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異世界マンションの管理人  作者: ゆざめ
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いざ森の中へ

 最近日課になったことがある。

 それはみんながスラとイムの部屋に集まり、朝ごはんを食べるというものだ。


 朝ごはんを作るのも管理人の仕事の一つだ。

 焼いた2枚の食パンにバター、ハム、きゅうりを挟む。

 そして出来上がったものを対角線に切る。

 これこそサンドイッチだ。

 簡単に作れて安い、定番の朝ごはんだ。


「お前ら出来たぞ〜」


「私持ってくよ」


「お、おう」


 あれからというもの、キースの事をまともに見ることが未だ出来ていない。

 一方キースは、前と比べてより距離を詰めてきている気がする。


「それじゃあ……せ〜の」


「いっただきま〜す!」


 まあ仲が悪いよりはよっぽどマシか。

 そしてここからが毎度毎度大変なのである。


「う〜ん、美味しい!

 イムの弟子にしてあげてもいいくらいです」


「本当に美味しいわ。

 私をお嫁にどうかしら?」


「我のものにしてやっても良いぞ!」


「みんなダメだってば!

 夢は私と一緒にいたいの!」


 一体なんだ、この幸せな修羅場は。

 ただ俺は誰の気持ちにも答えられない。

 だって俺は、一ヶ月後に死んでしまうのかもしれないから。


「みんな冗談はいいから、話を聞いてくれ」


「わかった」


 なんかやけに素直だな。

 まあ俺としてはすごく助かるのだが。


「クルルから手紙が届いた。

 中にはこう書かれていた。

『次は森の中に飛ぶと思う』

 と。

 みんな外を見てみろ」


 スラが手元に置いてあったリモコンのボタンを押すと、部屋の壁が上下に開いた。

 そこにあったのは、自由に草木が生い茂るこれぞ森って感じの世界だった。


「本当に移動するとは、クルルさんって何者なのかしら」


 さすがソフィだ。

 この場にいる誰よりも反応が早い。


「それは分からない。

 でも俺は一つの仮説を立てた。

 このマンションは困っている人を助けるために存在しているのではないか……と」


「ということは前回砂漠でキースさんを拾ったのも、このマンションが関係してるってことになりますよね?」


「そうだ。

 だから多分、キースと出会った直後にマンションが戻ったんだと思う。

 これなら辻褄が合う」


「ほうほう。

 つまり、森の中に助けを求める誰かがいるということになるわけだな!」


「そうだ。

 スラにしては頭が良くまわっているじゃないか」


「むむむ。

 我を侮辱する気か?」


 スラが手に謎のボタンを持ち、俺を見て笑っている。

 さすがに怖すぎる。


「まあいい。

 とりあえずみんなで森の中を探しに行こう」


「了解しました! 夢隊長!」


 やけにテンションが高いイムに、俺は少し動揺した。

 でもイムの気持ちもすごくわかる。

 今からみんなで冒険に行くみたいでわくわくする。


 でも俺はみんなに秘密を作ってしまった。

 一ヶ月後に死ぬと、手紙に書かれていたことについて。

 俺が暗い顔をしているとキースがこちらをじーっと見つめてきた。


「キースどうした?」


「なんか夢、顔怖いよ」


「気にすんな。

 みんな無事にってお願いしてただけだから」


「ふーん。

 ならよかった!」


 俺たちは一度解散し、三十分後に再び集まることになった。

 前回は俺一人で砂漠に行った。

 でも今回は違う。

 みんなで行くんだ、いざ森の中へ!

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