ep.4 運命なんてぶち破れ!!
リゼッタに会って数日、私の考え方も変わってきた気がする。
まず神の娘であるリゼッタには歌に力をのせることが出来るらしい。
癒しや破壊など言葉によって違ってくるそうだ。
私の持っていた石板を見せると容易く詠み謳ってみせた。
その石板とは歴史に残る最古のもので、数千年前―太陽の女神クロノアが実在したとされる時代のものだ。
彼女の話を聞いて彼女の力を見て私はひとつの結論に至る。
神の娘とはもしかすると【タイヨウ】の…クロノアの生まれ変わりなのかも知れない。
――――流浪の猫クロエ
「一緒に逃げよう」
嘘だと思った。でも嘘なら殺してやろうと思った。
思い返せば昔から罵られることはあっても優しくされたことはない。
崇められることはあってもそれは自分ではなくてよかったと再確認するためであり、なにかにすがらなければ生きていけないから。
人間と獣族。
互いに優劣をつけようと戦を起こすけれども彼らの間に大した差はない。
それを口にすれば大人は怒るけど。
自分たちの無力さを認めたくないだけなのにね
だからこんな大人にならないと誓って、でも大人になるまで生きれないと知って、何もかもがどうでもよくなった。
だから、最後の悪あがきのつもりだった。
逃げ切れれば僕の勝ち。
捕まれば彼らの勝ち。
自分で作った簡単なルールだけれど命懸けだった。
無理だとわかっていても、納得できるほど大人じゃないから。
神殿からは絶対に逃げ切れないから月に一度、教会で唄う日に窓から逃げ出した。
はじめはただ一目だけでもセカイを見てみたかった。
でも出逢ってしまった。
もしもハロルドが彼らみたいに僕を蔑んでくれれば未練がましく遠くに逃げようなんて考えなかった。
一緒にって言う言葉を言われたのもはじめてで、迷いながらも彼の手を取った僕はやっぱりまだ生きたかったみたいだ。
だからこう言葉を返した。
「喜んで」
目を合わせ互いに微笑んだ。
これが僕にとって希望の選択か絶望の選択なのか
まだなにも知らなかった。
ただこの時だけは幸せだと思えたから…
人物紹介 ハロルド 狼族。本来黄色の瞳をもつはずだが青い瞳をもって生まれたため異端と呼ばれる。まだ作中書かれてないがウルフカットの黒髪。