プロローグ
「……さい………中森…輝さん……!!…………中森直輝さん起きなさいって言ってるでしょぉ!!」
そのような声が聞こえたかと思うと、右頬に強烈な衝撃を受けた。
目を開けるとそこには、ピンク色の髪に薄紫の瞳、緑のドレス……ワンピース?を着ており右手に扇子を持っている女性が立っていた。ついでに言うと胸もでかい。
意識が戻り頭がまだ追い付いていない俺に彼女は告げる
「中森直輝さん。あなたはお亡くなりになりました。」
……この女性は何を言っているのだろうか。俺はそう思った。
そもそもこの女性は意識の無かった俺の右頬におそらく裏拳のかたちで、しかも扇子で殴ったのだ。
そんなことをされて黙っている俺ではない。
「いやいや!!俺がお亡くなりになった?!死んだってこと?!さっき右頬に思いっきり衝撃を受けたんですけど?!死んでたら痛みとか感じないっていうのがお約束でしょ?!っていうか、初対面でスヤスヤ寝ている人に裏拳かますってどういう神経してんだよ?!」
女性は少し驚いたように見えたが、すぐに澄ました顔に戻り、
「私が!何度も何度も!何っっっっっっっ度も!!呼んでるの起きないアンタが悪いんでしょ!!だいたいね、アナタがもうちょっと、結構まともな生活をしていたら私だってここまでイライラしなかったわよ!!」
そこまで言うとスッキリしたのか少し、本当に少しドヤって見下すような目で見てきた。
というか、まともな生活?この女性は俺の生活を知っているようだ。もしかしたらこの女はストーカーなのではないだろうか。
…いや、おそらく違う。現実にこんな髪色で緑のワンピースを着て扇子を持っている人間など見たことがないからだ。そこで初めてこの女性に対して疑問を持った。
「その言い方からして俺の生活を見てたってことだよな。おまえ何?ストーカーじゃないよな。そんな派手な格好の女性見たことがないしな」
女性は俺の反応を見て呆れたかのような表情を見せた。
「状況からして解らないかしら。アンタは亡くなったって言ったわよね。それにアンタの生活を見てたとも言ったわよね。その時点で気付かないかしら?」
そう勿体つけて彼女は教えてくれた。
「私の名前は【ペチュニア】 天使のペチュニアよ」
天使…確かにそう言った。…が、俺の想像していた天使とは見た目が全然ちがう。
「天使って…あの天使だよな。フラ〇ダースの犬に出てくるような。でも俺が想像してたのはラッパを吹きながら降りてくる裸の天使なんだけど」
「いや、私は女性よ?そんな裸で動き回るわけないじゃない。それともいつもパソコンばかり見てるから、頭の中はそういう妄想しかできなくなってしまったのかしら」
そう言いながら口元へ手を持っていき笑う…そぶりをしながらニヤニヤしている。ペチュニアはどうやら相当性格が腐っているようだ。とっとと話を切り上げて俺が天国なのか地獄なのか聞いてしまおう。
「じゃあもう何でもいいから、俺が天国行きなのか地獄行きなのか教えてくれよ。天使ならそういうのわかったりするんだろ」
「そうね~じゃあ、あなたは私と一緒に異世界行きよ」
「……………は?」
異世界…それは俺のようなヒキニートだけではない。この世に生を受けた者なら誰しも行ってみたい!そう思ったことのあるものだろう。俺はその異世界に行き第2の人生を歩めるということなのか!
………ん?今この女なんて言った。私と一緒に?
「ちょっと聞いてもいいか」
「なに?」
「今。私と一緒にって言ったか?」
「ええ。言ったけどそれが何か?それじゃそろそろ異世界の話でも…」
「ちょっっっっっっっと待てやぁぁぁぁぁ!!!」
俺はここ最近で初の大声を出した。
「何よ!うるさいわね!急に叫ばないでくれるかしら!」
「そりゃあ叫ぶわ!俺が死んで異世界に行く!それはいい!もう涙が出るくらいいい!だがしかし!お前が俺に付いてくるってどういうことだよ!俺は異世界に行ってもお前の話し相手にならないといけないのか?!」
「なっ!何よ!天使の中でもカワイイ私が一緒に行ってくれるんだから嬉しいでしょ!こんな機会アンタの一生の中でもあるかどうかのことよ!あ!一生終わってるんだったわね!プップー!!」
「そんな返答望んでないわ!なんでお前も一緒に来るんだって聞いてんの!」
「そういうルールなのよ!18歳から22歳の男女は死後異世界へ転生する権利。通称【異世界転生権】を持つことができるのよ。アンタはその権利があるから転生できるの。その権利が有効の間、人ひとりひとりに天使が付くのよ。そしてその人が亡くなった時に異世界へ行くかどうか決めさせてそれに天使も同行するの。どうせアンタはネトゲばっかしてたんだから、もちろん行くんでしょ?異世界」
「当たり前だろ!でもお前も来るのか」
「言っておくけどね天使がいると良いこともあるのよ。例えば、天使ひとりひとりに能力があってそれを転生者。つまりアンタに使用してくれたりするの。怪我したら癒したりね」
それは非常に便利なのではないだろうか。天使の能力がランダムだとしたら賭けになるが。
「いいな。それ」
「でしょ?感謝しなさいよね!」
「でもお前の能力が癒すかどうかわからないだろ」
「ペチュニアっていう花を知ってるかしら?」
「お前自分の名前を花につけてるの?」
「ペチュニアの花言葉はね【心のやすらぎ】なのよ。つまり私の能力は癒すで間違いないわ!」
これは勝ち確なのでは?怪我したコイツに癒してもらえば…いろいろ節約できるだろ!
「よし!お前ついてこい!」
「だから付いていくんだって!何よいきなり手のひら返して」
「何でもいいだろ!ほら早く転生してくれよ!転生したら何から始めるんだ!?スライム倒すのか?それともギルドに入ってモンスター狩りか!」
「向こうのことは行ってみないとわからないわね。あと転生者はアンタ以外にもいるからね」
「……マジ?オレ人と話すの苦手なんだけど」
「ひとりひとりに天使が付くって言ったでしょ?他にも若くして亡くなった人なんてたくさんいるのよ。自ら命を絶つ人もいるし。悲しいけどね。」
少し空気が重くなった。が、ペチュニアはまた声を高くして話し始めた
「ま。辛気臭いのはいいのよ!ここからはアンタに能力を持っていくか。持って行かないか決めてもらうわ」
「能力もって行けるのか?!」
「ええ。ただしこれにもルールがあるわ。能力を持っていくなら向こうでは一切他の能力を習得することはできない。でも能力を持って行かないなら、向こうのどんな能力でもアンタの努力次第で習得できるわ」
能力を持っていくか。持って行かないか。そんなの決まっている。
「持っていくに決まってんだろ!それに持っていく能力も決めてるぜ!」
「どんな能力を持っていく!」
「【転移】だ!」
「どんな能力なの?」
「いわゆるテレポートだ!ワープできる奴は強いって相場は決まってるからな!それにテレポートさえ出来れば俺は死なずに済んだはずだからな」
「…まぁ…オーケーよ!」
一瞬ペチュニアの顔が歪んだ気がするが、気のせいだろう。気のせいだ!
「それじゃあ!行くわよ!」
「おう!」
ペチュニアの声に答えると地面が光り始め、俺たちを包んでいく。
俺の異世界ライフがとうとう始まる。
この能力で、どんな奴に会い、どんな冒険をするのか楽しみにしていた俺の心は転生後どん底へ突き落されることになる。




