初めまして女神様②
十分間ほどで片付けを終えたあと俺は声をかけた。
「それで女神様……この後はどうされるご予定でしょうか?」
「え?」
スラとイムに抱きつかれ、床に寝転がっている女神様。
その姿はとても美しいが、到底女神様とは思えないだらけようである。
このままだと、ずっと女神様が居座る激レアマンションが誕生してしまう。
もしバレたら街中の噂になり、俺の平和な管理人生活が……失われるかもしれない!
「あの〜女神様……このままだとクルル様にバレてしまうのでは?」
クルル様がどういう人かは知らんか、多分すごい人なはず。
しかも秘密にしてと言っていたし、頼むどうか届いてくれ……。
「はっ! それもそうね……」
女神様はスラとイムを横にずらし、ゆっくりと起き上がった。
「では、私はこれで失礼するわね」
「え〜もう行っちゃうんですかぁ?」
「我のそばを離れてはならぬ」
「お二人さんわがまま言わないの。
必ずまた遊びに来るわ」
「約束ですよ」
「約束を違えることは許さぬぞ」
「はいはい、心得ておりますよ。
それじゃあお世話になったわね、管理人さん」
「はい!」
俺か瞬きをする一瞬の間に女神様は姿を消した。
たった一時間ほどだったが、とても貴重な経験をすることが出来た。
場所は天界に移る。
「はぁ、美味しかった」
「ナンダ、ズイブントシアワセソウナカオヲシテイルナ」
「あら、死神さん。
生きていらっしゃったのですね」
「トウゼンダ。ワレヲナメルナ」
「うふふ。それでクルルはまだ戻っていないのかい?」
「アア、ツギニダステガミヲカイテイルトカ」
「あら、頑張り屋さんなところも可愛らしいわね」
「フン、オヤバカメ」
そう言い残し、死神は黒い霧の中に消えていった。
女神ユキノはそのまま眠りについた。
ここで場所はマンションに戻る。
「ねえ夢さん」
「ん? どうした……って、え!
イムさん、どうしてそんなに怖い顔をされているのでしょうか……」
イムがすごい剣幕で俺を睨んでいる。
「当然です。
あんなに綺麗な女神様と知り合いだなんて、一体どういうことですか?」
イムが迫ってくる。
「待て待て。信じてもらえないかもしれないが、俺も今日初めて会ったんだよ」
信じて貰えなければ、速攻逃げる。
さあ、どちらに転ぶか……。
「な〜んだ、そうだったんですね。
やっぱり夢さんが女神様と知り合いだなんておかしいですもんね」
あははははと笑うイム。
なんだか少しバカにされている気分だ。
「じゃあ俺はもう部屋に戻るからな」
「はい、お疲れ様でした!」
スラはまだ床に寝転がっている。
異世界にはこんな常識外れの日もあるらしい。
これからは毎日、気を引き締めて生活しようと思う。
「よし、まだ昼だけどおやすみなさい」
やがて夕方になり、部屋の物音で目が覚めた。
「ふわぁ〜。結構眠ってたみたいだな。
さて、夜ご飯でも作りに行こうかな」
俺が体を起こそうとすると、手が何かに引っかかっており起き上がることが出来なかった。
手を左右に動かしてみると、カチャカチャと金属がぶつかるような音が聞こえる。
「ん? なんの音だ?」
俺が自分の手の方を見ると、ベッドに鎖で繋がれた手錠が俺の手にかけられていた。
「おいおい待て待て、急展開すぎるだろ!
こんなふざけたことするやつと言えば……まさかキース!?
ここまでメンヘラだったとは、気づかなかった」
手錠を外すことを早急に諦めた俺は、再びベッドに寝転がった。
すると隣の部屋から誰か歩いてくる。
「あ、キースか? これ外してくれよ」
寝るためにカーテンを閉め切っていたため、相手の顔がよく見えないが俺の頭はキースだと判断した。
その時パチッとスイッチを押す音が聞こえ、部屋の電気がついた。
「眩しっ!」
徐々に視界が開け、目の前にいる誰かの顔が見えてきた。
「そうそう。小さなナイフに、黄色メインの体に黒斑点があって……ってお前誰だ!」
「私は殺し屋。依頼を受けたため、お前の命を頂戴する」
猟豹人のようなその女の子は片手に小さなナイフを持ち、俺の前に立っている。
黄色の髪はとても短く、小柄な体格だ。
「ラプス! この部屋に金目の物はなかったのです!」
「バカかお前は!
名前を知られた殺し屋はその時点で始末対象だ」
「ごめんなさい……ごめんなさ〜い!
うわぁぁぁあん……ごめんなさ〜い」
「おい、泣くんじゃない!」
遅れて現れ泣きじゃくるその子もまた、小柄な体格の女の子のようだ。
その女の子は、首に小さな蛇を巻いている。
褐色の肌に、短めな茶色の髪。
この子もまた殺し屋なのだろうか。
というか……気を引き締めようと言ったばかりなのに、なんでこうなるの〜!




