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「勇者パーティ掲示板の仕事」

申し訳ない、言い忘れていたことがあった。


俺が転生した異世界でも、職業という概念がある。


まあ、当然ではある。


労働に見合った対価が支払われるのは労働の基本。


それはこの世界においても変わらないのである。


この世界の職業で憧れの職業といえば勇者、魔法使い、武闘家、というものが挙げられる。


多くの人から名声を受けやすい仕事ではある。


勇者パーティというのは、転生前の世界のバンドみたいな人気があるように感じられる。


全てのバンドが人気があるわけではなく、インディーズは知名度がそこそこであるように、勇者パーティにも知名度の差がある。


分かりやすく大きな活動をしている勇者パーティは多くの市民に尊敬され、支持を受けている。


しかし、数日前に俺が出会った大食い勇者パーティはそうでもなかった。


といっても、それなりに魔族を倒したりと知っている人は彼らの功績を知っているらしい。


この世界では勇者パーティの大きな活躍は掲示板に記される。


その掲示板に大きく掲載されているのはやはり、魔王との戦いを控えた勇者パーティである。


それに、村人たちも彼らの活躍を聞きたがっている。


元の世界のメジャーバンドに多くいるファンのようなものかもしれない。


この間の変な勇者パーティは一応掲示板に載っているがそこまで大きな見出しではない。


確かに彼らはボスのような存在の魔物を倒しているわけではない。


けれども、田舎の村をチンピラ魔族の手から解放したりと地道に活動を続けているため、彼らを感謝したり、支持している人々はいる。


メジャー勇者パーティに比べると数が少ないだけで、インディーズ勇者パーティにもファンはいるのだ。


そして、満を持して発表する俺の職業。


俺の職業はなんと…


勇者パーティの掲示板の更新業務。


この仕事はそれぞれの村に1人か2人の職員がいるらしく、うちの村は俺とユージンという青年の二人。


「なあノマール」


掲示板を更新していると、暇そうなユージンが話しかけてきた。


あ、ノマールというのは転生後の俺の名前。


「なに?」


「俺さ、ウィズちゃんに愛の告白をしようと思ってる」


ウィズちゃんとは大人気勇者パーティの魔法使いの女の子で、ユージンはその子にメロメロで、いつも彼女の魅力を俺に語ってくる。


半年近く一緒に働いていて思うが、ユージンは決して悪いやつではないが、ウィズちゃんの良さを語ってくる時本当にウザい。


「またそれかよ」


「また、とはなんだよー

ずっと悩んでるんだよー」


「そもそもお前、そのウィズちゃんと仲良くしてないじゃん」


「はあ?してるし!

ウィズちゃん俺が話しかけたら笑顔で受け答えしてくれるし!」


「俺としては、ウィズちゃんちょっと困ってるような顔してる印象だけどな」


「そんなわけないだろ!

お前ウィズちゃんの何知ってんだよー!」


き、極めてうざい…!

ウィズちゃんのことなんて何も知らねーよ…


なんて会話をしていると、数日前の変な勇者パーティに出くわした。

この人たち、この辺にやるべきことでもあるのか?


そう思っていたら。


「おや、キミは確かパスタのお店の…」


あのイケメンにイケメンボイス。

あのイケメンくんは確か…


「あー、こないだの。こんにちは」


こういう時の挨拶の仕方に自信がないので、

当たり障りのない挨拶をしておいた。


「こ、こんにちは…」


お、モデルみたいな女の子もいるじゃないか!


「どうもー」


こんな感じの挨拶でどうだ?


ユージンみたいに露骨に好意を相手にぶつけて困惑させたくはないので、無難に挨拶した。


すると、彼女は会釈をしてくれた。

神対応だ!普通に嬉しい。


掲示板の情報によると、この子はソーダさん。

職業は剣士とのことで、彼女が剣を構えている様を想像してみた。


手足がすらっとしているから映えること間違いなし。


「キミ、もしかして掲示板の仕事の人なのー?」


魔法使いのマーホさんが質問してきたので

肯定の意味を込めて頷いておいた。


「まさか、また会うとはな。奇遇だな」


「まあ、基本この村にいるので…

ところで、あなた方こそまたこの村に?」


勇者パーティの功績は資料で送られてくるんだけど、それぞれの勇者パーティについての詳細は意外と分からないのがこの仕事。


こんなこと聞くのは失礼かな、と思いながらも聞いてみた。


「ん?ああ、隣町に俺たちの拠点があってな」


「隣町って言うと、イナカッカ街に?」


「その通りだ。

イナカッカは住宅街だからお店があまりなくてな。

それに、先週は遠出をしていたから休暇をな」


「へー。

休暇なのに皆で出かけるなんて仲良いんですね」


「ふん、まあな」


彼らは主にこの周辺地域の平和維持に貢献しているのは一昨日くらいから掲示板を通して把握していたが、

この周辺にベースキャンプがあるのは知らなかった。


ソーダちゃんとはそんなに遠くない距離か…。


転生前、元カノが就職の関係で遠くに引っ越すことになったと同時に別れを切り出されたことから、遠距離恋愛に少し抵抗があったため、これは嬉し…


いやいや、何を考えているんだ俺は。


モブキャラとして普通に生きていく宣言をしたことを忘れていた。


ソーダちゃんと親密に慣れたとしても、その時点で俺はサブキャラになりかねない。


サブキャラになったら平和に暮らせるか分からない。


せっかく転生できてこの生活にも馴染んだのに、また死んじゃったらどうするんだ。


なんて悩んでいると、勇者であるイーケン君のお腹の音が鳴った。


「ふむ、腹が減ったな。さあ、飯に行くぞ」


「おーいいねー!行こ行こー」


「ええっ…大盛りは勘弁ですよ…」


「ふむ、いいだろう。

それじゃ…あー…」


「あ、ノマールです」


イーケン君は俺の名前が分からなさそうだったので、

名乗っておいた。正解だったか?


「そうか、ノマールという名前なのか。

それではノマールよ、また会おう」


イーケン君とマーホさんは俺に手を振って去った。

後に続いて、ソーダちゃんも俺に手を振ってくれた。


二人に合わせて手を振ったのか、ちょっとぎこちなくてかわいかった。


イーケン君たちが知っていくと、ユージンが話しかけてきた。


「アイツら、誰だ?」


「掲示板に載ってる勇者パーティだよ」


「はー?知らないぞー?」


そう言ってユージンはあの会話の途中で俺が完成させた今日の掲示板に目を通した。


「あ!コイツらか!」


ユージンは誰か分かったところで俺にニヤニヤしながらこう聞いてきた。


「で、お前。どっちの子が好きなんだよ」


「はあ?なんでそんな話になるんだよ!」


「隠すなよ〜ノマールく〜ん」


嫌な呼び方をしてくる。ウザい…


「お前、あいつらがいなくなったあと、

デレデレした顔してたぞー? 」


「なっ…!」


まずい。顔に出てしまっていたか…


「それで、どっちなんだよー」


ウィズちゃんへのダル絡みも該当するが、

コイツはとにかくしつこい。


「マーホちゃんかー?」


「いや…」


「じゃあソーダちゃんなんだな?」


「…あ、いや…」


しまった、キョドってしまった!

まずいぞ!正解だと言ったも同然だ!


「そうかそうかー!あの背の高い方か!

お前はああいう子が好みなんだなー!」


知られてしまった…これは言い逃れできない…


「俺とウィズちゃんみたいにうまくいくといいなー!」


「あー、もう!うるさい!

てかお前の妄想と一緒にすんなよ!!」


「なんだとこのー!」


この無駄なやり取りは、10分以上続いた。

最新話です。たのしんで。


あ、それとキャラの名前が決まりました。

モブキャラになりたい主人公:ノマール君。

転生前は普田通也(ふだとおや)


ノマールが惚れたっぽい剣士の女の子:ソーダ(ソードじゃないよ)


インディーズ勇者パーティのイケメン勇者:イーケン(イーケメン!)


インディーズ勇者パーティの魔法使い:マーホ


ノマールの勇者パーティ掲示板更新業務の同期:ユージン(友人)


ユージンにダル絡み(惚れられてる)人気勇者パーティの魔法使いの女の子:ウィズ(ウィザード的なね)

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