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第13話 ライカの友達、そして覚悟の証明#2

「ノアがこの二週間で身に着けて欲しいのは、『自己強化術式』だ。

 だが、そのためにはまず、自分の中にある魔脈を認識してもらわなければいけない」


「自分の中にある魔脈を?

 でも、それって血管と同じで、自分で認識できるようなものじゃないはずだけど」


「本来はな。だが、考えてみろ。

 魔力の解放は自分が魔力を認識してないとできないだろ?

 逆に言えば、魔力を認識できていれば、自身の魔脈もどう流れてるかわかるって話だ」


 そう言いつつも、ライカは「まぁ、見た方が早いな」と言って軽く構えた。

 足を肩幅に開き、ひじは軽く曲げ、拳を軽く握る。

 そして、体に魔力を巡らせ始めた。


「――っ」


 瞬間、目の前の光景に、ノアは目を大きくした。

 ライカの体に表れる、直角に枝分かれした妖しい白い光。


 地肌を透過し、光が内側から漏れだしており、それは手の甲や首、頬の辺りまで伸び、輝いていた。

 さながら、その光のラインは機械に張り巡らされた回路だ。


「これがアタシの体の中にある魔脈だ。

 人によってつーか、属性によって形は若干違うが、効果は同じだ」


「へぇ......魔力って白い光してんだね」


「いんや、それも属性によって魔力の色は異なってる。

 無属性は何もないから白っぽい感じであって。

 アストレアなんかは水氷属性だか水色っぽい光が表れるはずだ」


 その言葉を聞き、ノアは興味深そうに大きく頷く。

 やはり、こういう謎やミステリーというの童心が刺激される。


 昔からだ、こういう未知の領域に刺激されるのは。

 最初こそ、子供ならではの知的好奇心かと思ったが、どうやらそうではないらしい。

 そんな目を輝かせるノアの一方で、ライカは説明を続け、


「んで、これを使うことで肉体が飛躍的に強化される。

 詳しい原理はわかんねぇけど、魔力が細胞レベルに働きをかけ、『体のリミッターを意図的に外す』? 的なことを、コエノ先生が言ってた気がした」


「体のリミッターを意図的に、か。となると、体の負担が大きそうだね」


 人間は脳によって意図的に力が百パーセントでないようリミッターがかけられている。

 それは脳が体が壊れるのを防ぐための防衛本能であり、外せるのは危機的状況のみだ。


 「火事場の馬鹿力」という言葉があるが、それに該当する。

 体が制御しきれない力を意図的に外そうというのだ。

 当然、体にかかる負荷は並大抵の物じゃないだろう。


 外したことが無いので、ノアからすれば想像することも難しいが。

 しかし、説明をするライカは実感があるようで、「そうだな」と頷き、


「実際、アタシも最初の頃は使用した後の筋肉痛は酷かった。

 慣れるまでだいぶ時間がかかったもんだ。

 だが、アストレアと戦うってんなら、最低でも魔力強化術式は出来なきゃ話にならねぇ」


 そう言って、ライカは魔力を解いた。

 直後、電源がオフになったロボットのように、彼女の体から光のラインが消える。

 綺麗だったのでもう少し見たかったノアだが、そういう理由なら仕方なし。

 それに、それを見る機会なら今からでも増やせる。

 

「まぁ、一度試してみろ」


「そうだね。やってみる」


 ライカからの指示に、ノアは頷くと、ライカと同じように両足を肩幅程度に開く。

 肘を軽く曲げ、両手の拳を軽く握った。

 その体勢を作ると、ライカが口を開き、


「よし、準備できたみたいだな。なら、まずは深呼吸だ。

 体を意識しすぎるな。とにかく最初は、体をリラックスさせろ。

 体を空気に溶かすようなイメージだ」


 アドバイス通りに、ノアはゆっくり深呼吸を開始した。

 数秒かけて鼻から空気を吸い込み、肺がゆっくり膨らみ、直後ゆっくり口から息を吐いていく。


 同時に、脳裏に浮かべるは自分の体が空気と一体化するイメージ。

 体の線が消しゴムに消されたように曖昧になり、周囲と同化していく。

 自意識が消え、ただその場に漂う無心の存在。


「っ!」


 それを一分ほど続けると、ノアの脳が体の中の妙な感覚を捉えた。

 胸の中心辺りだ。熱を帯びた光の球体がその場所に宿っている。


 鼓動する心臓と違い、それは動かない。

 その代わり、球体の中で嵐の如く力が渦巻いている。

 これが魔力、誰もが持つわけじゃないアビスを倒すための特別な力。


「ライカ、胸の辺りに強い力を感じた」


「それはお前が持つ魔力核だ。言い換えれば、魔力の心臓だな。

 んじゃ、次はその光がどう流れてるか意識しろ。

 心臓からの血液の流れをイメージすると捉えやすいはずだ」


「わかった」


 再びライカのアドバイスを受けて、ノアは自身の魔力に意識を向ける。

 荒れ狂う力に意識を向けた。俯瞰的に、自分よりも遥か大きな球体を見下ろすように。


 巨大な球体から一本の太い枝が伸びた。

 巨木の幹のようなそれは短く伸びると、その幹を半分ずつにして二つに分かれる。

 一つは上へ、一つは真っ直ぐ。頸動脈へと続く道と、左肩に続く道だ。


 左肩に伸びた魔力の道筋は、そこからさらに二つの枝絵と分かれる。

 それが左腕に続く道と、左わき腹を通る道だ。


 左腕に伸びた光は、左手まで来るとさらに五指へ、左脇に伸びた光も同様に体の細部に行き渡り、体の形に添って動いた。


 左足、腹部、右足、右脇、右腕、首、頭と体を一周するように魔力は巡る。

 ノアが魔力を認識してから体感で一分ほどで、辿っていた魔力は再び大きな一本の幹へと形を変えて胸の中心の大きな球体に戻った。


「ノア、目を開けてみろ」


 意識外からかけられるライカの声に、ノアの意識が水面へ浮上する。

 ゆっくり目を開けると、すぐに目に入った手の甲に光のラインが表れていた。

 手の甲で五指に伸びる白い光――ライカと同じ回路型のものだ。

 自己強化術式が出来ている証。


「で、出来た......!」


「あぁ、さすがノアだ。ま、アタシは最初から出来るとわかってたがな。

 ともあれ、これで第一段階は完了だな」


「第一段階? この次もあるの?」


「ノアの修行段階がって話だ。もう解いていいぞ」


「え?......うん、わかった」


 少し首を傾げながらも、ノアは言われた通り魔力を解く。

 てっきり自己強化術式を習得した今、それを使って修行をすると思っていた。

 しかし、それに反してライカは強化を解除しろと言う。


 教官の指示なので従うが、それでも少しだけ不満を感じる。

 修業期間も二週間、と決して長いわけではない。加えて、相手は格上。

 となれば、すぐにでも出来る限りのことはしておきたいというのが今の本音。


 しかしすぐに、ノアはライカの言ったことを理解した。

 その理由は、突如として全身を巡る激しい痛みだ。


「あ......あぁっ.......あ、あぁ! か、体が.......!?」


 まるで全身の至る所からバチッと高電圧の電流が流されたように、痛みが駆け抜ける。

 立てないほどではない。がしかし、動けない。もはや風を感じるのすら痛く感じる。

 そんなノアの反応に、通過儀礼とばかりにライカは苦笑して、


「自己強化術式の反動の筋肉痛だな。

 だから言っただろ? 最初は筋肉痛で酷いって。

 全身の内側から圧力をかけつつ、同時に全身の筋肉を超活性させてるんだ。

 とてもじゃないが、最初は慣れるまでに時間かかる」


「な、なるほど......ぁ、痛っ!」


「痛みになれて動けるまではしばらくそのままだな。

 言っておくが、その間の自主練はダメだぞ。

 一応、回復までの目安は考えて、二週間後に合うように調整してある。

 だから、お前は安心して休養に努めろ。わかったな?」


「お、押忍.......」


 それからノアはライカの管理下のもと、一日置きに自己強化術式を発動させた。

 その度に筋肉痛に苦しみ続け、それは早くも六日と過ぎた。


―――約一週間後


 筋肉痛にも慣れ、動けるようになったノアは次の修行に入っていた。

 場所は訓練場を離れて、森の中。

 少し開けたその場所の中央に、両手に銃を持って立ち尽くす。


「自己強化術式――解放」


 自己強化術式を使い、ノアは全身に回路を走らせる。

 服で覆われていない肌に光の筋が迸り、意識が外界へと繋がり鋭敏になる。


 風のゆらめきが、遠くで聞こえる小鳥のさえずりが、複数の草木のニオイが、自然の極彩色が、漂う大気の味が、五感の全てが理解できる。

 それが理解できるこれは、もはや第六感とすら言えるかもしれない。


 その意識の中、目線を左右に動かし、適宜に首も動かしながら周囲を見渡す。

 瞬間、周辺視野で捉えた一部の茂みから五センチほどの石が剛速球で飛んできた。


「――っ!」


 大気を突き破るそれに気づき、ノアは半身移動して躱す。

 眼前数センチ前を通り過ぎた石、飛んできた方向とは反対側の木へ向かった。


 直後、木に直撃し、大砲が直撃したような音を響かせ、幹を抉って通り過ぎ去る。

 その一秒後に、自重を支えきれなくなった木が残った幹を後方へ折り、叫び声を上げながら倒れた。


「やっぱ凄い威力......」


 そう、呟いていると、今度は背後から三つの石が飛んできた。

 その三つも先程と同じ、豪風を纏い迫ってくる。


 さきほどのであの威力だ。

 人間に当たればどうなるか、想像しなくてもわかる。

 だからこそ、当たってはいけないのは大前提で、次は躱す以外で防御しなければ。


 猛スピードで迫る三つの歪な球体を目の端で捉えると、ノアは銃口を向けて引き金を引く。

 銃口から射出された弾丸はキッチリ三発、姿をいくつも破片に変え、破壊した。


「次!」


 安堵している暇はない。今度は四方八方から飛んでくる。

 最初の一投を避け、それから射撃でもって捌き始める。


 魔力はシェナルークのおかげで潤沢にありほぼ無限であれど、体力は有限。

 必要最低限の動きで回避し、躱しきれないのを弾丸で破壊する。

 そんな修行を、ノアはかれこれ三十分は続けていた。


「音......?」


 全ての攻撃を捌き切れば、突如、空気を切るような音が近くから捉えた。

 ゴオオオオ、と大きなものが迫る音だ。

 その時、ノアの視界に影が差し込む。


「上か!」


 見上げると、そこには直径一メートルほどの岩が飛んできた。

 すぐさま上空に銃口を向けるノア。

 ただし、向けるのは右腕の一丁のみ。

 なぜなら、これを差し向けたということは、新技を試せという意味であるから。


「壊れろ」


 外しようもない目標の中、ノアは目を凝らし、僅かな凹凸の差異からウィークポイントを探す。

 そして、見つけたそこに向かって躊躇なく引き金を引いた。


 いつもより重い破裂音が鳴り響き、射出された弾丸が()()に分かれる。

 刹那、弾丸は岩を容易く砕き、バラバラになった破片は周囲へ飛び散った。


「調子は良さそうだな」


 そう言って茂みから現れたのは、教官のライカだ。

 ちなみに、さっき投げてた石や岩は、全て彼女が投げたものである。


 つまり、全方位から投げていたのも彼女であるわけだが、一体どうやっていたのか。

 非常に気になる所だ。ともあれ――、


「そうだね。でも、もうちょい改善の余地はあると思う。

 例えば、この自己強化術式(強化モード)の移行速度とか、新技弾丸の生成速度とか。

 特に、移行の速度はスムーズにやりたいかな。魔力の節約になるし」


「お前の魔力量は使い切ることあるのかって感じだけどな。

 とはいえ、その気概は大事だ。応援してる。

 それはそうと――ノア、一つ確認させてくれ」


 ライカのノアに向けていた穏やかな雰囲気が、突如消え去る。

 代わりに表れたのは、体を震わせるような緊張感だ。

 気のせいか、森が彼女に怯えるようにザワザワと枝葉を揺らしている。


 ノアの目をくぎ付けにするように、威圧する青の双眸がノアを捉える。

 そのまま全然笑っていない顔で、ライカは口角だけニコッとさせて、


「お前......自己強化術式を使って自主練してたろ」


「......すーーーっ」


 ライカにそう言われた途端、ノアはそっと目を逸らした。

 瞬間、彼女の目はさらに厳しいものになる。


「おい、なぜ目を逸らす。心当たりがあんだな?」


「いや......それは、その.......」


 鋭い圧は口よりも雄弁に「事実を吐け」と語っている。

 普段、ノアに対して怒ることは少ないライカであるが、こうなった彼女はは実に頑固で手強い。

 怒りを意図的に制御しようとして、歪な表情をする時なんかは特に。


 昔から知ってるだけに、ノアは思い付いた言い訳はすぐさま却下。

 導火線に火がついた爆弾に、自ら近づいて火炎放射器を放とうというのは自殺行為も甚だしい。

 となれば、もはや潔く白旗をあげるしかない。


「早めに慣れておきたくて.....」


「ハァ~~~、お前なぁ......」


 ノアの言葉に、ライカは喉まで出かかった炎を帯びた感情をため息で吐き出す。

 同時に見せた、頭を抱える仕草には彼女の心配が伝わってくる。

 そんな彼女を申し訳なさそうに思いつつ、ノアは尋ねる。


「ライカ......その、どうして僕が自主練してるってわかったんだ?」


「まぁ、八割カマかけたって感じだが......一応、証言もある。

 つーのも、遠くの森の方から射撃音が聞こえたとかってのを同期の奴から聞いてな。

 まさかとは思ってたけど、お前だったらやりかねないとも思って」


「それでカマをかけて見つかったマヌケが僕であると......」


 壁に耳あり障子に目ありとはこのことか。

 ライカにバレないように周囲に注意を払っていたのに。

 いや、それ以前に銃声音に気づかない自分の愚かさよ。

 自分の不注意さに自己嫌悪するノア。

 そんな幼馴染を、ライカは睨み、


「最初は動けないほどの自己強化術式を休憩なく使って、今ではピンピンして使ってるお前の回復力には驚きだがよぉ......お前の上司は誰だ?」


「ら、ライカです......」


「モゴモゴしゃべるな! お前の教育係は誰だ!?」


「ライカ教官です!」


「なら、アタシの命令は!?」


「絶対!!」


 若干言わされた感が否めないが、さりとてノアに拒否権などない。

 上司の言葉を守らず、その罰が下ったのが今なのだ。

 むしろ、言葉だけで説教を受けたとなれば、優しい方だと言っていい。

 とはいえ――、


(それも約束の為だと思って少しばかりはわかって欲しい)


 そんな女々しいことを思う幼馴染心。

 そんなノアの気持ちを知ってか知らずか、ライカは肩を諫めた。

 そして、幼馴染の顔をじーっと見つめれば、一つの命令を下す。


「ノア、明日休め。これは教育係のアタシからの命令だ。

 いいか、休みってのは修行の効率を上げるためにあるもんだ。

 特に、お前のようなストイックにやり続けるタイプにはな」


「う、うす.......」


「明日は朝のルーティンはやるな。筋トレもダメだ。

 モデルガンを触るのも禁止。触ったらどうせ動かしたくなるだろうしな」


「さすがに僕の幼馴染......わかり手が過ぎる」


「小さい頃、お前をどれだけ見て......ごほん、過ごしてきたと思ってんだ。

 ともかくだ、どこか出かける程度は許可してやる。

 息抜きをしろ以上! 返事は!」


「イエスサー!」


 ライカの凄みに当てられ、ノアはビシッと気を付けしながら敬礼をする。

 それから、ゆっくり手を下ろすと、怯えるように体を丸めながら、


「ち、ちなみに、破った場合の罰って......昔みたいにヘッドロックとかしないよね?」


 昔の恐怖を思い出し、恐る恐るとノアは聞いた。

 まだライカと分かれる小さい頃、やんちゃな彼女によくヘッドロックをされたものだ。

 そういう時は、大体ライカの意思が通らなかった時だったが。


 ともかく、当時なら子供同士の戯れで済む。

 しかし、現状でされるのは不味い。

 ただ痛いだけで済むだろうか。そんなわけがない。


 魔技が全身を活かす彼女のことだ、通常筋力が万力のようになっててもおかしくない。

 そんな戦々恐々とするノアをよそに、ライカは――


「......あ、ありかもな?」

 

「――っ!?」


 頬を少しだけ赤く染め、目を逸らしつつ、口をつぼめて答えた。

 先程の怒気が嘘のように霧散している。が、ノアはそれに気づかない。

 だって、体に染みついたあの痛みが、恐怖となって蘇ったからだ。


(なんとしてでも避けねば.....!)


 だからこそ、彼女が乗り気なことを知って、ノアは明日は絶対に修行しないと誓った。


―――翌日


 その日は日曜日であり、一般的な休日である。

 特に学生の身からすれば、一週間のご褒美と言っても過言ではない。

 しかし、ノアにとって休日という印象はあまりにも希薄だ。


 なぜなら、彼にとって平日も休日も関係なく修行時間であるから。

 一刻でも早く、特魔隊に入るために己を鍛え続けた生活。

 この無駄に長い一日を、一体どう過ごせばいいというのか。


「時間経つの遅いなぁ......」


 時は午前中、いつもなら早起きしてランニングに出かけてる時刻。

 しかし、ライカの言いつけを守っているので、ルーティンはこなせない。

 となると、その時間は一体どうやって過ごせばいいというのか。


「とりあえず、いつも見てる動画でも見るかぁ」


 ベッドの上にゴロンと寝転がり、仰向けの状態で、タブレットを横にして動画を再生。

 見ること自体は止められてないので、脳内で動きのシミュレーションを開始する。


(だぁ~~~~、試してぇ~~~~!)


 しかし、動画を見ると大抵動きを試したくなる。

 ゲームのPVを見て、早くそのゲームがやりたくなるように。

 かえって首を絞める結果になってしまい、動画の視聴を中断することを決意する。


「ハァ~~~、適当に外に出歩いて時間潰そ」


 中心地アザチ区から電車で少し移動して数分。

 隣の地区のハブヤ区にやってきていた。

 そこは中心部の次に若者が多く集まる場所であり、多くの娯楽施設がある。


 そんな場所に辿り着いたノアは、一先ずバスターミナル付近まで移動。

 そこで本部から支給されたスマートウォッチを使って、空中にマップアプリを映し出し、「時間が潰せる場所」で検索していく――と、その時、スマホの上部に通知が届いた。


『ノア、何もしてねぇだろうな?』


「信用がない.......」


 ライカからの注意喚起である。

 今日の彼女は、マークベルトの付き合いで休日返上らしい。

 特魔隊のA級ともなると、そこまで忙しいのか。

 もっとも、その代わり上司にしこたま奢ってもらう予定らしいが。


「僕もなんとかして一日を過ごさないと......ん?」


 その時、視界の端で見覚えのある人物を捉えた。

 水色のロング髪をそのままに、深めの帽子を被る少女。


 冷たい表情筋の中に凛とした美しさがある彼女には見覚えがある――アストレアだ。

 彼女もライカの時と同じで若干変装しているが、彼女よりもだいぶラフでバレバレである。


「っ!」


 その時、アストレアもノアの存在に気付いのか、バチッっと目が合った。

 そして、スタスタと近づいて来れば、すぐさま話しかけてくる。


「ノア、こんな所で何してるの?」


「教官からの指示で、休めって命令された。自主練してたので怒られてそれで。

 でも、普段休日なんて意識したことないから、どう過ごしたもんかなーと。

 一先ず娯楽施設が多いここまで来たんだけど、特に行く当てもなく......アストレアは?」


「私も似たような感じよ。ただ、私の場合は自分でオフを作った感じだけど」


 そう言うと、アストレアは腕を組み、指を顎に当てる。

 少し考えるような素振りを見せると、途端にノアを見て、


「なら、一緒に来る.....?」

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)


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