いい男に憧れて
みんなはいい男、いい女に憧れたことはないだろうか。
もちろん、俺はある。
だからこそたくさんの修行を積んだ。
俺が作ったいい男の条件五ヶ条を紹介する。
その一、圧倒的な決断力。
例えば、ファミレスを例にあげよう。
席に案内してくれる店員さんに
「五秒間待ってください」
と声をかけ、メニューを三秒間見つめる。
そして、こういう!
「このハンバーグを一つ、ドリンクバーを一つ、以上です」
これがいい男。
即時即決。
その二、優しい。
これは俺がそもそも優しいから割愛させていただく。
その三、清潔感。
これも俺は清潔感の塊であるから割愛。
その四、いつも自分に素直。
またまたこれも割愛。
その五、料理が出来る。
これは苦難の連続だった。
時には涙を流すこともあった。(玉ねぎの話である)
だが、俺はとにかくやり続けた。
継続は力なりは本物だ。
見つけてしまったのだ、禁断のアイテム。
その名をレシピという。
見た物の心を取り込み、その通りに作らせる。
そして食べたらあら不思議。
美味しい料理が出来ているというもの。
これがいい男になるためにした努力の話だ。
それでは話を戻そう。
今俺はキッチンにいる。
リビングには床に座ったソフィ。
いい男を見せつける絶好のチャンスという訳だ。
でもなんだろう、すでに熱い視線を向けられている気がする。
まあ気にすることでは無い。
今回作るのはチャーハンだ。
使う材料は、玉子、ごはん、玉ねぎ、ウインナー、長ネギ、しょうゆ、塩コショウ。
そしてみんな驚くでないぞ、まさか異世界にまで進出しているとは思わなかった。
鶏がらスープの素。
てか今更だけど、普通に話せてるし食文化も対して変わらない。
服も今のままで特に違和感は無い。
まあいっか。
早速作っていく。
長ネギをみじん切りにし、中火に熱したフライパンに油をひく。
そして炒める。
長ネギがしんなりしてきたら、先に溶き卵をごはんにかけ作ったたまごかけごはんを入れて炒める。
ここからは強火。
調味料を入れ馴染むまで炒める。
いい感じにパラパラになったらいっちょ上がり!
あとはそれっぽくお玉で盛り付けて。
「どうぞ、チャーハンになります。
お召し上がりください」
提供する。
「あら、美味しそう。しかも手際がいいのね。
それじゃあいただくわ」
パクッ。
口に入れてすぐ、ソフィの体がプルプルと震え出した。
「え、大丈夫?」
少し時間が経ち、ソフィが口を開いた。
「美味しい~!」
目がハートになっている!
これもマンガやアニメあるあるだ。
俺としたことが見落としていた。
「私って部屋汚いじゃん?」
「はい」
「私って食材とか買わないじゃん?」
「はい」
「私って料理とかしたことないじゃん?」
「はい」
「人が作った料理なんていつぶりかしら」
とても表情が柔らかくなった気がする。
「なんかいいな。
夫婦ってこんな感じなのかな?」
ふと出た言葉にソフィが顔を真っ赤にしている。
もちろん夢は、そんなことに気づいていない。
ここでマル秘情報を公開する。
ソフィの好きなタイプは、男らしい人である。
とある瞬間だけ、恋愛対象として見られていることなど、微塵も気づかない俺であった。