3-28 許嫁は…
「そういえば、優勝おめでとう。大逆転だったね」
体育祭のことだろうか、確かに俺たち青組は最後の最後に大逆転をして優勝している。
「それはどうも……じゃねぇよ誤魔化すな」
「あはは……やっぱりダメか」
俺の頭はそんなに残念じゃない。
「誤魔化そうとした時点で俺の言いたいことはわかってるみたいだな」
「まぁね、ボクもそこまで鈍感じゃないよ。それで、どうするつもり?」
「どうするつもりもないよ、俺はただ自由になりたいだけだから」
「裕太、君は夏音のことが好きなのかい?」
「……今までは、俺を縛る存在のせいでそういう感情はなかったな。でも、自由になれば好きになれるかもしれない」
「なるほど。それが君の答えなんだね?」
「あぁ、俺は公平に、平等にしてもらいたい」
愛莉は、俺の視覚になる物陰に向かって合図を送る。しかし、反応がないことに少し焦りを見せる。
「すみれならここにはいないぞ」
「そんなはずは、だってボクが来た時には既に来ていたはず」
「姫香ーもう出てきていいぞ」
愛莉が合図を送った物陰からすみれではなく姫香が姿を現した。
「どうして……」
「お前、こうなることを見越してすみれをこっちに呼んでたんだろ?そう思って姫香にすみれのフリをしてここに隠れてるのを装ってもらってたんだよ。しっかりと屋上のドアに書き置きも残してもらってね。あ、姫香は夏音のところに行ってやってくれ」
「はい、わかりました」
さぁ、ここからは俺らの時間だ。
「愛莉って……許嫁フリしてるだけだろ?」
「……」
愛莉はハッとした表情をして俯く。
あとは、俺たちの考えをぶつけるだけだ。
「俺からと思われる手紙を受け取り、お前たちはこう考えた。許嫁を探られていると。そして、俺が問い詰めるために話をすると。でも、同じ時間に違う場所に呼ばれているのでどっちかは俺以外からのものだって」
「その言い方だとどちらも裕太からのものみたいだね」
「あぁ、それで図書室にすみれを行かせずにこちらに2人でいればどちらが本物であった場合でもやり過ごせると思ったんだろ?」
「その通り、図書室に裕太が来たら誰もいない。屋上に来たならボクが受け持てるってね」
「まぁ、愛莉が許嫁のフリをしてるダミーだってのはすぐに気づいたよ」
「織田郁李をローマ字に書き換えて、並び替えるとボクの名前になる。これで行けると思ったんだけどね」
「俺に一人暮らしをしてるってのを言ったのがミスだったな」
「一人暮らし?確かにボクは一人暮らしだけど」
「中学生のときからすみれと同じ学校に通っていて、高校生になったすみれは実家から通っている。この状況で一人暮らしをするのは中学生のときからそうしてるか、親が実家に居ないかのどちらか。でも、アパートを借りてって言ってたから前者の方だとみた。少なくとも中学生のときは親経由で手紙がやり取りされていたのはわかってるから一人暮らしをしてるお前は除外したって訳だ」
つまり、俺の本当の許嫁はすみれだったということだ。
姫香に頼んですみれには愛莉が図書室に場所を変更したと思い込んで貰っている。
「昼休みが終わったら姫香が急に許嫁のことを持ち出したのはそういう事だったのか。急な上にいつの間にバレたのかと思ってたよ」
「ま、俺が昼休みに頼んだからな。さて、俺からの話は終わりだ今頃夏音がすみれと話してる頃だと思うがどうする?」
「バレた以上はしょうがない。こうなったら最後まで見届けることにするよ。女同士のバチバチの争いをね」
「意外と簡単に親友を売るんだな……」
「いや、ボクは中立だよ。だってどちらを選ぶかなんて裕太次第じゃないか」
そりゃそうだ。だったら最初からやめて欲しかったけどな。
「1つ聞いていいか?」
「なんだい?」
「どうしてすみれに協力してたんだ?いや、まぁ親友だからってのはあるだろうけどさ」
「ボクも、最初はコソコソしてないで正面からぶつかった方がいいって言ったんだけどね。さすがにあの顔は犯罪だった」
愛莉の頭の中に『泣き顔』を使っているすみれが見える気がする。
「さて、そろそろ行こうか」
「そうだね、面白いのはここから」




