が風に流され、風穴の開いた場所が露わになる。
それから、見えた光景に、ライカは僅かに息を呑んだ。
そこにはあったのは、崩れた壁に包帯をビルの側面の四方にひっかけ、自身をパチンコの玉のようにスタンバイするファルラカの姿だ。
その肉体を使った「玉」は自身の体を後ろに引かせると――一瞬、ライカに向かって真っすぐ高速で飛翔する。
「大気の螺転ォ!」
空中、ファルラカの様子が僅かに変化する。
移動途中で、空気抵抗を受ける両手を前に突き出し、包帯の切れ端を肥大化させた。
大きくなったそれは、ファルラカを包み込むように傘を作り、先端を尖らせる。
同時に、空気に穴を開けるように回転させれば、その姿はまさにドリルそのものだ。
「――!」
視線の先から迫る巨大化した黒死の弾丸に、ライカの頬が強張った。
当たったらヤバイ、だけじゃ済まないことは容易に想像できる。
ともすれば、やることは単純――回避一択だ。
ライカがその場を跳躍した刹那、人間サイズのドリルが地面に直撃する。
バコンとまるで爆弾が弾けたような音ともに、アスファルトの地面が弾けた。
大小様々な瓦礫が、直径三メートルの三角錐型の凹みから飛び出すように飛散する。
そんなクレータの中心、ライカの眼下に無傷でドリル形態を解除したファルラカがいる。
「空中に逃げるとか、それ悪手だろ」
ライカの足が地に着くまでの最中、ファルラカがサッと左手を伸ばした。
そこから飛び出す二本の包帯がライカの右腕にサッと絡みつく。
瞬間、ファルラカが腕を引くと同時に、ライカの体が吸い寄せられた。
「流転の槍」
「白帝拳」
右拳に高速螺旋する風を纏わせ、ライカが間合いに入るタイミングを見て拳を振るうファルラカ。
対して、その攻撃に合わせるように無理に空中で腰を捻り、ライカも振りかぶった左手を繰り出す。
―――バキンッ
分厚い金属が折れるような、耳障りの悪い音が鳴った。
それはファルラカとライカの互いこ拳が勢いよく接触したことで生じた音だ。
そして、その音の後に最初に声をあげたのは――、
「は、嘘だろ!?」
驚嘆の声を漏らし、目を大きくするファルラカ。
その右腕は、手首から弾けるように右手が無くなっていた。
代わりにそこにあるのは、叩きつけたライカの拳のみ。
つまり、ライカの拳がファルラカの拳を破壊したということだ。
「これぐらいで驚くたぁ、随分とアタシのことを低く見積もってたみてぇだな。
なら、勉強代にこれもついでに食らっとけ」
「んぐっ!」
衝撃的な出来事に固まるファルラカに、ライカは空中にいながら右足を振り上げる。
空を斬るような鋭い一撃は、ファルラカの左わき腹を強く打ち付け、遠くの建物へと蹴り飛ばした。
しかし、先ほどの力を利用された反撃もあってか、ライカは追撃しない。
いや、もっと言えば、モクモクと砂煙を出す建物の奥から感じる威圧感に、動かそうとした足を止めたのだ。
「化けの皮が剝がれたか」
その相手に聞こえるか聞こえないかのようなライカの呟き。
それは戦闘の苛烈さが増すことだけを如実に示していた。
読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)
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