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異世界マンションの管理人  作者: ゆざめ
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学校の嫌われ者②

 俺とキースはすぐに飛び出し、二人の男に飛びかかった、

 俺は授業で習った蛙がけを使い、動きを封じた。

 キースは持ち前の力強さで無理やり押さえ込んだ。

 近くで見ると、鬣犬人(ハイエナ)のようだ。


「てめえ、何しやがんだ!」


「離せよ! おいふざけんな!」


「お前たち、女の子に手をあげておいてその態度はないだろ。少しは相手の気持ちを考えろ」


「本当に許せない」


 二人に反省する様子は全くなく、ただひたすら抜け出そうともがき続けている。

 それにしても初めて見る顔だな。

 Cクラスの人でないなら、この二人はいったい……。


「お前たちは何クラスだ」


「はぁ? お前に答えるわけねえだろ」


 俺の質問は全く持って意味がなかった。

 しかし、キースがさらに力を強めたことで素直に話してくれた。

 恐ろしいJKである。


「わかった、わかったから緩めてくれ。

 俺とクレファはBクラスだ」


「Bクラスの人間が、どうしてCクラスの女の子に関わる必要がある? 無視すればいいだろ」


「それは違うぜ。

 スカンクはおならを武器にするだろ?

 もし学校でされたらたまったもんじゃねえ」


 確かにスカンクはおならを武器に、自らの身を守る動物だ。

 だが、果たしてこの世界にそんな常識が通用するのだろうか。

 そんなことを考えていると、メルの声が聞こえた。


「あ……私のお弁当が……」


 メルの視線の先に、紫色のお弁当箱が逆さ向きで落ちている。

 俺はその姿を見て、ブチギレそうになった。


「てめえの名前はなんだ?」


「だからお前に教えるわけねえだろ」


 相変わらず態度の変わらない男に対して、俺はポケットから通信用スライムを取り出した。


「これは毒入りスライムだ。

 今から三秒後にこいつをお前の体に流し込む」


「お、おい。待てよ……冗談だろ?」


「3……2……1……」


「言うから止めてくれ! サファルだよ、サファル。

 これでいいだろ」


 いい感じにはったりが効いた。


「そうか……サファルって言うのか。

 今度は俺なんかよりもっと怖い人連れてきてあげるからね」


 そう言って俺はサファルを解放した。

 キースもクレファを解放した。

 そしてすぐにメルの元へ駆け寄った。


「メル、大丈夫か?」


「気にしないで……いつものことだから……」


 強がるメルの瞳から、涙がこぼれ落ちた。

 そんなメルにキースが声をかけた。


「メルちゃん初めまして。私はキース、実は吸血鬼なの」


「え……」


 まあ当然そういう反応になるだろう。

 世間的に吸血鬼は迫害を受け、絶滅したと思われているのだから。


「私も酷い扱いを受けてきたし、あなたの気持ちもわかってあげられると思う。

 だから、困っているなら相談して欲しいな」


 キースはメルに手を差し伸べた。

 そしてメルはその手を取った。


「私のお弁当半分こしよっか」


「いいの?」


「うん、もちろん」


 似た境遇を持つ二人だからこそ分かり合える。

 困っている人に最も必要なのは、支えてくれる誰かなのかもしれない。

 メルとキースは美味しそうにお弁当を食べている。


「この玉子焼きすごく美味しい!

 キースさんが作ったの?」


「キースさんって他人みたい」


「なら……キースちゃんが作ったの?」


「違うよ。そこにいる夢が作ったやつだよ」


「へぇ〜、お料理上手なんだね!」


 眩しい笑顔に見つめられ、思わず照れてしまった。

 笑うとこんなに可愛いのかよ。


「そんなことないって」


「あ、夢照れてる!」


 キースが言葉にしたことで本格的に照れてしまった。

 メルはその様子を見て笑っている。

 誰だって自由に笑いたいはずなのに、人は自分と違う誰かを否定しようとする。

 そんな時支えになってくれるのが友達だと、二人を見ていて思った。


「もしかしてCクラスのみんなも、メルのおならが危ないって思っているのかな?」


「ねえ夢、女の子におならおならって良くないよ」


「確かに。

 別に悪気があって言ったわけじゃないんだ、ごめん」


「悪い人じゃないのは分かってるから大丈夫だよ。

 それより多分夢くんの言う通りだと思う」


 夢くんって最高かよ!

 これは絶対に助けてあげよう。


「それなら俺に一つ作戦があるんだけど、今夜うちのマンションに来ない?」


 ……。

 あれ、俺今もしかしてとんでもないことを言っちゃったのでは。

 メルは恥ずかしくさで顔を真っ赤に、キースは怒りで顔を真っ赤にしている。


「夢!」


「はい!」


「今のは聞き捨てならない」


「俺も言ってから気づきました。

 本当に申し訳ございませんでした」


 俺はすぐに間違いを訂正し、改めて今夜マンションに来てもらうことになった。

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