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第15話 模擬戦開始、そして勝敗の行方#1

――時は数分遡り、アストレアの紹介がされた後の屋外闘技場の観客席


 サッカースタジアムほどではないが、リングを取り囲むように設置されたそこは、今も僅かな空席を詰めるように生徒達が集まっている。


 そんな彼らの話題は、当然これから行われる模擬戦についてだ。

 方や十代のうちからA級へと至ったエリート、対するは新進気鋭の新人。

 特に、新人に至っては十メートル級の巨大アビスを撃破したと聞く。

 とはいえ――、


「どうせ噂に尾びれどころか背びれ、腹びれまでついたんじゃねぇの?」

「近くにライカ先輩がいたって話だし......それに、話によると幼馴染らしいじゃん?」

「え、ってことは、コネでこっち来たってこと!?」


「コネにしても、もともと一般人からこっち来るのは狂人だろ」

「英雄願望でもあったんじゃないの?

 ほら、隠されてた力が今になって発揮されましたーってやつ。アレよ、アレ」


 と、ノアの下馬評は散々なものであった。

 事実、ノアが実際に戦った映像は本部の上層部しか知らないため仕方ない。

 とはいえ、その評価が著しく間違っているのも確か。


 そんな具合の会話がどこもかしこも交わされる中、聞こえてくる声に今にも噛みつこうとするのを自制している黄色髪の少女――ライカ=オルガノスは、発散しようも無い怒りを隣に座るマークベルトにぶつけていた。


「あの、痛いんだけど。肩パンやめてもろて」


「悪口言われてるノアの方が痛てぇ」


「いやまぁ、でも、聞こえてないわけだし。俺、もう直に殴られてるわけだし」


「上司だろ。部下の不満は受け止めるべきだ」


「こんな逆パワハラ初めてだよ」


 憤慨するライカの行動に、マークベルトはため息を吐くも、仕方なく受け止め続ける。

 そんな状態で、二人して見下ろす先はリングの上だ。


 リングにはすでに司会によって紹介されたアストレアが待機している。

 驚くほどの人数が見守る中で、その立ち姿は実に自然体だ。

 良い意味で無視している。


 そんな友人の姿を見つつ、これから呼ばれるであろう幼馴染の紹介にライカがソワソワしていたその時――、


「あら~、酷い言い草ね。抗議の電話でも入れようかしら」


 通路側に座るライカの肩話からからアストレアの紹介内容に愚痴をこぼす女性が一人。

 その声にライカとマークベルトが目線を向けると、ライカが途端に目を張る。


「クルーエルさん!? もしかして、クルーエルさんも見に来たんすか?」


 ライカが珍しく丁寧語を使う女性――クルーエル=イーマルシャークはアストレアの直属の上司である。


 彼女の容姿は、一言で言えば美人系だ。

 腰まで伸ばした青い髪に、水色の瞳、額にはサークレットのようなものをつけている。


 浅葱色の隊服を肩にかけるように羽織る内側に宿った体は、世の女性が羨ましがるような抜群のプロポーションを放っていた。

 特に、一部の女性的箇所に関してはライカを優に勝っている。


 それでいて漂わせる雰囲気は経産婦のような柔らかい雰囲気を放ち、ウブな少年ならあっという間に魅了してしまうだろう魅力を持っているのだから質が悪い。

 もっとも、その質の悪さを喜ぶ人は多かれど、悪く言う人はほとんどいない。


 そんな知っている上司の登場に、ライカはすぐさま隣にいるマークベルトを肘で小突く。

 マークベルトの隣の席は空席なのだ。つまり、「詰めろ」という意味である。


 その意図を渋々組んだマークベルトが一つ席をズレれば、ライカも倣って横にズレた。

 そうして出来た空席に、クルーエルが「ありがと」と感謝を述べ、ライカの質問に答える。


「もちろん、見に来るわよ。なんたって可愛い後輩の試合だもの。

 ま、そうじゃなくても、ライカちゃんの幼馴染君の試合となれば、気になって見に来ていたでしょうけど」


 そう言って微笑するクルーエルの雰囲気に、ライカですら僅かに頬を朱くする。

 もともと、少年心が精神に住み着いてるライカのことだ、若干刺さりやすいのもあるが。

 ともあれ――、


「そうなんですか? 正直、クルーエルさんは試合に興味ないタイプかと......」


「確かに、誰かが試合してても見に来ないことは多いけど。

 そういう時は、大抵仕事が立て込んでることが多いときね。

 もっとも、今もたっぷり立て込んでるけど、無理やり来ちゃった☆」


 そう言って、ニコニコ笑顔でピースするクルーエル。

 そんなおちゃめな先輩の反応に、ライカの少年心は大いに刺激される。

 即ち――、


(え、この人、可愛いかよ)


 と、普段、同性相手に思わないことを意図せず思ってしまうほどには。

 異性は言わずもがな、同性すら魅了してしまう魔性。

 一部通ずるところがあるノアと対面した時、一体どうなるのか。


 とても気になるところだが、一先ず言えることは、ノアが女性でなくて良かった。

 そんなライカの悶々とした気持ちをよそに、クルーエルは話を続け、


「ライカちゃんの幼馴染君.....ノア君だっけ、彼に興味があるのは本当よ。

 だって、昔は魔脈なしと判定を受けたのに、つい先日には魔力に目覚めたんでしょ?」


「そうですね。コエノ先生曰く、ノアは内包する魔力量が多すぎるらしいんです。

 そんで、内側から爆発するのを防ぐために、肉体が防衛措置を取った結果、魔脈が硬くなり、魔力が発現できなくなったと。

 当時、測定器が引っかからなかったのも、それが影響してるという見立てらしいです」


 その時、ライカの話を聞いて、長らく沈黙していたマークベルトが腕を組みながら反応した。


「なるほどな。体の自己防衛機能なら、そう判断されてもおかしくねぇな。

 全く、さすがオルガさんの息子というか。

 あの人も今頃ここにいたら驚いてるかもな」


「いえ、その前に同じ道に来たことに嘆くんじゃないかしら。

 あの人、生まれる前から随分と子供のことを楽しみにしていたし。

 どう見ても典型的な子煩悩タイプよ」


「ハハッ、違げぇねぇ」


 そう言って、マークベルトとクルーエルが笑った。

 そんな二人にしかわからない会話に、ライカは困惑の顔を浮かべることしかできない。

 と、その時――


『お次に注目してもらうは南口!

 この業界に突如として現れた超新人(スーパールーキー)――』


 その時、司会がノアの紹介を始めた。

 ライカの青瞳には星が散りばめられたように一気に輝きに満ち、リングへと視線が向く。


「さて、ライカの教育係としての成果を見せてもらおうじゃないか」


「うちのアストレアちゃんは強いわよ。

 ハンデつきとはいえ、そう簡単に勝てる相手ではないわ」


 マークベルトとクルーエルも、期待を込めたような眼差しでリングを見つめる。

 そんな二人の感想をよそに、持ってきていたトートバッグからライカはサッとあるものを取りだした。

 彼女曰く、「応援セット」と称するもので、


「……どこの推し活の人?」


「無言で取り出すのやめろよ」


 ライカの姿を見て、クルーエルとマークベルトがそうツッコミを入れるのは無理もなかった。


*****


 ステージ上、会場から聞こえる様々な声に、ノアは視線を移動させた。

 何を言ってるかわからないが、この空気感に期待してるのはわかる。

 それがアストレアの勝利なのか、自分の勝利なのか知る由もないが。


 硬質なリングの感触を足裏に感じ、正面にいるアストレアと向かい合う。

 その時、ノアの登場を待ちかねていたアストレアが、周囲に視線を向け、


「なんだか凄い数が集まっているわね。

 単に私とあなたで勝負をつけようってだけの話なのに。大丈夫、気後れしてない?」


 まさかの質問に、面を食らうノア。

 この状況で対戦相手の心情を慮るなんて。

 しかし、すぐに微笑し、


「うん、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。

 まぁ、この集まりにビックリしなかったと言えば、嘘になるけどね。

 それでも、僕の意地と覚悟を示すのに、観客の目は関係ない。

 君に勝つために、全力で立ち向かわせてもらうよ」


「......そう、良い目をしているわね。

 なら、私もあなたに敬意を示すわ。

 A級(わたし)の強さというものを全力で見せてあげる」


 簡単な言葉を交わし、ノアとアスストレアは互いに武器を構えた。

 両手に銃を握る中距離射程武器の少年と、右手にレイピアを握る近距離武器の少女。

 実戦経験ではアストレアが上であり、されど武器相性はノアにアドバンテージがある。


 どちらにも有利と不利が存在し、されどそれを互いに指摘することはない。

 指摘されない以上、それは互いに同意と見なされたイーブンな状態ということだ。

 ここに何人も口を挟むことは許されない。


 アストレアの冷めた瞳を見て、ノアの胸の熱が滾る。

 相手が本気であることを理解し、ノアは魔力を解放――瞳が黒から紅に変化する。

 傲慢(シェナルーク)の魔力を引き出した証拠だ。


「.....ライカに聞いてたけど、本当に目が赤くなるのね。

 あと少し口調が雄々しくなる.....とも聞いているけど」


「なぜかこの時は気分が高揚するんだよね。

 一人称が少し変わるぐらいだからあまり気にしなくていいよ」


 どうして口調がそうなるのか、ノアは理解している。

 彼が使う魔力は、あくまで本来の持ち主であるシェナルークに依存しているのだ。


 魔力を発現させる際、彼の精神は一部<傲慢>の影響を受ける。

 その結果として、口調が雄々しくなるのだ。

 二人がそんな会話をしていると、テンション絶好調の司会がしゃべり始める。


『どうやらステージ上の二人も準備が出来たようです!

 では早速、二人の熱い勝負を見届ける――前にルール説明といきましょう!』


 そう言って、司会が簡単なルール説明を始める。

 それを要約するとこんな感じだ。


 一つ、両者は互いの武器を用いて戦う。

 ただし、アストレアは汎用武器で、ノアは専用武器を使うこと。


 二つ、勝敗はどちらか一方が降参または戦闘不能になった場合。

 また、アストレアに限っては、武器を破壊された場合も含まれる。


『ルール説明は以上になります。

 ちなみに、ステージ上のお二人には、ダメージを肩代わりしてくれる特殊な身代わり人形がいますので、存分に戦ってください!

 ただし、防ぐのはあくまで致命傷であり、それ以外は普通に痛いのでご注意を!

 それではさっさと参りましょう! いざ尋常に――試合、開始です!』


―――ゴーーーン!


 司会による声高々に試合開始の宣言直後、盛大に銅鑼の音が鳴り響く。

 試合開始の合図だ。ここからはリングに立つ、二人の少年少女だけの世界。

 わずかな反響音が響く中、アストレアがノアに一声かける。


「始まったようね。なら、早速行くわよ」


 律儀に声をかけた直後、アストレアが愚直に突っ込んでくる。

 地面を蹴って伸びる一歩は、勢いだけで軽々と数メートルを超える。


 速度はある。しかし、見逃してしまうほどではない。

 最初は情報収集とばかりに目に力を入れ、ノアは動きを注意深く観察した。


(見た感じからして、身体強化をしている様子はない。

 まずは純粋な力量を見るために、あえて隙を晒しているのかも。

 なら、遠慮なく中距離のアドバンテージを活かさせてもらおう)


 両手に持つ銃を正面に向け、銃口を標的に向けると、早速ノアは引き金を引いた。

 バンッと銃声とともに銃口から放たれた弾丸は、回転しながら空気を切り裂き、突き進む。


 バンバンバンバン。撃った数は計四発、その後ノアがさらに引き金を引く。

 その数の分だけ、弾丸が雨のようにアストレアへ横向きに降り注いだ。


「なるほど、これがあなたの攻撃。

 圧も速度も十分.....けれどそれじゃ通じない」


 迫りくる弾丸に、アストレアがレイピアを振り下ろした。

 寸分の狂いもなく振り下ろされる剣先は、弾丸をキンッと弾く。

 剣と弾丸が交わった瞬間、オレンジ色の火花が散った。

 その一撃で、初撃の弾丸の軌道が外に逸れる。


 そこからさらに、キンキンキンキンッ、と甲高い音が鳴り響く。

 アストレアの体の周りにまるで剣筋のバリアが張られているかの如く、全ての弾丸が弾かれた。

 彼女の勢いが止まることはない。このまま来る。


「今度はこっちよ――氷針(ひばり)


 自ターンを宣言するアストレアが、空中に先端が尖った氷を生成する。

 空中に出来た魔法陣から白い冷気を放つ半透明な礫、アストレアが左手を動かすとともに、ノアに向かって放たれた。

 青空から差し込む光がキランと瞬き、ノアの瞳を刺す。


「っ――!」


 飛行機雲のように冷気の尾を引きながら、ノアの眼前に氷が迫った。

 数もさきほどの自分の攻撃のお返しとばかりに数が多い。

 しかし、避けられないほどではない。

 それこそ、後ろに下がってしまえば簡単に回避できる。 


 先程までいた足元の位置に、ドスドスドスと氷が地面に突き刺さた。

 突き刺さった箇所からリングを凍らせるように薄氷が広がり、小さな氷塊が生まれる。


(なるほど、こうなるのか......)


 地面に広がる氷を見て、ノアは現象を視認し、情報をインプットする。

 アストレアの攻撃には、強い冷気が込められている。

 それこそ、たちまち周囲のリングを凍らせてしまうほど。


 となれば、このステージに氷が張れば張るほど、彼女の有利な盤面になる。

 白く染まったリングから突然氷が飛び出してくる――なんてこともあるかもしれない。


(考えすぎかもしれないが、水氷属性(アストレア)と戦うのは初めてだ。

 最悪の想定するぐらいの危機意識の方がいいだろう。

 なら、出来る限りあの氷は撃ち落とすとしよう)


 ノアには、せっかく銃という中距離からでも攻撃できる武器がある。

 そのアドバンテージを維持して戦った方が、有利に試合を進められるはずだ。


 銃のアドバンテージは、基本狙いを定めれば、どんな体勢でも狙え――、


「刺閃」


 その時、アストレアのレイピアがノアの眼前に迫った。

 踏み込んだ彼女の左足が、三メートルはあった距離を一瞬にゼロにしたのだ。

 同時に、彼女が踏み込んだ右足に合わせ、上半身をバネびして右腕を一気に伸ばす。


 レイピアの攻撃において、一番のダメージソースは刺突である。

 剣の構造からしても、その攻撃をした方が相手に致命的な一撃を与えられる。


 逆に言えば、その攻撃を受けないことが、対レイピア使いとの戦い方だ。

 もっとも、それが難しいのだが。


「――っ!」


 身体反射ほどの反応速度で、ノアはその場から後ろに飛び、遠ざかる。

 たったそれだけだが、レイピアの剣先が眉間の数センチ手前で止まった。

 一瞬の判断――それだけで勝負が決まるのがこの世界。


氷刃延長(アイスグリッチ)


 瞬間、レイピアに冷気が纏わりつく。

 それとほぼ同時に、刀身は凍り付き、レイピアの先端に氷の刃が延長された。

 さながら、可変式の警棒のように。


「!?」


 眼前の事象に、ノアの目が大きく見開いた。

 回避できたと思った攻撃が、そのままの状態で追撃してくる。

 なんという悪夢か――現実逃避してる場合じゃない!


「くっ!」


 咄嗟に首を傾け、ノアは真横を通る氷の刃を回避した。

 半透明の刀身が僅かに彼の頬を掠め、数メートル後方の壁に突き刺さる。

 氷の刀身に、少量の血にとって赤く染まった。


(あっぶな! そんなのもアリかよ!?)


 初めて実感する魔技の恐ろしさに、ノアは頬を引きつらせる。

 同時に、咄嗟に横に跳んでアストレアから距離を取った。


 地面をゴロゴロと転がると、その勢いのまましゃがみ体勢に移行。

 銃口を標的に向け、再び弾丸の雨を降らせた。


「そっちがそうくるなら――分裂弾(デヴィジョンバレット)


 パンパンパンパン。ノアが放った銃弾は計四発。

 しかし、その弾丸は空中で二つに分裂し、たちまち計八発へと変化した。


氷の壁(アイスウォール)


 すぐさま足元から体を覆い隠すように、アストレアが氷の壁を作り出す。


「――っ!?」


 されど、その壁はノアの放った散弾のような弾丸によって、容易く破砕された。

 凍えた防御壁が瓦礫を散らして無くなり、アストレアの体が露わになる。


 アストレアまで一直線に伸びる隙の線。

 その軌跡を辿るように上げたのは銃口――ではなく腰。

 クラウチングスタートのような姿勢になると、ノアは一気に地面を蹴る。


「特魔隊式格闘術・脚式――」


 真っ直ぐ滑り込み、アストレアの懐に潜り込む。

 アストレアの肉体が眼前まで迫った時、ノアは体を横に向けると、右足を強く引き上げた。


 さながら、拳を大きく振り被って力溜めをするかのように。

 となれば、次にすることは――圧縮された力を解放することだ。


溜穿(りゅうが)


 ライカから教わった特魔隊式格闘術の一つ。

 特魔隊に所属する隊員であるが、使い手次第で威力は千差万別。


 それこそ、魔力を纏うだけで怪力男に変身できるノアの一撃は大砲の如く。

 右足を一気に伸ばし、空気の壁に穴を開けるような鋭さでもって蹴りつけた。


「ぐっ!」


 その攻撃を、左腕を曲げて盾にするようにして、アストレアがガードする。

 がしかし、耐えきれるものではなかったのか、彼女の体が数メートルほど吹き飛ぶ。


 とはいえ、さすがに実戦経験豊富なベテラン。

 リングを転がる幼稚さを見せず、アストレアはリングを後方へ滑るだけであった。


「魔力を完全に通してない状態でこの威力。

 咄嗟に左腕に魔力を集中させなければ、今頃左腕は折れて使い物にならなかったかもしれないわね」


 ガードした腕を見ながら、アストレアが少し眉を寄せ、ノアに話しかける。

 彼女の腕は小刻みに震えていた。

 つまり、それだけノアの一撃がガードした上で届いてる証。


「魔力量だけには自信があるんだ」


「えぇ、ライカから聞いているわ」


「......ライカの奴、また色々口滑らせてるのか?」


「あなたのことになると、口に油が塗られているかのように饒舌になるわよ。

 あの子からすれば、ただ幼馴染の自慢をしてるんでしょうけど」


「.......」


 後でライカには、アストレアに何を話したのか聞かなければいけない。

 勝負中でありながら、ノアはそのことを固く誓った。

 それはともかく――、


「僕の力試しは気が済んだ?」


「そうね。けどまぁ、この場所に残りたいって言うのなら、この程度はやってもらわないとね。

 だから、本番はここから。当然、あなたも私と戦うために身に着けてきたのでしょう?」


 そう言葉を投げかけると、アストレアは答えを待たずにレイピアを胸の前に構えた。


 直後、彼女から強い圧が放たれる。体外へ放出された魔力だ。

 そしてそれは、やがて体に表れたように、回路が形成された。


 ただし、その線はノアやライカと若干違い、角ばっておらず水が流れるように滑らか。

 また、二人は白い発光であったのに対し、彼女の魔力の発色はネオンカラーの水色であった。


「特魔隊員なら誰もが使える自己強化術式。

 逆に言えば、この技を使えなければ、強いアビスには絶対に勝てない。

 さぁ、見せて......あなたの自己強化術式を」


「もちろん。そっちがその気なら、僕も全力を出さないと」


 そう言って、ノアも自己強化術式によって体表に角ばった白い線を巡らせる。

 それを見たアストレアが、氷の表情を崩し、口を弓なりに歪めた。


「いいわね、十分に体に魔力が巡って肉体の細胞が強化されてるのがわかる。

 それじゃ始めましょう。私達の戦いの第二ラウンドを」

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)


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