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4-6 裕太は誰のもの?

 週末、遊園地へやってきた。


「到着ー。どこから回ろっか」

「そりゃあもちろん……」


 息の揃った夏音、乃愛、すみれが挙げた場所は……


「観覧車」「ジェットコースター」「お化け屋敷」


 バラバラじゃねぇか。


「私、絶叫系はちょっと……」

「私だって怖いのは……」

「私も高いのは苦手です」


 おい、こら。まとまり無さすぎだろ。


「まあまあ、皆さん落ち着いて。こんなこともあろうかとあたしがいいものを持ってきましたぞ」

「いいもの?」

「じゃじゃーん!古き良きくじ引きでーす。これ引いて順番に裕太くんと2人きりで行きたいところに行ってらっしゃーい」


 もう、俺に拒否権が云々はどうでもいい。しかし、新たな問題が発生している。


「なぜくじが4本あるんだ?」

「オレの分だろ」

「正解っ」

「正解っじゃねぇだろ。なんで詩音と2人で回らなきゃいけないんだよ」

「えぇー、いいじゃーん。面白そうだし」

「あぁ、もう好きにしろ」


 詩音にそっちの気があるのかと日々疑ってしまう。前に直接聞いたところ男は恋愛対象ではないそうだ。そして、好きなのは女の子だが自分が1番可愛いと思っているらしくほとんどの女子が恋愛対象から外れている模様。

 つまり、こいつが俺にばっかり構っているのは、ただのちょっかいである。


 厳正なるくじの結果、最初に回るのは……


「あの、俺もあまり絶叫系は得意ではないんだけど」

「裕太は男の子でしょ。シャキッとしなさいな」

「……はい」

「それじゃあ、レッツゴー」


 俺たちは係員の人に荷物を預けてシートに座り安全バーを下ろして……


「ねぇ、裕太」

「ん、どうした?」


 コースターは徐々に高さを増していく。もう少しで頂上だ。


「おい、乃愛。言いたいことあるなら早く」

「私、やっぱり無理かもしれない」

「もっと早く気づけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」


 俺の言葉を遮るようにしてコースターは急降下する。

 無だ。心を無にしていればすぐに終わる。

 一緒に乗っている他の客が「キャー」など楽しそうな、中には本当に恐怖の叫びをあげる中、乃愛からは声が聞こえない。

 無にしていた俺だが、気になって隣を見ると、乃愛は完全に気を失っていた。


「あぁ、死ぬかと思った……」

「半分死んでたけどな」


 選手変わりましてお次は……


「で、お前が行きたいのは?」

「オレは得に行きたいところないなぁ……あ、それじゃああそこのクレープでも食べよ。カップル割やってるみたいだし」


 何度も言うがお前は男だろ。


「お前、やっぱりそっちの気が?」

「ないない、まぁ、裕太がどうしてもって言うなら真剣に考えるけど」

「誰がお前なんかと」

「まあまあ、フリでいいからさ」


 結局、お店の人には何も疑われることなくカップル割でクレープを値引きしてゲット。


「はい、あ〜ん」

「死にたいのかな?」

「ちぇー、連れないなぁ」

「まったく、どうしてそういつもちょっかいばかりかけてくるんだよ」

「女の子にちょっかい出すといろいろまずいし、宇佐美は彼女持ちだし。いつものメンバーには裕太しかいないってわけだ」

「そもそも、ちょっかい出さないっていう選択肢はないのかな?」

「裕太がやめてって言うなら控えるように心がけるけど、オレが欲求不満で暴走しても知らないゾ?」


 それは遂に女の子に手を出すということだろうか……まぁ、そんときはこいつが捕まるだけだし問題ないだろ。


「俺に被害がなければ最悪構わん」

「そんじゃ、気をつけまーす。ところでそのクレープひとくち貰っても?」


 俺は今までの話はなんだったのかと険悪な顔をする。


「待て待て。オレはただ純粋にそっちのクレープも気になるだけで」

「じゃあいいよ残り貰って」

「ありがと。それじゃあオレのも残りあげるよ」

「要らんわ」

「まあまあ、そう言わずに」


 仕方なく受け取る。こんなにドキドキしない間接キスが存在したとは……しかも相手は男だし。


「どう?美味いっしょ?」

「……悔しいけど美味い」

「いやぁ、そんな」


 なに照れてんだよ。お前が作ったわけじゃないだろ。


 はい次!


「ちょうど空いてるみたいですね」

「お前、さては乃愛が苦手なの知っててここにしただろ」

「いえ、違いますって。前に言ったでしょ?テストの成績云々はもう気にしてませんし、乃愛とみかん相手にガミガミする必要はないのです」

「そもそもそのテスト云々は許嫁関係あったのか?」

「裕太さんの成績が優秀なのは知ってたのでそれに並べれば学校で噂になるかと、まぁみかんに邪魔されましたけどね」

「そっか、てっきり1人でも邪魔者を減らそうとしてるのかと思ったよ」

「あ、その手がありました」

「まさかの無自覚」

「ま、まぁ高いところが苦手なのは本当ですし、おあいこですよ。それにお化け屋敷なら自然な形で裕太さんにくっつけるので」

「それ言ってる時点で自然じゃないし、お化け屋敷平気な人にくっつかれても困るんだけど」


 短い列はすぐにはけて、すぐに俺たちの順番は回ってきた。

 中はさすがに凝っている。文化祭のすみれたちのクラスのお化け屋敷もなかなかだったが、やはりこういうところのものはレベルが違う。


「キャー、裕太さん怖いですー」


 最初はわざとらしいすみれだったのだが……


「うぅ……裕太さん……」


 本格的なお化け屋敷を前に完全に余裕を無くしたすみれは本気で怖がっている。

 涙ぐんでいるすみれを見てふと思う。

 愛莉の言っていた反則な顔というのはこれのことか……確かにこれはなんでも言うこと聞いてあげたくなっちゃうかもしれない。


「うぅ……さすがに……グスン、舐めてました」

「良かったじゃないか、本当に自然にくっつけて」

「グスン……もう少し……抱きついていてもいいですか?」

「しょうがないな」

「ありがとう……ございます」


 抱きつくのを許した俺だが正直やめて欲しい。ロリに目覚めそうになる。それ以前に周りからの目が痛い。

 お願いだから早く泣き止んでくれ。

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