絢爛の殺し屋⑥
みんなは夜ご飯を食べ終え、各々部屋に戻っていった。
「食器は俺が洗うから、二人はタオルで拭いてくれるか?」
「わかった」
「了解なのです!」
二人は一生懸命食器を拭いている。
「初めての料理はどうだった?」
「悪くない」
「楽しかったのです!」
「そうか、それはよかった」
改めて言うが、本当に二人は殺し屋なのだろうか?
確かに武器は持っていたが、それだけである。
何か確認する方法は無いものか……。
俺が必死に考えていると、スラから連絡が入った。
俺は二人にバレないように、隠れながら小さな声で会話した。
「スラ、どうしたんだ?」
「うむ。誰かわからぬ女性がマンションの前に来ておる。
管理人として対応してくるのだ」
「おう……よく分からんが行ってくる」
こうして通信は終わった。
「お二人さん、ちょっと急用できちゃったから席外すね」
「問題ない」
「任せろなのです!」
少し心配だが管理人が本業である以上、対応しない訳にはいかない。
なにも起こりませんように……。
俺はマンションの外に向かった。
「マンションにお客さん……ねぇ……。
一体どんな人なんだ……?」
俺が外に出ると、ソワソワして落ち着かない様子の黒髪の女性が立っていた。
パッと見ではあるが、ただの人間にしか見えない。
体格、見た目から想像するに……三十前半くらいってところか。
「あの〜、すみません。何かご用ですかね?」
「あ、あの〜……ここに……ここに……二人の殺し屋がいると思うのですが!」
「え、なんで知ってんの〜!」
「実はあの子たち、私の子どもなんです。
あ、申し遅れました。私はエミーと申します。
あの子たち、いつもどこかへ行ってしまうので服にGPSを付けておいたんです」
「それでこのマンションに……。
て、まさか……エミーさんも殺し屋なんですか!」
「いえいえ、違います。
そもそもあの二人、大きな勘違いをしているんです」
「と、いいますと?」
「すみません。まずはあの子たちに会いたいのですが……よろしいですか?」
「あ、それもそうですね。
二人は十六階にいるので、俺が案内しますね」
「ありがとうございます」
俺はエミーさんをエレベーターに乗せ、十六階へ向かった。
その道中……。
「あの二人、今日ハンバーグ作ったんですよ。
それもめっちゃ美味しいハンバーグを」
「え、あの子たちがですか!……私も食べたかったです」
やっぱりあの二人が料理出来たのは、すごい進歩だったんだな……。
そんなこんなで十六階に着いた。
「着きました。この中に二人が……」
俺を待ち受けていたのは、とにかく泡だらけのキッチンだった。
「あ、夢! これはカプラがやったんだ!
断じて私は何もしていない!」
「いやいや、夢さん! 元はと言えば、スポンジに洗剤をつけすぎたラプスが悪いのです!」
「なんだと?」
「なんなのです?」
二人の間にバチバチと火花が散っているのが見える。
そんな二人にエミーさんが話しかける。
「ラプス! カプラ! どこに行ってたの! 探したのよ!」
「この声は……母上!」
「お母様なのです!」
「もう……心配したじゃない!」
エミーはカプラとラプスを抱きしめた。
本当に母親だったんだな、でも……全く似てない!
この穏やかそうな人から、あんなに騒がしいやつが……?
まあ考えても答えは出ないし、や〜めた。
「あの、エミーさん。さっき言ってた大きな勘違いっていうのは?」
「そう、それね。
実はこの子たち……殺し屋じゃなくておろし屋なの!」
「な、なんだってぇぇぇえ!」