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第1話 覚醒、そして物語は始まりを告げる#1

 ノア=フォーレリアは困惑した。

 乾く口内がやたらに唾液を飲む好意を繰り返し、怖気に背筋が寒くなる。


 圧迫感と緊張感に体は強張り、額から出る冷や汗が眉尻を通って頬まで伝う。

 今、人類の脅威に直面している――そう、激しく感じさせる。


 目の前に広がるは豪華で荘厳なつくりの王の間。

 両側の壁際に立ち並ぶ、無機質で人の気配がない鉄の人形が槍を持って並ぶ光景。

 そして、視線の先の玉座にいる圧倒的オーラを放つ存在がこの異空間を作り出していた。


 その存在は小柄であり、影か闇かに覆われていてシルエット的にかろうじて人型に見える。

 姿勢から推測するに、ひざ掛けに頬杖を突き、足を組んで見下ろしているだろう。


 闇が形を持っていたのなら、きっとこんな形をしていた。

 その闇に心を見透かされているのだから、体の震えが止まらない。

 闇に宿る高潔な紅い瞳がノアを視線で射抜き、嘲笑じみた口を開くと、


「ようやく来たか。待ちくたびれたぞ」


 一言。闇のただ一言で、反射的に跪き、ノアは顔を伏せる。

 少年のような声色なのに、発する言葉が、纏う雰囲気が針で串刺しにするように自分の立場を決定づける。


 巨大な闇に体の身動きが封じられているようで、息苦しい。

 目がチカチカする。手が冷たい。視野が狭くなる。

 そして――、


(――僕は相手よりもはるか格下だ)


 そう、確信させられる。

 そう、承知させられる。

 そう、理解させられる。

 理屈ではない。


 生物が持つ生存本能というべき警告が脳の意思を無視して認めるのだ。

 アレは、目の前の怪物は、人間が手に負える存在じゃないと。


「殊勝な心がけだな、愚民」


 また一言、決して嬉しくない誉め言葉に心が安堵させられる。

 自分の立場を理解し、精神が相手に屈している証だ。

 でも、それでも、ノアは忘れてはいけない。

 幼馴染との約束を、自分の夢を。


(アビス王を倒す)


 目の前の存在を殺すために、精神の奥の奥までは折れてはいけない。

 だからこそ、一度、波立つ精神を静めるために状況整理しよう。


 どうしてこうなったのか、直前まで何をしていたのか。

 そう、確か、あの時は――


*****


『なぁ、全部倒そうぜ......アビスをさ』


 街並みが眼下に広がる小高い崖の上。

 心地よい風が吹き抜け、幼馴染の少女――ライカの外ハネした黄色髪が揺れる。


 ハキハキとしたしゃべりを裏付けるように、ライカは胸を張った姿勢で街を眺めた。

 自分達が守ることになる街を。今はまだ、守れる力はないけど。


 傍ら、気高く立つ少女に目を奪われるノアに、ライカは意思の強い青色の双眸を向け、


『そうすりゃもう、アタシ達みたいに悲しい思いをしないで済む人がいなくなる……だろ?』


 ニカッと不敵な笑みを浮かべるライカに、ノアは目を奪われた。

 その瞳には熱があった。心を震わせるような、訴えかけてくるような熱が。

 ぽぉっと頬を赤らめ、ノアは大きく頷く。


『うん、僕もライカと同じ意見だよ。それじゃ、約束だね。

 僕達は特魔隊に入って全てのアビスを、そしてアビス王を倒す』


 その夢は、この世界からすればあまりにも無謀で、無理で、無茶苦茶な発言だった。

 周りの大人が聞けば、冗談で吹き飛ばすか、鼻で笑うかのどちらかだろう。

 少なくとも真面目に取り合う人間など皆無と言っていい。


『あぁ、そうだな。約束だ!』


 しかし、目の前にいるライカは笑わない。いや、違う。ライカは笑う。

 笑うが、それは決して誇大妄想な夢をバカにするものではない。

 同じ夢を目指す者同士として、嬉しさに笑みを深めるのだ。


―――四月某日(約束から約十一年後)


 ピピピと、静寂な室内に目覚ましの音が響き渡る。

 意識は深海から海面まで浮かび上がり、聴覚が先に窓越しに聞こえる小鳥のさえずりを捉えた。


「......朝か」


 重たいまぶたをゆっくり上げるノア。が、すぐに目を細めた。

 カーテンの隙間から差し込む光が、目元に降り注いでいたのだ。

 それが覚醒に拍車をかける。


「眩しい.....」


 手で光を遮り、小さくあくびをしながら、ノアは重たい上半身を起こした。

 低血圧のせいかボーッとし、意識が上手く働かない。

 そんな中でも絶えず脳裏に紡がれる言葉。


「またあの夢だ......」


 十一年ほど前にも遡る、幼馴染の少女と交わした約束であり、叶えると誓った夢。

 夢で見たライカの顔、声、そして約束だけは今でも鮮明に思い出せる。

 あの時の約束が、全ての始まりだった。


「よっこらせ」


 脳全体が活性化し始めると、ノアはベッドから起き上がった。

 それから、洗面台に向かって顔を洗い、次に歯を磨く。

 瞬間、ふと、正面の鏡に映る自分と目が合った。


 そこいるのは、黒髪黒目の年齢にしては幼い顔立ちした男子。

 身長は百六三センチと、高校一年男子の平均身長しては小柄な体格。

 また、筋肉はあまりつかなかったせいか、体の線は全体的に細い。


「......鍛えてきたはずなのにな」


 自分の体を見てぼやきつつ、しかし実に今更な話だ。

 鍛えても鍛えてもずっとこんな感じなのだから。

 もう十年も経てば、見た目の諦めもつくというもので。


 だから、ノアに言葉よりも大して気にした様子もない。

 いつもの愚痴が終われば、今度はお着替えタイムだ。

 ただし、着替えるのは制服ではなく、着慣れた運動服。

 最後に、太陽の髪飾りを前髪につければ準備完了だ。


「行ってきます」


 自分以外誰もいない空間に一声かけ、玄関のドアをガチャリと開けた。


「――ふぅー、さっぱりした~」


 一時間後、日課のランニングから帰って来たノアはシャワーを浴びてさっぱりとし、次にリビングへ移動する。


 頭に乗せたタオルを小刻みに動かしつつ、ソファの前にあるローテーブルに置かれたリモコンをサッと手に取ると、テレビの電源を入れた。

 瞬間、真っ黒だった画面に朝のニュース番組が映し出される。


『昨日、都市トリエスの中央区にて追悼式が行われました。

 中央区に現れたアビス王の一体シェナルーク=スペルビア――通称『傲慢のアビス王』が倒されてから早十六年。

 そのアビスとの戦いによって、多くの民間人や特殊魔力戦術部隊の隊員が亡くなりました』


 ニュースキャスターが発するその内容に、ノアは目が吸い寄せられた。

 画面に流れたのは十六年前の戦火に包まれた都市の映像だ。


 地面にまるで隕石が衝突したかのような巨大なクレーターがある。

 その周囲、衝撃の余波であろうものにより大小様々な建物が瓦礫の山へ変えた姿。

 それが戦いの激しさを物語っていた。


 画面に映るのは何も瓦礫だけではない。

 炎や氷、雷、風、土、光、影など様々な特殊技能を使って黒色の異形と戦う隊員達。

 常人の力では易々と生み出せない光景が続く映像であり、悲劇と希望の戦い。


 その被害規模は、自然災害とはまた異なる。

 それがアビスとの戦い――はるか昔から今もなお続く人類の存亡をかけた戦いだ。

 そして、十六年前の事件は過去の歴史から見ても、とりわけ大きな戦いだった。


『その追悼式には多くの著名人が出席し、そしてギリウス=ウィルバート作戦指揮総督が、英雄オルガ=フォーレリア隊員に感謝の意を伝えました』


 オルガ=フォーレリア――十六年前に「傲慢」のアビス王にトドメを刺した人物。

 そう、父親である。ノアの偉大な父は英雄としてこの世を去った。


 そんな人物の血が、体に半分流れている。

 にもかかわらず、ノアには肝心なものが欠落していた。


 アビスと戦うために、約束を果たすために、そして夢を叶えるために必要な極めて大事な力が。

 それがあれば、今頃こうして、こんな場所に居なかっただろう。 


「.....さっさと朝食の準備して学校行こ」


 嘆きや悔しさがこみ上げ、拳を握りそうになる。

 しかし、それよりも先にリモコンに手を伸ばし、電源ボタンを押して映像を黒く塗りつぶす。

 それから、弱さから目を背けるようにテレビから目を逸らすと、キッチンへ移動した。



―――放課後


 ビルに囲まれたスクランブル交差点。

 多くの人が各々の目的のために肩がぶつかりそうな距離感で往来し、大気を震わせる雑多な声を通わせる。


 そんな中を歩き、手で庇を作りながら、憎々しく太陽を睨むのはノアだ。

 四月の始めにもかかわらず、傾く太陽は容赦なく日差しを浴びせてくる。


「暑い......」


 ブレザーを着ているノアは、暑そうに襟元を摘まんではパタパタと上下させた。

 大胆に第二ボタンまで開けているが、風があまり吹かないので仕方なく風を生み出すいかないのだ。


 そんな人工風を機械的な動作で作り出しながら、ノアは何かを探すように視線を巡らせた。


「確か、ここら辺にコンビニがあったはず......あ、あった」


 見つけたのは、駅前のコンビニだ。

 多くの人が出入りするそこへ向かう理由は一つ――今週発売の「月刊特魔隊」を買いに行くことだ。

 

 月刊特魔隊とは、特殊魔力戦術部隊――通称「特魔隊」が発行している「特魔隊」という組織をよく知ってもらうための雑誌であり、ノアはその愛読者だ。


 そして今回に限って言えば、その雑誌の特集女性ファイターを読むことが目的である。

 なぜなら、今回の特集には幼馴染のインタビュー記事が書かれているからだ。


「お、これだ」


 コンビニに入ると、すぐさま雑誌コーナーの位置を見つけるために首を巡らした。

 そして、見つけた雑誌コーナーに立ち寄り、ノアは見つけた雑誌を素早く手に取る。

 ついでに飲み物も購入すると、次に向かったのは犬の銅像がある駅前広場だ。


 多くの人が待ち合わせに使うその像の周りには、花壇に沿って円を描くようにベンチが設置されている。

 運よくそこの空いている席に座ると、飲み物を片手に、早速雑誌を読み始めた――その時だった。


『緊急警報。緊急警報。高濃度の瘴気汚染を確認。

 アビスゲートが開きます。この場にいる方は、速やかにこの場から離れてください。

 繰り返します。この場にいる方は、速やかにこの場から離れてください』


 広場にあるスピーカーから、けたたましいサイレンの音が鳴り響く。

 同時に、周囲に呼び掛けるようなアナウンスが流れた。


 普段流れることのないアナウンスであり、「警報」という言葉に、広場は一瞬音を無くしたように静まり返り、静寂がその場を支配した。


―――ティロンティロン♪


「っ!」


 直後、ノアが持っていたスマホからも「緊急アビスゲート速報」の通知が届く。

 あらゆる人々に、突然危険が現れたことを知らせていた。


「え、何? 警報、え、ホント?」

「おい、アビスゲート警報だってよ。ここやべぇんじゃねぇの?」

「特魔隊は何やってんだよ」

「早くここから避難した方がいいんじゃねぇのか?」


 その警告音と音声に、その場にいた全員が、息を合わせたようにガヤガヤと騒ぎ始める。

 不安と緊張の空気が、瞬く間にその場を奪い取る。

 突然の警報に人々が困惑で戸惑う中、その瞬間はあっという間に訪れた。


―――パキッ


 薄氷がヒビ割れるような音が近くから聞こえた。

 音の発生源へと、ノアは視線を向ける。

 犬の銅像の真上辺りの空中に、縦五メートルほどの亀裂が走っていた。

 それは現在進行形で広がり続け、いつ破られてもおかしくない。


「逃げろおおおおぉぉぉぉ!!!」


 瞬間、一つの大きな声が響き渡った。

 誰の声かはわからない。しかし、そんなことどうでもよかった。

 なぜなら、確かめるまでも無く全員の気持ちは一つであり、叫び散らし、走り出す。


 その声に合わせ、すぐに逃げようとノアもベンチから立ち上がろうとした。

 しかし、目の前を走る人に邪魔されて身動きが取れない。


(これは不味い......)


 違う、動けないのは、自分だけではなかった。

 多くの人が集まっていたその場は、おしくらまんじゅうのようになっている。

 誰もが我先にと動き出した結果だ。最悪の二次被害が発生している。


「グアアア......」


 そうこうしているうちに、目を縦に置いたような門――アビスゲートが現れた。

 そのゲートから眦から涙を流すように、黒い霧のようなものが漏れ出す。


 直後、割れ目に、唸り声とともに指の少ない真っ黒な手がかかった。

 そこから、全身真っ黒でどこか金属光沢を帯びた人型の、異形な存在が現れた。


 ――アビスだ。


 五百年前から人類を苦しめる暴力の怪物。

 普通の銃火器が効かなければ、近くにいるだけで精神を犯す恐れがある厄介な存在。

 それが我が物顔で、街を支配せんと大量に出てきた。


「嫌ああああ! 助けてー!」

「うわああああぁぁぁぁ!」

「う、腕が........ぐああああ!」


 それら怪物が逃げ惑う人々を襲ったり、近くの建造物を破壊したりと、好き勝手暴れ始める。

 当然、ノアの目の前でも人が刺殺された。噛み殺された。推し潰された。


 阿鼻叫喚の声が轟き、グロ注意のゲームよりもグロい光景が眼前に広がる。

 吐き気を催す、血と鉄のニオイに鼻が犯される。


「に、逃げなきゃ......!」


 現実離れしたしその光景に、ノアの鼓動は急激に速くなった。

 目の前の平和が壊された光景に体が強張り、自然と震えた足が走り出す。

 今の自分はただの一般人だ。出来ることは、我が身可愛さに逃げ出すことだけ。


「うぇぇぇぇん! ママー!......ぐすん、どこー?」


 恐怖する声、泣き叫ぶ声、断末魔の声と、色々な声が入り乱れる中――ノアは確かに聞いた。

 年端もいってないだろう幼女が、見失った母親を求めて泣き叫んでいる声を。


「――っ!?」


 振り返れば、ぬいぐるみを片手に泣いて立ち尽くす幼女がいた。

 また、その近くには獣型のアビスがいる。


 便宜上、「獣アビス」とするが、大きさはパッと見で三メートル。

 大型のクマを彷彿とさせるが、見た目は野犬に近い。

 幼女の泣き声を聞きつけ、その怪物は幼女へと顔を向けた。


「不味い! 泣き声に反応している! どうする!?」


 凄惨な光景が脳裏に過り、余裕がないノアの脳にさらに負荷がかかる。

 一瞬の逡巡すらも全て言葉に吐き出され、体が硬直した。


 今にも幼女が獣アビスに襲われそうになっている。緊急事態だ。

 思考をしている暇はない。

 一秒でも判断に遅れれば、幼女は確実に死ぬだろう。


『アタシ達みたいに、悲しい思いをしないで済む人がいなくなる……だろ?』


 その時、夢で見た幼馴染の言葉を思い出す。

 試されている気がした――約束はまだ覚えているか、と。

 この状況で、もし、自分が子供の頃に描いた理想の自分ならどう動くべきか。


 武器が無い。だから助けられない? そんなはずはない。

 大事なのは、たとえ蛮勇でも、踏み出せる一歩があるかどうか。

 そして、理想の自分は迷わず、カッコよく、理不尽に抗っていた。


「僕は.....ライカとの約束を叶えるんだろ!」


 震える足を叱咤し、体を反転、ノアの足は強く地面を蹴った。

 半ば衝動的とも言える行動であったかもしれない。

 しかし、約束を果たすためにずっとこういう場面を想定して、鍛え続けてきたのだ。


「不味い!」


 獣アビスが幼女へと近づき、トラばさみで出来た頭で挟もうとしている。

 それを受けた大人が体を真っ二つにされたほどの威力だ。


 大人が助からない攻撃に、子供が助かるはずがない。

 幼女までの距離は残り二メートル。

 走っていたでは間に合わない。


「間に合えぇぇぇ!」


 瞬間、ノアは意を決して飛び込んだ。

 ガキンッと、金属が激しく噛み合う甲高い音が鳴る。


「――っ!」


 空気を震わせる衝撃に、ノアはわずかに息を詰めた。

 とはいえ、その勇気ある行動は、結果から言えば、幼女を救った。


 彼女に向けられた攻撃は、ノアがタックル気味に抱え込んだことで躱すことに成功したのだ。

 ブレザーの袖が少し持ってかれるだけで済んだので、スーパーラッキーと言える。


 幼女を抱きかかえたまま、ゴロゴロと地面を転がるノア。

 やがて、ベンチに背中を打ちつけて止まった。

 鈍痛が背中を通して内臓に響く。


「痛っつ......大丈夫?」


 一瞬引きつった顔をするも、ノアはすぐに笑みを作って幼女に声をかけた。

 幼女が腕の中でコクリと頷くのを見て、ホッと息を吐く。


 しかし、まだ心の底から安堵できる状況ではない。

 なぜなら、現状命が十数秒伸びただけに過ぎないからだ。


「グルルルル」


 目の前、先ほど攻撃を仕掛けてきた獣アビスがいる。

 また、その怪物は、虎視眈々と自分達の命を狙っている。

 完全にロックオンされた以上、死ぬまで追いかけられるだろう。


「くっ、僕に魔力さえあれば......っ!」


 ノアからこぼれた嘆きの声。

 悔しさに奥歯を噛みしめることしかできない。

 それこそ、今だけなら恐怖よりも悔しさが勝ってるぐらいだ。

 自分が戦えるなら、今頃、幼女がこんな恐怖に遭うことはなかっただろう。


「ママぁ......」

 

 目に涙を浮かべ、制服にしがみつて幼女を見て、ノアはハッと我に返る。

 この状況でやることは、己の能力不足を嘆くことじゃない。

 例え、自分が死のうとも少女を助けることだ。


「大丈夫、僕が必ず助けるから」


 幼女に引きつった笑みを向けると、ノアはゆっくり立ち上がった。

 周囲に視線だけを飛ばし、逃げ道を探す。

 しかし、どこもそこもアビスばかりだ。


「お兄ちゃん!」


 その瞬間、ノアの肩から顔を出す幼女が指さし、ノアを呼んだ。

 小さな指先が差す方向は、自分の背後。

 咄嗟に振り返ると、そこには両手が剣のアビスがいた。

 便宜上、「剣アビス」は、もうすでに腕を振りかぶっている。

 避けるには、あまりにも時間が足りなさすぎる。


「しまっ――」


「邪魔だ、クソ野郎!」


 その時、聞き覚えのある声とともに、見覚えのある黄色い髪をした少女が剣アビスを吹き飛ばした。


 さらにその少女は、目にも止まらぬ速さで動き、すぐ近くにいた獣アビスも一撃で吹き飛ばす。


「大丈夫か?」


 周囲を確認しながら近づく少女に、衝撃と懐かしさを同時に味わったノアは不意に名前を口にする。


「ライカ......」


「あ? アタシのこと知って......ノアか?」


 ノアを助けたのは、夢の中よりも成長した幼馴染の少女――ライカ=オルガノスが目を剥いた。

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)


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