愛しい公爵令嬢を断罪させられる話
「君との婚約を破棄する。俺は真実の愛を見つけた!」
謁見の間で私は、婚約者であるエリーにそう伝えた。
「さようでございますか、承知いたしました」
エリーは、毅然とした態度で言ってその場を去ろうとした。
「待て、話はまだ終わってない」と俺は呼び止める。
「なんでございましょう?」
「お前の罪を認めてからだ!公爵令嬢でありながら、聖女に対する数々の悪事、何事もなく済むと思っているのか!」
私は、彼女に向かって叫んだ。
何だこれは。何が起こっている。体の自由がきかない。さらに言葉も私の意志とは関係なく出てくる。
「私が聖女に対して何をしたと?」
「平然を装っても無駄だ。学園での数々の嫌がらせに留まらず、先日の毒殺未遂。貴様の罪は万死に値するが、正式な裁判を受けねば、何人も罰することはできん。結果は決まり切っているが、裁判を待つがいい!」
待ってくれ。私は愛しいエリーに何を言っているんだ。何故止まらない。何故、エリーにあんなに暗い表情をさせなければならないのか。
「私は身に覚えがありませんが?」
「はっ!よくもそんなことが!」
「エリザベス様!どうか罪をお認めください!そうすればっ!罪はきっと軽くなります!」
私が糾弾する声に続いて、私に抱き着きながら、ピンク色の少女が叫ぶ。
確か、フォイエルバッハ男爵家令嬢のエミーリアだったか。半年ほど前に聖協会から聖女認定された少女だ。
私は何故か、この聖女認定された少女と一緒にエリーを糾弾している。
いけない。このままでは、エリーが裁判にかけられてしまう。
しかし、私が口を開けば大声での断罪の言葉しか出てこない。何故だ。こんなことは私は望んでいない。
30分ほど、エリーを糾弾しつづけ、何故か命令もしていない、私の近侍たちが証拠や証言を披露し続ける。
結果、エリーの裁判が開始し、エリーは修道院に追放されることとなり、さらに半年後、火事でなくなったそうだ。
私はあの日以来3年間も、私の言葉を話したことがない。口を開けばエリーへの呪いの言葉とエミーリアを称賛する言葉。
何故か、王の不興を買うこともなく、王太子であった兄が行方不明となり、第二王子であった私がいつの間にか、王太子となっている。
今日もエミーリアは言う。
「スチルゲット!」
「さて、これでコンプリートかな?次は誰のルートにしようかなー」
いつになれば私は自分の意志で話せるようになるのか。私は考えるのを止めつつある。