学校の嫌われ者⑥
それからCクラスは、他クラスを超える賑やかなクラスへと成長した。
お互いに助け合い、支え合うとても良いクラスだ。
もちろんメルもクラスに馴染み、とても楽しそうに毎日を過ごしている。
これでもう問題を解決出来たことだし、もうすぐ学校を去ることになるだろう。
随分短い学校生活だったな。
そして感傷に浸る間もなく、その時はやってきた。
「え〜それでは、これで本日の授業を終わります。
そしてみなさんにご報告があります」
「え〜なになに!」
「先生教えて!」
クラスのみんながざわついている。
そういえば、俺が中学生の頃同じような空気になったことがある。
その時は担任の先生が結婚するとかだったっけ。
こういう時ってなんかワクワクする。
先生は少し真剣な顔になり、こういった。
「今日で鹿島夢さん、スラさん、イムさん、ソフィさん、キースさん、ヴェントスさん、水月さんが卒業します」
「え……」
突然の報告に驚くメル。
まあ無理もないだろう。
俺たちだって、自分の意思で卒業していく訳では無いのだから。
先生は手招きで俺たちを前の方へと呼んだ。
「というわけで卒業することになりました。
短い間でしたが、お世話になりました」
「お世話になりました」
俺に続き、みんなは頭を下げた。
「みなさん拍手で送り出しましょう」
大きな拍手の音に背中を押されるように、俺たちは教室を後にした。
下駄箱へ移動した俺たちにいつも通りの日常が帰ってくる。
「いや〜、学校楽しかったな!」
「そうね、少し若返ったようだわ」
学校生活に満足そうな水月とソフィ。
「我はこれを普段着にしようと思う」
「スラお姉様がそうするなら私もそうします!」
制服を私服にしようとするスラとイム。
「私算数を教える先生になってみたいです!」
「ならヴェントスは算数で、私は国語」
先生に憧れを抱いたヴェントスとキース。
こんなに短い学校生活もみんなにとって、かけがえのない大切な思い出になったようだ。
「じゃあ帰ろっか、俺たちのマンションに」
「はい!」
「今そなた、かっこつけておったな」
「あらあら、それは言わない約束よ」
「俺はかっこいいと思ったぜ、親友」
「私もかっこいいと思いましたよ!」
「夢はいつもかっこいい」
「お前たちうるさぁぁい!」
俺たちはマンションへと歩き始めた……と言いたいところだが、とある女の子に呼び止められた。
「あのっ! あの……その……えーっと……私もみなさんとマンションに住みたいです!」
この声はメルだ。
まあこうなるだろうとは思っていたが、とても重要なことが二つある。
今までこのマンションに入ってきた住人は一人だった。
でもメルは違う。
「家族には相談したのか?」
「それなんですけど……」
「ん?」
「家族も一緒に住んでもいいですかね?」
「あらあら、マンションっぽいわね」
確かにこれは初めてのパターンだ。
正直部屋数も埋まるし、ぜひ住んでもらいたいところだ。
でも、もう一つ聞いておかなければならない。
「家族は住んでもらって構わない。
でもそうなると、学校はやめるのか?
せっかく出来た友達を失ってまで、メルはマンションに住みたいのか?」
さすがにメルも即答できないようだ。
「わかっただろ。
もうこの話は無かったことに……」
「ちょっと待った〜!」
「この声はスラ!?」
「ふっふっふ。
我が作りあげた最新作、ワープゲートである!」
そこには、いかにもワープ出来ますと言わんばかりの大きな扉があった。
「これで問題解決である。
メルよ、我ら一同歓迎するぞ!」
「ありがとうございます」
メルは一五二号室に住むことになった。
一人暮らしが夢だったらしく、メルの母、父は隣の一五三号室に住んでいる。
両親はメルに似て髪が紫色でとても綺麗だ。
特に母の髪は腰ぐらいまである。
それにしても家族が住むことになるなんて、本格的にマンションって感じがする。
さらに、キースもメルに便乗し一人暮らしを始めることになった。
部屋は一七二号室、俺の隣だ。
あれ?
そういえば今回もスラにいい所を取られたような……。
「まあいっか」
俺が眠りについたあと、マンションは元いた場所へと移動を始めた。