ep.2 僕は…優しささえ知らない
出逢いは別れの始まりだと人は言う
ならば、別れの先にあるものはなんだと言うのか。
そもそも本当の別れとは死そのものを表すのだろうか。
そこで私は疑問に思う。
セカイに存在する全ての【奇跡】を起こす力を持つ。
と言われる私には死したものを蘇らせる力はない。
ならばその死した者たちの魂はどこに行くのだろうか。
そこで私は手がかりを見つけた。
白い猫耳、白い髪に金の瞳をもつ少女を。
おそらく彼女は…
――――流浪の猫クロエ
額にナイフを突きつけたまま目を見開き動かない目の前の人物は僕と同じ異端だと気づいた。
人間の男とネオの女から産まれたハーフである僕は間違いなく異端だった。
本来銀の髪をもつネオから産まれるのはどんな血が混ざろうとも銀の髪の子供が産まれるはずだった。
けれども僕は白い髪をもつ。
そして目の前の彼もまた青い瞳に黒の髪―そして、狼の耳。
狼族は月と同じ黄色の目をもつはずなのに…彼の瞳は青い。
「……お前…何者だ?」
固まったまま動かなかった彼は冷酷な目で見下したままナイフを持つ手に力を入れる。
あと少し動かせば僕はこの世からいなくなる。
でも怖くはない。
「……なぜ怖がらない?」
目を合わせて怯える様子のない僕に疑問をもったのか彼は問いかける。
怖くないよ
だって…
「この世で一番怖いものを知っているから」
怪訝そうに眉にしわをよせ、わからないとでも言うように目で語りかけてきた。
「…わからない?…なら、教えてあげるよ
僕が怖いのはね…
――裏切り」
体に負う傷よりも心に負う傷のほうが痛いんだ。
――化け物
――お前なんかイラナイんだよ
――あんたなんて産まなければよかった!!
目を閉じれば、思い出すのは軽蔑の目、憎悪に染まる目。
ネオでも人間でもない。
たかがそれだけで僕は……
優しさを知らない…