第27話 共闘、そしてギャリーの脅威#1
地上から五十メートル上空。
隊員達の姿を遥か遠くに見ながら、ノアは飛ばされていた。
その速度は矢よりも早く、腹部を突き抜ける衝撃が、未だに残り続ける。
体の動きを制限し、空中制御が上手くいかない。
「ぐ......!」
大小さまざまな建物を飛び越え、軌道は弧を描く。
体が段々下へと向かっていく中、地上が見えてきた。
されど未だ、まともに体が動かせない。
不味い、このままでは当たる――
「かはっ!」
避けられない衝撃に備え、ノアは背中に集中的に魔力を回し、防御を高めた。
直後、地面に背中が直撃し、背中から雷に打たれたような衝撃が腹部に突き抜ける。
猛烈な痛みが頭の中を支配した。
いや、痛みというより衝撃で意識が飛びかけたか。
肺に入っていた空気は口から漏れ出る。
体は水面に投げた石のように、地面を何度もバウンドしながら転がった。
「かはっ......あ、ごほっ......」
ゴロゴロと転がった勢いはやがて止まった。
肺が痙攣を起こし、過呼吸気味になって上手く空気が吸えない。
それでいて体は空気を求めるように喘ぎ、口をパクパクさせるのだから始末に負えない。
アスファルトに寝そべる体を、ノアはうつ伏せに変える。
そのまま体を丸めるように膝を曲げ、喘ぐ口で無理やり深呼吸を繰り返す。
胃液を吐き出し、口の周りを汚れるのをそのままに、呼吸が安定するまで何度も、何度も。
やがて呼吸が少しずつ正常値に戻り、胸の中を席巻していた息苦しさを鳴りを潜めた。
背中に鈍く重たい痛みで軋むが、呼吸の辛さに比べれば幾分かマシ。
そのまま上半身を起こし、正座状態のまま脱力したように空を見上げた。
眩しいほど晴れている。
にもかかわらず、自分の心は明るくなれない。
それは目の前で見てしまった忘れ難い凄惨な光景のせいか。
目の前でユートリーが殺された。
その血が今も頭に、衣服に付着して、沁みついてしまった。
精神的と物理的の二つの衝撃で、思考が上手く回わらない。
『ノアさん、大丈夫ですか!?』
ノアが自らの思考に再起動をかける中、脳内にオルぺナの声が響く。
声の様子から気が動転しているのが伝わってくる。
それこそ、その切羽詰まった声は何度も呼び掛けていたように息を切らしていて。
「僕はなんとか......」
『っ! よ、良かったぁ。やっと返事が返って来たぁ。
ライカちゃんから応答は来ましたけど、ノア君からは来なかったから焦りましたよ。
でも、無事そうなら何よりです』
「心配かけてごめん。それで、ここはどこかわかる?」
『今いる場所はNS-251地点――旧名称でウジ区と呼ばれるです。
皆さんがいる場所からは、一キロちょっとの距離ですね。
それで、そこまで移動したのはアビスのせいで?』
「いや、俺より少し年上そうな若い女の人だった」
『若い女の人......殉教者? いや、通信機からの魔力パターンはアビスだった。
となれば、まさか――アビゲイル?』
「ごめん、そのアビゲイルって?」
『簡単に言えば、アビスの上位個体です。
強さは他のアビスと一線を画し、人間同等の知能を持ちます。
だから、相手は人間と言って差し支えないですが、核を壊さない限り死なない分、人間より厄介ですね』
「アレがアビゲイル......アビスの上位個体。
噂には聞いたことがあったけど、まさか人の姿をしているなんて......」
ノアがこの作戦に挑む前、ライカやアストレアから警戒存在を教えられていた。
それが「アビゲイル」であり、しかし彼女達からは人型とは聞いていたが、アレはもはや人間そのものだ。
『人間を模したアビゲイルは、言わば歴戦のアビスです。
油断すれば、一瞬で殺されてもおかしくない相手です。
そういう意味では、ノア君が生きてて良かった』
「約束を早速破る形にならなくて良かったよ」
『ホントですよ、全く。もし死んだら、ノア君は男装が趣味の女子って噂をバラまくところでした』
「絶妙に本当になりそうな嘘が流される前で良かったぁ」
女の子みたいで可愛いという意見はもう半分受け止め始めたが、それでも男のプライドを忘れたわけではない。
その不名誉が広がる結果にならなくて心底良かった。
オルぺナの言葉に安堵しつつ、ノアは周囲をぐるりと見渡した。
三車線の道路に、いくつもの商業施設やらオフィスビルが並んでいる。
ここもかつては車通りの多い場所だったのだろう。
今やもう面影を残すだけの廃墟と化しているが。
『ともかく、それがアビゲイルです。
人間を相手にしていると思って戦ってください。
それから、隊の皆さんは現在アビスの集団と応戦中です』
「ライカとアストレアは? 二人は無事なの?」
『ライカちゃんは無事です。
ですが、ノア君同様に遠くに飛ばされたみたいで......であれば、こちらも相手はアビゲイルと想定すべきでしょう』
「そっか、ライカも......けど、ライカなら大丈夫、うん、大丈夫。アストレアは?」
『アストレアさんに関しては、今別のオペレーターから確認を――ノアさん、近くに魔力反応、来ます!』
突如、オルぺナの切羽詰まったような声を聞き、ノアは立ち上がり、顔を上げた。
周囲を巡らし、空からの奇襲を警戒――視界の端に影を捉える。
その影を追えば、太陽に重なって影が、黒い何かが向かってくる。
(人? いや、アビゲイルも人型だった。でも、あれは――)
ノアが何かに気付くその瞬間――先に答えを示したのは、オルぺナの通信だった。
『魔力の識別パターン、ナンバー24867――アストレアさんです!』
「なっ!?」
太陽に重なる影、やがてその光を遮るほど大きくなり、地上に落下する。
あのまま行けば自分の二の舞だ。あの辛さをアストレアが味わう必要はない。
だから、アストレアの姿を視認すると、ノアはすぐさま走り出し、跳躍。
そして、空中でキャッチすると、そのままズサーッと地面を滑るように着地した。
「アストレア、大丈夫!?」
「え、えぇ、大丈夫......ありがとう。
あなたこそ大丈夫? 顔、血まみれだけど」
「あ、うん、これね......とりあえず、大丈夫だよ」
お姫様抱っこするアストレアの全身、ノアは怪我してないか見てみるが特にないようだ。
その事実にホッと息を吐くと、彼女を降ろす。
それから、顔の血を拭いながら、事情を尋ねた。
「何があったの?」
「ノアがここにいる理由と同じよ。
なぜこの人選なのかは、本人に聞いてみるといいわ」
そう言って、アストレアがノアから視線を外し、顔を横に向ける。
ノアがその視線を追うと、数メートル離れた位置にスタッと着地するギャリーがいた。
「ピタッとな。ふふん、体操選手なら満点の着地だね。
あ、二人ともおまたせ~! 遅れちゃってメ~ンゴ☆」
まるで友達のような距離感で話しかけ、軽く謝罪するギャリー。
一周回って舐めているようにしかみえないような態度に、アストレアが右手のレイピアを強く握った。
また、ノアも両手に銃を握り、いつでも臨戦態勢に入る。
そんな二人を見たギャリー、口元をニヤッと歪め、
「おっ、やる気だね~。いいよ、やろやろー。
あ、でもちょいまち、その前に一つ気になること聞いていい?
君達って――本当に人間?」
「?」 「っ!」
その言葉に、ノアはビクッと震わせた。
どういう意図の質問か、それは定かではない。
が、心当たりがあるから反応してしまったことに、冷や汗がノアの首筋を流れる。
しかし、その後の指摘はない。幸い相手には気づかれてないようだ。
それに、気づいたわけではなく、違和感を感じてる.....という程度か。
とはいえ、その話を深掘りされて勘づかれてはいけない。
誰にもバレてはいけない――それが王様との約束だから。
「君達」という気になる単語もあったけど、それよりも話題を変えることが先決だ。
「......そんなことより、どうして俺達を狙った?」
「え? う~ん、そうだなぁ......お兄ちゃんが気になるからって言ってたからかな。
あのめんどくさがりお兄ちゃんが珍しく反応してたから。せっかくだし捕まえよっかって」
気さくにしゃべりながら、身の丈ほどある大鎌を持ち上げ、ギャリーは肩に乗せる。
見た目は人間にもかかわらず、鎌が肩に接触した瞬間、ガキンッと鉄と鉄がぶつかったような音がした。
「で、ファル君に二人相手させるのは可哀そうだったから、代わりにお姉ちゃんが相手しようかなって。
答えはこんな感じで大丈夫そ?」
「.....えぇ、もういいわ」
「そっか、なら良かった。
それはそうと、人が親切に話してる時に悪だくみはやめな~」
悪だくみ――それは現在進行形で、アストレアが展開させている無数の氷のことだ。
ギャリーの頭上に生み出されたそれが、今にも標的を穿つために浮いている。
ノアもそれには気づいており、視線でバレないように無視していた――がしかし、バレた。
いや、バレていた上で見逃されていた。
まるでその程度の攻撃は気にするものでもないといわんばかりに。
「チッ、なら食らってくれるわよね」
左手の人差し指をギャリーに向けると、アストレアはクイッと下に向けた。
直後、指の動きに合わせ、殺気を帯びた氷が雨のように降り注ぐ。
「それはムリ~☆」
後ろに下がると同時に、ギャリーが頭上で大鎌をぶんぶんと振り回す。
高速で回転した大鎌が、円盤の盾のようになり、簡単に氷を弾き飛ばした。
そのまま氷が降り注ぐエリアから後ろに抜けるギャリー。
大鎌を肩に担ぎ、よつん這いの姿勢になる。
さながら、獲物に狙いを定めた猫のように。
緑色の瞳を収縮させ、小さく舌なめずりをすると、
「それじゃ、次はこっちの番。
キミ達はお兄ちゃんから『出来れば生け捕り』って言われてるから。
アタシも手加減するけど、調整難しいから死なないように頑張って!」
瞬間、十メートルほどあった距離をゼロにするように、ギャリーがアストレアの眼前に近づいた。
両手に持った大鎌を横に猛然と振るうと、防御態勢に入ったアストレアが強く弾かれる。
細身で華奢な少女の体は影となり、遥か後方へ吹き飛ばされた。
代わりに、アストレアと場所を入れ替えるようにギャリーが残る。
この一連の攻撃モーション、僅か一秒。
標的をしっかりと見定めていたノアからすれば、突然アストレアとギャリーが入れ替わった不思議現象が起きていた。
「アストレア! 」
動きが早すぎて、今やっと思考に事実が追い付いてくる。
ようやくギャリーを認識したノアは、すぐさま横に銃口を向け――、
「させないよ――突風の刃!」
「!?」
ギャリーの左手一本で振るった大鎌から、縦に伸びる斬撃が放たれた。
触れれば両断されそうな鎌鼬の風がアスファルトの地面を切り裂き、ノアに向かって直進する。
(速い! 近い! 大きい! )
音すらも切っているように、眼前に静かな刃が迫る。
確かな死神の歩みを目の前で感じ、ブワッと脂汗が額を滲ませる。
ここから逃げようと動いたでは間に合わない。
そもそも、そんな時間はない。
最小限の体の動きで躱さなければ。
「くっ!」
足を一歩引くと同時に、体を薄くするように半身になる。
ノアの鼻先数センチの所で、死神の斬撃が通り過ぎ去た。
紙一重で躱すことができたわずかな安堵――その矢先、黒髪がパラパラと空中を舞う。
直後、ピシッと鼻筋に一文字の切り傷が出来た。風圧で斬れたようだ。
―――スパン
衝撃的な斬撃音、一般人として暮らしていけば一生聞くことの無いような音に、ノアは顔を横に向ける。
大きさ十メートルはありそうなオフィスビルが、縦に両断され、崩れ落ちた。
たった一振り。それだけで建物が豆腐のように斬られた。
これがアビスの上位個体――アビゲイルの基本スペック。
「あらま、避けられちった。やるねぇ、キミ~♪」
「氷針」
ノアの横から陽光で煌めく氷の礫がいくつも飛んでくる。
それら全てがギャリーを狙ったものであった。
しかしあいにく、ギャリーに後ろに飛んで躱され、それらは当たることは無かった。
「大丈夫?」
ギャリーがいた位置に、アストレアが戻ってくると、そんなことをノアに聞いた。
地面を転がったであろうアストレアの方がボロボロにもかかわらず。
「問題ない」と答えるも、ノアは少しだけ弱音を吐いた。
「これがアビゲイルの力か......これまで戦ってきたどのアビスよりも強いね。
事前に注意喚起は受けてたけど、正直想定が甘かった」
「私だって、この姿のタイプのアビゲイルを見るのは初めてよ。
ともあれ、たとえ人間の姿になろうとも、倫理観の無さは相変わらずのようだわ」
アストレアがそう言うと、その言葉を聞いたギャリーが顔をムッとさせる。
そして、左手に持った巨鎌を肩に担いで、表情に浮かべた感情を垂れ流すように、
「ちょっと~、酷いなーその言い方。私だって思うことはあるよ。
この殺し方苦しいかな? とか、一撃で殺せなくてごめんねとか」
「ね、こんな感じよ」
「でもさ、それがアタシ達の食事である以上、仕方ないじゃん!
ってゆーか、キミ達だって生きるために家畜を殺すわけじゃん?
アタシ達がやってるのはそれと一緒だよ。あんま責めて欲しくないかも」
思わぬ反論だったのか、アストレアは二の句が継げなかった。
彼女に出来たことは、ただ不快に顔を歪めることだけ。
そんな彼女を横目に、ノアは口を開き、
「アストレア、今はそんなに難しく考えない方がいいと思う。
今やってるのは生きるか死ぬかの戦いだ。
俺達はただ、目の前の狩人から必死に抗うことだけを考えればいい」
「ノア......そうね、少し肩に力が入り過ぎてるかも」
ノアの言葉に、アストレアは一度目を閉じる。
大きく息を吸い、そして吐いた。
ゆっくり目を開けると、彼女の深蒼の瞳に揺らぎが無くなる。
「落ち着いた、ありがとう」
「どういたしまして」
横目で彼女の様子を確認すれば、ノアも視線を正面に向ける。
すると正面ではギャリーが頬をほんのり朱色に染め、ノアを見つめていた。
しかし、その視線は相変わらず獲物を狙う鋭さを持っていて、
「いいね、その考え。ちょっと好きになっちゃったかも!」
そう言うと、ギャリーが大鎌を両手に持ち、勢いよく突貫してくる。
瞬間、すぐさま両手の銃を向け、ノアは引き金を引く。
バンバンバンバンと弾丸を何発も射出し、ギャリーに弾丸の雨を降らせた。
しかし、これが通じないことは想定済み。
「そんなの何発打とうが当たらないよ!」
案の定、ギャリーが大鎌をクルクルと振り回すことで防がれた。
されど、それでノアがギャリーに接近する時間は作れた。
相手が近接戦に優れていようと構わず、ノアは構わず突貫する。
「お、ガンナーの君が前に出るんて、今度は何を企んでるの?
お姉ちゃんに見せてみてよ!」
大鎌を大降りに構えたギャリー。
構えの体勢から見て、大鎌を横に振るつもりだろう。
だからこそ、狙うはさらにその下――、
「っ!」
大鎌が動いた瞬間、ノアはスライディングで攻撃を躱し、ギャリーを通り過ぎる。
すぐさま片膝立ちになると、右腕を反転、後方に向けて銃口を構えた。
(後ろを取った!)
今は後の先を取った状態、大鎌も振ったばかりで、ギャリーもすぐさま反転して攻撃は出来ない。
一方で、こちらはカウンターを取り、銃口が向いて――、
「まだ甘いね!」
瞬間、ギャリーが右足を思いっきり踏み込んだ。
地面がバキッと割れ、同時に、杭が打たれたように彼女の肉体がその場でストップする。
刹那、ノアの向けた右手の銃に、右足を軸足にした左足による後ろ回し蹴りが飛んできた。
「――っ!?」
ギャリーの長い足から放たれる豪脚に、バシッとノアの右手が弾かれた。
同時に、上半身が大きく開き、一時的に体勢を崩れる。
片膝立ちだった状態から体が反転して尻もち状態に。
(カウンターにカウンターを合わされた!?)
ノアの目が剥かれ、一瞬の出来事にあっけに取られた。
しかし、そんな状況であろうと事態は刻一刻と変化し続ける。
特に、今は最大のチャンスが最悪のピンチに切り替わったのだ。
右手を地面につけ、体勢を立て直しつつ、左手の銃口を牽制とばかりに向け――、
「お姉ちゃん流反転スライサー!」
しかし、それよりも早くギャリーが動く。
後ろ回し蹴りに使った左足を今度は踏み込みに使い、体を捻って大鎌を振るう。
「私を忘れてもらっては困るわ――氷凍縛」
大鎌がノアへと向かう刹那、ギャリーを氷の鎖が拘束した。
ギャリーの右足が凍り付き、両手に凍死の鎖が絡みつく。
アストレアの拘束技――それが一時的にギャリーを動けなくさせた。
「ありがとう、アストレア!」
ここでノアとアストレアの、二人のアドバンテージが活きた。
すぐさま左手の銃の引き金を引いたノア。
狙いはギャリーの顔面だ。
「こなくそー!」
上半身の拘束を腕力だけで破壊し、ギャリーが大鎌の柄を使って弾丸を防ぐ。
これで稼げた時間は僅か一秒。さすがアビスの上位個体と言うべきか。
しかし、その一秒は追撃に十分すぎる数字だ。
「分裂弾」
立ち上がるよりも先にチャンスを狙うとばかりに、ノアは右手の銃口をギャリの左足に狙いを定めて向ける。
三回引き金を引けば、撃ち出された弾丸はすぐさま空中で二倍の数に分裂した。
計六発となった弾丸は、目標に直撃し、ブチンと膝下から千切り落す。
「――とぉ!?」
左足を失った衝撃で、ギャリーの体勢が僅かに崩れる。
これでギャリーがすぐさま反撃に出ることは無くなった。否、それだけじゃない。
攻撃したノアに注意が向き続けている――これが一番の成果だ。
「鷲突き」
「あ、これ、ヤバイかも」
そう言葉を吐いた瞬間、ギャリーの行動にノアは目を大きく開いた。
アストレアの攻撃を受ける直前、ギャリーが右手で凍り付いた右足を自切したのだ。
それだけじゃない。
同時に、彼女は左手に持つ大鎌の先端を遠くの地面に突き刺し、腕をたたむことで体を鎌の方へ移動させようとしたのだ。
あまりにもお粗末な疑似的なフックショットと言うべきか。
しかし、それを死が迫る中、一切の迷いもなく実行させて生き延びる道を模索する。
なんという知能の高さ、なんという生への執念、なんという人間らしさ。
(挟撃を受けてる状態で、しかも直前で攻撃が来てる段階でなんて反応速度だ。
もはやこれだけで他のアビスと強さが段違いなのが分かる)
ギャリーもといアビゲイルのポテンシャルの高さに、ノアは改めて舌を巻いた。
これではアストレアの刺突が届かない。残り数センチ足りない。
しかし、ノアは知っている――
「それだけじゃ避けられない」
「氷刃延長」
アストレアによる、剣先に氷を纏わせて刃を延長するという初見殺し攻撃。
そしてその攻撃は、紙一重で躱したギャリーに避ける術はない。
「え、嘘――んぐ!」
アストレアの氷の刀身が、ギャリーの胴体に突き刺さる。
その刃はどこまでも長く伸びていき、やがて遠くの建物にギャリーの体を押し込んだ。
直後、その建物を覆うように、氷の山がバキンと生えた。
読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)
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