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第11話 魔技、そしてライカの上司#3

 現在、ノアはライカ、マークベルトとともに車で都市の外へ移動していた。

 一つ小さな山を越え、細い林道を抜けると、周囲には雑に整地された道が見えてくる。


 周囲には広々と草原が広がっており、所々廃棄された戦車やバイクがあった。

 たいぶ年季が入っているのか、その車体にはコケやツタが生えている。


「随分と散らかってますね」


 助手席に座り、窓から流れゆく景色を眺めながらノアは言った。

 その問いかけに、隣にいるマークベルトが答える。


「回収するコストがな。それにアビスは至るところにいるし.....ま、その内片付けるさ」


 左手をハンドル、右腕を窓枠と慣れた様子で、マークベルトは運転を続ける。

 多少段差でガコンと揺れようが、気にする素振りを見せない。

 すると今度は、後部座席にいるライカがマークベルトに話しかける。


「そういや今更だが、どうして急に実戦なんだ?

 あんたの能力を見せるだけだったら、別に移動する意味もなかっただろ」


「お前さんだって知ってるだろ? 練習と本番は違うって。

 確かに、ノアの場合は非公式だが、もうすでに本番は済ませていると思う。

 とはいえ、あれは一種の火事場の馬鹿力みたいなものだろ。

 状況が違えば、動きもまた変わるかもしれないだろ?」


「言いたいことはわかるが......」


「お前さんが、前々から『できれば戦いに加わって欲しくねぇな』ってぼやいてたのは知ってる。

 だが、本人が望んでこの世界へ来てしまった以上、もう避けられない状況にはなってんだ」


「おい、それをノアの前で言う必要があったか?」


「おっと悪い、口が滑った」


 マークベルトのわざとらしい口の滑らし方に、不機嫌に眉を寄せるライカが思いっきり足を引いた。

 今にも運転席を思いっきり蹴りそうな体勢だ。

 そんな幼馴染の暴挙に気付き、ノアが手を伸ばした。


「ちょ、ライカ落ち着いて!」


「くっ.....」


 ライカの足がゆっくり下がっていく。

 どうやら怒りよりも、幼馴染の声を優先してくれたらしい。

 恥ずかしさにカッとなりやすいのがライカの悪癖だが、とりあえず落ち着いてくれてよかった。


「お、そろそろ見えてきたぞ」


 その時、空気を悪くした張本人であるマークベルトが悪びれもせずに、フロントガラスから見える景色を見て声をかけた。

 その言葉に興味を引かれたノアは、後部座席の窓を開けると、すぐさま顔を出す。


「おぉ.....大きい.....」


 視界の先には、高い外壁に囲まれた都市があった。

 見えるのはそれこそ外壁と、わずかに顔を覗かせる一部の高層ビルのみ。


 また、外壁の正面入り口に巨大な門もある。

 ノアがその場所を来るのは初めてだ。

 しかし、そこがどういう場所であるかは知っている。


「アレが旧都市トルネラ......」


 新都市トリエスの前の栄えていた都。

 しかし、それも「怠惰」のアビス王によって奪われ、今では人も住めない廃都だ。


 それこそ、ここに入ることは特魔隊でも許可された者しか許されない。

 そんなノアの反応に、マークベルトは「あぁ、そうだ」と頷き、


「新都市トリエスから北に五キロちょっと離れた位置にある。

 加えて、『怠惰』のアビス王が来たことによって大量の人々が発狂、そして高濃度の瘴気によってそれらの人々がアビスとなっちまった場所だ」


「アビスに......?」


 気になる言葉に首を傾げるノアだったが、その答えが得られる前に門の前に到着する。

 マークベルトが車を止めると、ノアは車を降り、そして改めて入り口の巨大な門を見上げた。


 首を痛めそうなほど大きいその門、鋼鉄製で出来たそれは五メートルほどあるだろうか。

 門は全体的に錆びついていおり、中心部分は円形のカギがついている。

 さながら、銀行にある厳重なセキュリティーを施した金庫のようだ。


「まさか昨日ライカと話してた場所に来るなんて思わなかったな.....」


「それはアタシもだ。まさか早々にここに来るとはな。

 ここは『怠惰』のアビス王の根城だ。

 さすがのあんたでも許可なく入ったら罰則くらうだろ?」


「中心付近まで行かなきゃ大丈夫だ。

 どうやら相手は好戦的ではないらしいし。さすが怠惰と言うべきか。

 それにどっちにしろ、もうじきここには来ることになる。

 今回はその下見も兼ねてるってわけさ」


 意味深な発言をするマークベルトに、ライカの青瞳を覆うまぶたが狭くなる。

 その一方で、二人の会話に首を傾げるノアは、マークベルトに本題について尋ねた。


「それで、ここで僕はマークベルトさんの魔技を見せてもらえるんですか?」


「あぁ、そうだ。だがその前に、まずはここでお前さんの適正を見せてもらう」


「適正?」


「あぁ、特魔隊としての適性だ。

 そして、ここからの説明はライカに任せることにしよう」


 瞬間、仕事を振られたライカがすぐさま眉をひそめた。

 そして、その表情を維持したまま、トゲトゲした口調で返答する。


「なんでアタシが?」


「お前さんが人を導く立場になった時の練習だよ、練習。

 お前さんだって、この世界がどういう場所か嫌でもわかってんだろ?

 それに、ノアも幼馴染から教えられた内容の方が実感しやすいってもんだ。

 というわけで、やってくれ。それに、今回が初めてじゃないだろ」


「......ハァ、わかったよ。んじゃ、さっさと門を開けてくれ」


「おう、そうだな」


 門のそばに移動すると、マークベルトはそこにある操作パネルをポチポチといじる。

 その数秒後、門の中心の円がガコッとひとりでに回転し始める。

 その動きが止まると、今度は門が開き始め――旧都市トルネラへの道が開かれた。


「ノア、準備はいいか?」


「スー......ハー......うん、いいよ。行こうか」


 開いた門から流れ込む邪気と言うべき空気の淀みに、ノアは強張る体を深呼吸で落ち着かせた。

 心構えが整ってから旧都市に入ると、すぐに目につくのが廃墟と化した街並み。

 人気が無い――その言葉を表すかのように、どこもそこもボロボロだ。


 建物はヒビ割れ、半壊や全壊している。

 どこを見ても瓦礫の山ががあり、燃え尽きた車がそのままになっていた。

 そんな場所をライカが先導していく。

 その後ろにノアが続き、最後尾にマークベルトがついていった。


「ノア、特魔隊の主な仕事はわかるか?」


 ライカは周囲を見渡しながら、ノアに質問を投げかけた。

 その質問を、ノアは指を一本ずつ立て、


「えーっと、まず地方や都市に出現したアビスの撃破。

 それから、犯罪者......特に魔力を保有した犯罪者の確保。

 そして最後に、アビス王の討伐及び都市の奪還......だったような」


 発言するごとに指を伸ばし、人差し指から始まり薬指で止まった。

 その発言に、ライカは「あぁ、そうだ」と頷き、


「その認識で間違ってねぇ。

 で、ここからが本題なんだが――アビスが()()()だってことは知ってるか?」


「え......?」


 ライカの衝撃的な言葉に、ノアの足が止まる。

 背後の足音が止んだことに気付いたのかライカは振り返り、言葉を続けた。


「その様子じゃ知らなかったようだな。まぁ、無理もねぇ。

 ニュースやSNSでも情報規制されている内容だしな。

 そして、そんな裏で、アタシ達は実は人間だった存在を公的に殺してるわけだ」


「そんな.......」


「気持ちはわかる。アビスとなったとはいえ、人を殺すのはってな。

 だが、アビスとなった人間と現人間とじゃ、比べるまでもなく助けるべきは後者だ。

 もちろん、人間に戻す方法があれば別だが、そんなものがあったらとっくにやってる」


「......」


 知らなかった現実に、ノアは開いた口が塞がらなかった。

 実感がこもった説明にどんな返答をすればいいかも、何もわからなかった。

 そんなノアの表情を見て、ライカは一度閉口する。

 一つ息を吐くと、さらに言葉を続け、


「ま、気休めってわけじゃないが......全てが人間の成れの果てじゃない。

 もちろん、自然発生というパターンもある。

 だから正確に言えば、倒すアビスには人間もいるってことだ」


 ライカの言葉を聞き、ノアの顔はゆっくり沈んだ。


(知らなかった。特魔隊がそんな仕事をしていたなんて。

 それじゃ、ライカはその仕事をずっと.......)


 仕方がないとはいえ、幼馴染にずっとこの重荷を背負わせていたことに罪悪感が湧いた。

 そんな事実を知った時、ライカはきっと辛かっただろう。苦しかっただろう。


 そしてそれを知ってもなお、多くの人を助けるためには、アビスを殺さなければいけない。

 たとえそのアビスが元人間であろうとも。


(そんな僕に出来ることは......)


 ノアはそう考えながら、自らの右手を見つめた。


「......」


 一方で、思い詰めるノアを見て、ライカは眉尻を下げ、顔を背ける。

 それから、振り返って、先を歩き始めた。


「あのチャランポランが言っていた『適正』ってのはそういう意味だ。

 アビスになって姿が変わったとしても、お前は人を殺せるか......ってのを試すためのな」


―――グルルルル


「「っ!」」


 その時、周囲から獣の唸り声が聞こえてきた。

 その声に対し、ノアとライカはすぐに警戒態勢に入る。

 そんな二人の行動を、マークベルトは数メートル後方で、腕を組みながら静観の姿勢で眺めた。


「今のは......」


「来たぞ、ノア。戦闘準備だ」


 ライカの言葉に、ノアは意識を正面に向ける。

 前方の建物の陰から体長一メートルほどの小型のアビスが現れた。


 そのアビスは頭がクワガタのように二又になっている。

 また、両腕が剣になっているタイプもいれば、片腕が欠損してるタイプもいた。

 その中で総じて共通するのが――、


「人型.......」


「アビスの大きさは、基本的にアビス化した当時の大きさのままと言われている。

 といっても、アビスは大きさがバラバラなことが多いもんだから、ただの一説にすぎねぇがな」


「ってことは、アレは子供がアビス化したかもしれないってことか」


「あくまで可能性の話だ。で、どうするノア。やれるか?」


 ライカは肩越しに振り返り、ノアに意思を聞いた。

 その真意は理解している――子供を殺せるか聞いているのだ。


 小型のアビスが人間の子供の成れの果て。

 そうかもしれないし、そうでないかもしれない。

 それが確かめられない以上、問われるのは覚悟のみだ。


 右手に胸を当て、ノアはゆっくりと深呼吸する。

 心臓は衝撃の事実に激しく鼓動し、銃を握る指先が冷たくなる。


 しかしそれでも――自分の頬を手で叩き、ノアは決意を注入した。

 その決意を行動に移す前に一つだけ、


「ライカは倒したアビスが人間だとして罪を感じてる?」


「......あぁ、罪悪感はあるさ。だが、それでも前に進むと決めた。

 だから、たとえどれほど背負うことになろうとも、アタシは戦い続ける」


「そっか......」


 一度目を閉じ、それからゆっくりと目を開ける。

 真実から目を背けるような黒い瞳から全てを受け止る高潔な紅い瞳に変化した。

 宝石のように透き通る瞳は、囲むアビスを見渡していて。


 両手に銃を持つと、ノアはライカの横に並ぶ。

 右手の銃を正面のアビス一体に向けると、引き金を引いた。


 バンッと銃口から打ち出された弾丸は、小型アビスに直撃し、その体を灰のようにして空気中に消滅させる。


「なら、俺もその罪を一緒に背負うよ。二人で戦うって決めたしね」


「ノア......」


「だから、この場は俺に任せて欲しい」


 そう言うと、ノアは一歩前に出る。

 右手の銃を額に当て、もう一度目を閉じて僅かな時間ながら黙祷を捧げた。

 それが終われば目を開け、敵として目つきを鋭くさせる。


「俺の覚悟を見届けてくれ」


 瞬間、両手の銃口を前方にいる小型アビスに向けた。

 それからすぐに、人差し指にかけた引き金を引く。


 射出された弾丸が、空中を高速で移動しながら、アビスの胸に着弾。

 直後、アビスの胴体に風穴が空く。


「ギシャアア!」


 ノアが攻撃を始めた瞬間、アビス達も戦闘態勢に入った。

 大きく叫び声を上げ、小さな体を突撃させてくる。

 ノアを取り囲むと、自身の鋭い腕や、筒状の腕を向けて攻撃してきた。


「ごめんね」


 その攻撃に対し、ノアは目線を素早く動かして、全体の位置を把握。

 銃口を素早く向けると、攻撃しようとしてくるアビスに向けて優先的に射撃を始めた。


 鎧袖一触という言葉がふさわしいように、ノアの射撃スキルで、アビス達が次々と倒れていく。

 加えて、アビスに接近されても、ノアは我流とライカ直伝の特魔隊式格闘術で迎撃した。


「これでラスト」


 ものの十数秒で、ノアは十体ほどの小型アビスを殲滅した。

 地面に倒れたアビスは、その姿を粒子のように変えてその場からいなくなる。


(倒すとこんな風になるのか......)


 改めてまじまじと眺める光景に、ノアはぼんやりと思う。

 すると、ライカが近くにやってきて、先の動きに目を輝かせた様子で、


「さすがだな、ノア。アタシが教えた動きをちゃんと活かせてる。

 それはそうと、ノアのちゃんとした戦い方は初めて見た気がする。

 凄いな、あの二丁の銃を使いながらも近接戦をやる感じ」


「なんかアクション映画見てるみたいだったな」


 ライカの言葉に共感するように、後方腕組み状態で見ているマークベルトも反応した。

 そんな二人の感想を聞いたノアは、魔力を閉じて答える。


「実際、アクション映画の動きを真似てる感じですよ。

 ただの射撃じゃ心もとなくて......近接戦を取り入れた『ガン=カタ』って動きを真似たんです。

 魔力で体が軽くなったから、それに近い動きが出来てとてもいい感じです」


「いいな、それ! 俺もアニメの『ドラゴンパイレーツ』から技を取り入れてみよっかな。

 丁度、俺の動きにも華が欲しかったところだし」


「あんたはノアと違って、見た目に華がねぇから無理だ」


「えぇ~、そんな言い方ってねぇじゃん。俺もやりたい~!

 こう、シュシュシュッて感じでさ」


 右手にエアソードを持ち、マークベルトはフェンシング選手のような動きを繰り返した。

 そんな上司に対し、ライカは「ダメだコイツ」と言わんばかりの冷めた視線を送る。

 と、その時――


――グオオオオォォォ!


「「「っ!」」」


 その時、すぐ近くから大型アビスらしき咆哮が聞こえてきた。

 すぐ聞こえた声の方向を、ノアは探る。


「今の声は......」


「どうやら大型のが釣れたみたいだな。

 たぶんさっきの戦闘音が聞こえてたんだろ。

 アビスってのは知能が低ければ、音やニオイに反応して集まってくるからな」


 ライカがそう答えた数秒後。

 四足獣の大型アビスが、建物同士の間からガリガリガリと建物を壊しながら現れた。


 その大きさは軽く三メートルを超えている。

 全体的にゴツゴツした見た目で、相変わらずの黒光りボディ。

 また、ライオンのようなたてがみからは、いくつもの先の尖った鎖が宙に浮いていた。


「なんというか......ライカと一緒に戦った時もそうだけど、大きいのは本当に大きいよね」


「そうだな、何したらそんな大きくなるんだか。

 とはいえ、さすがにあの大きさの人間はいねぇだろうから、そこは安心だな」


 目の前に現れたアビスの大きさに、圧倒されるノア。

 すると、マークベルトが横からスススッと前に出た。


 そして、振り返ると、そっとノアに向かって手を差し出す。

 その行動に一瞬首を傾げるが、そういえばアビスリング借りたままだった。

 手首に通していたそれを返却すると、マークベルトは手首に通しながら、歩き出し、


「ノア、そういや俺の魔技を見てぇって言ってただろ?

 せっかくだし、コイツ相手に見せてやろうか」


「本当ですか? なら、お願いします」


「オーケー。んじゃ、絶対に目を離すなよ?

 ま、目を離さなくても気づけないだろうがな。

 じゃ、手を叩いたら始めるぜ。

 で、もう一度叩いたら終わりの合図だ」


 そう言って、ノアの方へ体を向け、マークベルトは両手を肩幅程度に広げた。

 直後、大型アビスが無防備なマークベルトに気付き、巨躯を突進させてくる。


 全身を使ったタックルは大気の壁を破るような豪風を纏っており、それに気づいたノアはすぐさま叫んだ。


「マークベルトさん、危ない――」


「はい――終わり~」


 マークが「はい」と言ったタイミングで手を叩いた直後、ノアは目の前の光景に目を剥いた。


 なぜなら、襲い掛かってきていた大型アビスが、いつの間にか近くの建物に頭を突っ込んだまま、動かなくなっているからだ。


 マークベルトの位置は変わりなく、見逃したとか、視界がブレたとかでは説明がつかない超常現象。

 それから数秒後には、アビスの全身が粒子となって消えていく。死んだ証だ。

 つまり――、


「やっぱり、マークベルトさんの魔技って『時間停止』なんですね」


 サラッと答えるノアに、マークベルトは「やるなぁ」と頷き、


「そ、それが俺の魔技。名を『時間を司る者(タイムキーパー)』と言う。

 俺は任意で相手の時間を止め、そして一度触れるか俺が魔技を解除しないと相手は動けない。

 また、相手には止まっているという認識もない」


「最強じゃないですか.......」


「そんな便利でもないのよ。強すぎる能力には、大きなデメリットもつきものってな。

 例えば、俺の止められる時間は相手の魔力抵抗値に依存するし、一体に使うだけでも魔力をドカ食い。

 だから、そこそこの抵抗値で数が複数いると、それだけでもう厄介......ってね」


「なるほど、そんなもんなんですね......」


「だから、案外ライカのようなシンプル魔技の方が良かったりするんだよ。

 ま、これが隣の芝生は青く見えるってやつなんだろうけど」


――グオオオオォォォォ


 マークベルトと会話をしていると、再び大きな声が聞こえてきた。

 そして現れたのは、先ほどと同じ大型アビス。

 その姿を見た瞬間、マークベルトは嫌そうな顔をした。


「うわぁ、またか......こうなると俺はだいぶ嫌になるね。

 俺の魔技は超短期決戦用だから」


「なら、僕が――」


 そう言いかけた時、ノアの横を颯爽と一人の少女が追い抜いた。

 その水色髪の少女は、風のように疾走し、あっという間に大型アビスの頭部にむかって跳躍。


氷針(ひばり)


 周囲に氷の刃を展開させ、少女は一斉にそれらを大型アビスの胴体へ突き刺した。

 さらに巨大な頭部に着地すると、右手のレイピアを頭頂部に向かってぶっ刺す。


 刺した箇所から氷が発生し、瞬く間に顔全体を覆い――一拍、氷の彫刻となった頭頂部が落ち、地面に直撃して砕け散った。

 その一連の流れで大型アビスはあっという間に倒れ、大気に溶ける。


「あの子は......」


 そのあまりの鮮やかな手腕に、ノアは思わず見惚れた。

 無駄のない軽やかな身のこなし。

 そして大型アビスを瞬時に倒してしまうほどの力量。

 容姿も相まってとてもキレイだ。


(あれ? あの子どこかで見たような.....あ)


 そしてすぐに思い出す――転入初日に自分をじっと見てきた少女だ、と。

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)


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