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第19話 束の間の日々、そして迫る脅威#2

 アストレアによって押し倒されたノア。

 両手首を彼女に押えられ、身動きが取れない。

 もの凄い力だ。それこそ、模擬戦の時より力強いかもしれない。


 そんな彼女の深蒼の瞳には、狂気が孕み、瞳孔を開かせている。

 それほどまでに「オトコの娘」という存在は、気を狂わせるものなのか。


「お、落ち着いて……」


「私は非常に冷静に興奮してるだけよ」


「一瞬で矛盾してる!」


 どうやら今アストレアは、正常な判断が下せないらしい。

 となれば、これ以上言葉をかけても無意味だろう。

 仕方ない、ここは魔力を使って離脱を――、


(あれ? 魔力が全く使えない……!?)


 魔力を流そうと、ノアは体の内側に意識を向けた。

 しかし、ビックリするほど魔力に意識が向かない。

 それどころか、初めっから無かったような気さえする。

 その事に困惑していると、脳内に聞き覚えのある声が聞こえた。


『貴様が魔力を使えないのは当然のことだ』


(こ、この声はシェナルーク様.....!?)


『これは我の魔力ぞ。貴様が戯れに使うものでは無い。

 よって、貴様は自力でどうにかしてみせろ』


(そ、そんな……!)


『それに、貴様のような軟弱な男が、女如きに屈服される様は実に滑稽で面白い。

 せいぜい我を飽きさせない愉悦を提供することだな』


 ――と、そこで脳裏に流れる言葉は切れた。

 どうやらシェナルークは愉悦部所属だったらしい。チクショウめ。

 ということは、この状況で自力で脱出しなければいけないらしい。


(……どうやってここから抜け出せと?)


 魔力は持っているだけで、常人以上の力を発揮させる。

 それがこの世界の覆らぬ理。だからこそ、魔脈持ちは管理される。

 一般社会に溶け込む彼らが、本当の一般人と共に安全安心に日常を過ごせるように。


 逆に言えば、魔力を持つ人が持たざる人を襲う時、それは凌辱以外の何物でもない。

 とはいえ、相手が友達(アストレア)である以上、ノアは今の状況をそう捉えるつもりはない。

 つもりはないが――、


(これ、本当にヤバいかも.....)


 端的に表して、ノアが絶体絶命の状況にいる状況には変わりはないのだ。

 既にアストレアに男の尊厳という生殺与奪の権を握られている。

 魔力が使えない以上、自力での脱出は不可能。


 しかし、全く希望がないわけではない。

 その希望に向けて、ノアが首を横に向け、覆いかぶさるアストレアの後ろを見る。

 どうにかなる方法があるとすれば、それは先程から沈黙している幼馴染のみ。


「ライカ! アストレアを止めてくれ!」


「ライカ、よく考えてこれほど美味しい状況は早々無いわ。

 あなたはこれを逃すというの?」


 ノアがライカに助けを求めた瞬間、アストレアもすかさず言葉をかぶせてきた。

 どうやら彼女もライカの存在を警戒しているようだ。

 つまりこの勝負、ライカを味方につけた方が勝利する。


「ライ――っ!?」


 ノアがライカに語りかけたその時――突然、アストレアの右手が、彼の口を覆った。

 そのせいで喋ることが出来なくなる。


 その状況は、同時に左手が自由になったことを意味するが、そうなったところで意味が無い。

 当然の話だ、長年鍛えてきた程度の少年が左手一本で、魔力を有す華奢な少女の白く細長い右手を引き剥がせるはずがないからだ。


「ライカ、思い出して。あなたはよく幼馴染との思い出を語る時、『可愛かった』と何回も口にしてたわよね?

 ノアは母親似であったから、雰囲気や顔立ちが女の子っぽかったし、臆病な性格でもあったから守りたい、と」


 その言葉に、口を塞がれた衝撃でアストレアへと視線を向けていたノアが、ライカへと視線を向けた。


 ライカが口に手の甲を当て目を逸らしている。

 頬も赤いことからどうやら本当のことらしい。

 昔の自分はそんな軟弱者に見えていたのだろうか。

 いやまぁ、否定はできない。よくライカの母親にも着せられてたし。


「そしていつの日か、こうも言ってたわよね――一度女装姿が見たいって」


「!?」


「そのチャンスが棚ぼたで巡ってきた。

 あなたはこのチャンスをみすみす逃すというの?

 大丈夫、今はひとりじゃない。私が一緒に掴んであげる」


「ふぁいふぁ!」


 口をもごもごさせ、ノアは必死にライカの名前を呼ぶ。

 しかし、幼馴染は思考の処理に時間がかかってるようで反応がない。

 代わりに、両手で顔を覆い、俯く姿を見せるばかり。


 この流れは不味い。圧倒的劣勢だ。

 しかし、まだ希望を捨てるには早い。

 なぜなら、自分はライカと小さい頃から絆を育んだ幼馴染なのだから――、


「ノア、ごめん! アタシは弱い女だ……欲望に抗えない」


「――!?」


 衝撃的な一言をノアが聞いたと思った直後、ライカの顔がゆっくり上がる。

 両目を覆っていたであろう両手は指の隙間から青の瞳を覗かせ、口元には隠しきれない喜色が浮かんでいた。


 仕方ない話だが、この時のノアは知らなかったのだ。

 ライカがノアに可愛さを見出し、その姿を見てみたいと内なる黒い欲望を抱えているなんて。

 しかし、無知であったことがこの場で何の慰めにもならないのことは確か。


 そんなライカの、ノアから見れば愚断で、アストレアから見れば英断である言葉によってもたらされる結果は一つだ。


「アストレア……アタシに夢を見せてくれ」


「イエス、マイブラザー」


「〜〜〜っ!?!?」


 ものの見事にフラグを回収したノア。

 誰にも褒められないし、自慢できない一級フラグ建築士の資格を獲得した瞬間だ。

 もはやそうなることすら運命であったかのように、運命の天秤は傾かなかった。


 なんとか抵抗しようとするノアだが、当然アストレアの右手を動かせない。

 そんな彼を見て、勝ちを確信した少女が眼下の可愛い顔をした少年に視線を向け、


「ノア、諦めて。これでもうあなたに選択肢は無くなった。

 それに先程から私の拘束に対して、振りほどこうとしないのはそういうことでしょ?

 あなたも実はまんざらではない。なら、問題ないわよね」


 その言葉に、首を振るのも難しいノアは訴えかけるように視線をぶつける。

 直後、アストレアから最後の弁明が認められたのか、口を閉ざしていた薄い蓋が除かれた。

 暫くぶりの大量の空気を口から吸いこむと、ノアはは口を動かし始め、


「これはその......じょ、女性に触れると、力が上手く入らなくなって、と言いますか.......」


 口をもごもごとさせ、大した言い訳が思いついても無いままに意見を述べた。

 当然、ノアが抵抗できない理由は、愉悦部会長のシェナルークに魔力の供給が断たれたからだ。


 とはいえ、その事実を馬鹿正直に話すわけにはいかない。いや、話せるわけがない。

 それはシェナルーク本人から口止めされてることでもあり、特魔隊の歴史を揺るがしかねない原子爆弾並みの威力を持った言葉だからだ。


 では、それを踏まえて抵抗できない理由をなんと答えればいいのか。

 考えればもっと良い言い訳が見つかったかもしれない。

 しかし、今のノアにはそれが精一杯だった。

 半分、自分でも何言ってるんだろうという自覚はある。


「――っ」


 瞬間、目の前のアストレアが息を詰めた。

 同時に、顔が怖くなる。無表情に迫力が増す。

 さながら、ギリギリまで耐えていた理性の糸が千切れたかのように。


「......ノア、今あなたはとても大変なことを言ったわ。そして、それは――悪手よ」


「え?」


「大丈夫、あなたはただ受け入れるだけでいい。

 私があなたを新たな世界へと導いてあげる!」


「え、ちょ、あ、うわああああぁぁぁぁ!!!」


 刹那、アストレアによって服をひん剥かれたノア。

 抵抗できないことを良いことに、あっという間に服がポイポイと捨てられる。

 そんな光景を、ライカが変わらず指の隙間から盗み見ている。

 もうこの場に、ノアを助けられる者など誰もいない。


―――数分後


「フフッ、フフフ......出来た.....フリフリロリータ衣装」


 アストレアにコーディネートされるままに、ノアはピンクを基調とした服を着せられた。

 肩やスカートには白いフリフリがついており、頭にはうさ耳風カチューシャ。

 さながら、どこかの不思議の国に迷い込んだ少女の衣装というべきだろうか。


「うぅ、ぐすん......」


 その服を着せられたノアは、尊厳を破壊されたような気分――いや、実際、破壊されてメソメソしていた。


 アストレアからは服を剝ぎ取られるし、ライカには見捨てられる。

 メンタルはすでにボロボロだ。その上でこの可愛い服を着せられる。

 誰か、誰か助けてくれる人はいないのか。


「可愛い。さすがのポテンシャル」


 一方で、実に満足そうに頷くのがアストレアだ。

 鼻血を出しながらサムズアップという、いつにも増して誰にも見せないような感情を出している。

 また、ライカも頬を朱色に染めながら、「ほぉ」と息を漏らしていた。


「な、なんでこんなことに.....」


「いいじゃない。まだ服を着せただけよ?

 出来ればメイクもしたいし、もっと言えば下着も変えて欲しい。

 大丈夫、ちゃんと新しいのがここにあるから」


「見せなくていいし! スカートをめくろうとしないで!」


 アストレアが左手でスカートをめくろうとしながら、右手で女性ものの下着を見せつけてくる。

 その行為に対し、ノアはスカートの裾を押さえつけて死守。

 もはやこの行動自体、自傷ダメージが凄いが、覗かれていいものなど何もない。


 そんな必死に抵抗するノアに、アストレアは心底不思議そうな顔をする。

 まるで「こっちではこれが普通なのに」とカルチャーショックを受けてる異文化人のようだ。

 そして、そのままの表情で――、


「でも、これはあなたが望んだ罰よ? 嫌々でも受けるのが筋というものじゃないの?」


「そう言われると言い返せない......」


 羞恥心で顔を真っ赤にしながら、ノアは反論できない悔しさで口を結ぶ。

 そんな表情さえ、アストレアからすればご褒美であるようで、「あぁそれ良い」と気持ち悪い言葉が聞こえてくる。


(これがアストレアの本来の姿なのか?)

 

 そう思い、ノアが悩むのは言うまでもない。

 いや、もしかしたら、もともと彼女はこんな風であり、単に知らなかっただけなのだろう。

 これまで見ていたのは氷山の一角に過ぎなかったのだと。


「ハァ.....」


 次なる衣装をルンルンで決め始めるアストレア、その姿を見てノアは大きくため息を吐いた。

 彼女の言う通り、曲がりなりにも罰を望んだのは自分である。


 その結果がこれであるというなら、もう、甘んじて受け入れるしかない、のかもしれない。

 であればこそ、せめて凌辱された男の尊厳の中で輝きを残している漢気を見せる時。

 半分やけっぱちになりながらも、ノアは両手に作った拳の片方を胸の前へと掲げ、


「......わかった。こうなればとことん付き合ってやるよ! さぁ来い!」


「ノア......! あなたを友人に持ったことを誇りに思うわ!

 それじゃ見せて、あなたが持つ全ての可能性を!!」


 それから、青のパレスの仮眠室では、臨時ファッションショーが行われた。

 王道のメイド服からお団子ヘアのカツラを被りつつのチャイナ服。


 女子校の制服からセーラー服に、果ては妖精のコスプレをした衣装まで。

 それこそ、クローゼットにある、ありとあらゆる服をノアは着る羽目になった。

 そんな恥を忍んでポージングを取るノア。


 その一方で、彼の目の前では、アストレアが一眼レフカメラを両手に、パシャパシャパシャ。

 様々な角度から撮る姿は、さながら熟練のカメコのように。


 また、そんな彼女の後ろでは、ライカが自身のスマホで、控えめながらもしっかりと写真を撮っていた。

 そんな時間は、アストレアが満足するまで続いた。


*****


 特魔隊本部、その作戦司令室にマークベルトは訪れていた。

 ダークブラウンの室内は、荘厳とした雰囲気が出ており、その部屋の奥(入口正面)にある書斎机には、一人の男が座っている。


「珍しいな。君から私に話しかけてくるなんて。

 私に苦手意識を持っていると思っていたが」


 その男の名は、ギリウス=ウィルバート。

 身長百八十センチはある老年の男性だ。


 銀色がかったクセッ毛の白髪を肩まで伸ばし、同じ色の僅かな顎髭を生やす。

 顔には数々の修羅場をくぐったであろう深いしわが、いくつも刻まれていた。


 マークベルトを見る黄色い瞳は、どこか品性を持つ優しさがある。

 されど、漂う雰囲気は、存在するだけで威厳を放っていた。

 それもそのはず、彼の役職は作戦指揮総督――特魔隊本部の一番偉い存在だ。


 そんなどこか好々爺のような優し気な笑みを浮かべるギリウスに対し、マークベルトは「昔の話ですよ」と軽く返し、それから神妙な顔をすると、


「それよりも至急伝えたいことがあり、お時間を取らせてもらいました」


「君ほどの人物が、随分な緊張感(プレッシャー)を放っているな。

 それほどまでに火急な事態ということか」


「四月の件もありますしね」


 その瞬間、ギリウスの目付きが悪くなる。

 ただでさえ威厳のあるしわが濃く刻まれた。

 マークベルトと同じ懸念に至ったという証だ。

 だからこそ、ギリウスは顔の前に両手を組んで尋ねる。


「話してみてくれ。君が何を見たのかを」


「はい。実は――」


 そして、マークベルトは自分が経験したことを話し始めた。



―――時は遡り、模擬戦が終了した頃。


 会場は帰る隊員達や教官達で賑わっており、模擬戦が終わってから数分経とうとも、冷めやらぬ熱を帯びていた。


 そんな中、マークベルトとクルーエルは、通路が空いて歩きやすくなっても、席に座ったまま動かない。

 そんな二人を怪訝に感じたライカが首を傾げて尋ねる。


「帰らないんすか?」


「俺はもうちょっと余韻に浸っていたくてな。先に帰ってていいぞ」


「私はこの人に用があるの。だから、気を遣わないで大丈夫よ」


 上司二人からの言葉に、ライカは「わかりました」と答え、この場から去る。

 周囲に誰もいなくなったタイミングで、口火を切ったのはクルーエルだ。


「マーク......気付いてる? 会場の遥か遠くの方だけど、覗き見していた連中がいたことを」


「あぁ、わかってる。とはいえ、この距離じゃ捕まえるのも一苦労だな――俺じゃなければ」


「なら、任せたわよ。もしかしたら例の事件関係かもしれないから」


 席から立ち上がると、クルーエルは長い青髪を揺らしながら、その場から離れた。

 それから十数秒後、「さてと」と一声ついたマークベルトが立ち上がると、すぐに魔技を発動させた。


時間を司る者(タイムキーパー)


 瞬間、周囲は途端に動きを止めた。

 時計の針も、空を飛ぶ二羽の鳥も、風に揺られ漂う木の葉も全ての時が死んだ。

 カラーの静止画となった世界でただ一人動けるマークベルトが、見慣れた光景に視線を巡らす。


「相変わらず殺風景な光景。自分だけ取り残されたみたいで嫌な気分だ」


 思わずついて出る愚痴とため息を吐きながら、マークベルトは意識を切り替える。

 視線の方向はわかっている。随分と禍々しい気配だ。

 アレは人間じゃない。そう、言うなれば――人類の敵だ。


「行きますか」


 まるでコンビニに行くような軽さでもって、マークベルトは行動を開始する。

 慎重に屋根を伝って移動し、次々と高い建物を飛び越え、最終的に辿り着いたのは高層ビルの屋上だった。

 そしてそこには、奇妙な姿をした二体がいた。


 一体は黒い光沢を帯びた人型だ。

 頭がひし形で、右目が極端に大きい、アンバランスな両目をしていた。

 また、鼻も無ければ口もなく、両手は三本指で、それぞれが鞭のように細長い。


 もう一体も同じく黒い人型。

 顔は球体で、巨大な口しかパーツがない。

 体は上半身がゴリラのような姿で、下半身が蛇と神話に出てくる合成獣(キメラ)のようであった。


「アビスが二体で敵情視察ってか? なんのために.....」


 魔技で動けなくなっているため、その二体がマークベルトに気付くことはない。

 アビスであるならば、すぐさま倒してしまうのがセオリーだ。


 なぜなら、存在するだけで害を及ぼすのがアビスであるから。

 彼らが振りまく瘴気は、魔力を持たない一般人には猛毒だ。


 下手すれば、その一般人から新たなアビスが生まれかねない。

 そういう意味で、発見次第即確殺サーチアンドデストロイすべきなのだが――、


「何の目的で見てたか聞かなきゃな。ま、このレベルなら大丈夫か」


 右手のアビスリングを変形させ、自前の剣を作り出す。

 そのまま近づくと、一体の頭部に、左手で触れた。

 瞬間、ひし形の頭をしたアビスの頭だけが、時を動かし始めた。


「さーって帰ろうか.....って何奴!? 一体いつから.....てか動けねぇ!」


「おー、立派にしゃべれる固体か――って、いや、マジか。

 しゃべれんのか。それだけで十分すぎる大事なんだが......まぁいい、お前に聞きたいことがある。

 お前達はどうして――」


「兄様、申し訳ありません!」


「――!?」


 その瞬間、ひし形アビスの頭が、ボコボコに膨れ上がり、弾けた。自害だ。

 暗殺者が口の中に毒をしこんでいるような、そうと捉えるしかできない早業。


 しかし、一定以上に育ったアビスは、それこそここまで育った個体であれば、核を壊さなければ死なない。

 加えて、動かしたのは頭だけであり、胸付近にあるはずの核は健在のはずで――、


「俺の魔技内でも死んだ.....?」


 マークベルトにとって異常事態が起きた。

 それは捕えて動けないはずのひし形アビスの体が消えていったのだ。

 本来であれば、時を止めた自分の許可なく動くことは出来ない。


 出来るとすれば、自分を上回る圧倒的魔力で効力を相殺するぐらい。

 瞬間、頭の中に積み重ねた知識と経験、それによって裏付けされたピースがカチッと埋まる。

 それは即ち――、


「アビス王......ハァ~、マジか......」


 真実に辿り着き、マークベルトは左手で顔を覆った。

 そのまま認めがたい事実にガックシと頭を下げる。

 同時に、右手は素早く横に動かし、もう一体のアビスの胴体を真っ二つにした。


 魔技の効果を終了させた。

 倒したアビスが粒子状になって空中へ溶けていく。

 雲は動き出し、青空を飛空艇が通り抜けた。


「......英雄の定めか?」


 しかし、マークベルトの顔は、暗い雲がかかったように暗かった。



―――現在


「――なるほど、そんなことが。どうやら事態は急を要するらしい。

 マークベルト君、君は直ちに部下達に連絡してくれ。

 至急、旧都市を調べる必要があると」


 左手を机につけ、ゆっくりと立ち上がると、ギリウスは強い意思の瞳でもって告げた。

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)


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