1-7みかんのお願い
「どうして俺がここにいるってわかったんだよ」
「まあ、盛大にガコンッッって音がしましたしねー」
保健室へ向かう道中、俺の質問に伊須は得意気な顔で答えた。なんかムカつく。
「じゃあなんで隣の跳び箱を持ち上げたんだ?」
「あー、いやぁー、あんな話を聞かれてたって夏音が知ったらさぁ、あーなるのはわかってたから、適当に音がしたのが気のせいだったーとかで誤魔化そうと思ったんだけど。まさか隣の跳び箱から宇佐美君出てくるとは思わなくてビックリ……ハハハ」
意外と友達思いなんだな。と、感心していると保健室が見えてきた。
「なぁ、あとで聞きたいことがあるんだけど言いかな?」
「ん?いいよぉ。その前にかくれんぼで勝った私からお願い聞いてもらうけど」
「うっ、お手柔らかにお願いします」
チャラっとしたイメージだったが意外と抜け目のない彼女の発言に言葉を詰まらせていると、彼女は「アハハハッッ」っと笑いながら保健室の扉に手をかけた。
「失礼しまーす」「失礼します」
と、中へ入ると気を失い、ベットで寝ている尾栗とその横で椅子に座っている宇佐美がいた。
「あれ、先生は?」
「あー、別の用があるってさっき出てったよ。尾栗さんは貧血で倒れたってことにしておいた。先生も『しばらく休めば大丈夫でしょ』だってさ」
「なら、良かった」
「そんなことより、お前、俺の隣の跳び箱に隠れてただろ。どーすんだよ尾栗さん、お前のこと好きらしいじゃん」
「そ、それは」
俺が返事に困っていると伊須が「その事なんだけどぉ」と、切り出してきた。
「かくれんぼ、あたしが勝ったから2人にお願いしたいんだけど」
嫌な予感しかしないが、約束は約束だ、素直に聞き入れよう。いくらなんでも「夏音と付き合ってあげて!」とかじゃないと思う。急にそんなこと言われたら対応に困る。だって、俺は尾栗のことを知らないから。
「土曜日あたしと一緒にランチしてくれない?」
「「え?」」
俺と宇佐美は声を揃えて、首を傾げる。完全に動きはシンクロした。
「いいけど、俺と宇佐美との3人でか?何すんのよ」
「恋の作戦会議ってやつ?あ、宇佐美君は日曜日、あたしと夏音と3人でもう一回ねっ!」
ウインクしながら可愛げに言ってくるも、宇佐美は「え?そんなことで俺の週末2日とも消えるの?」と不満げに文句を言う。実際、宇佐美自身のことではないので不満もあるだろう。
でも、そんなことって酷くない?俺たち友達だろ?今日からだけど……
「文句言わなーい。天野君もいいよね?」
「まあ、しょうがないな」
「じゃあ、決まりね」
予想とは少し違ったが、嫌な予感は当たってしまった。まあ、土曜日だけだから宇佐美よりはマシだし、俺も聞きたかったことがあるからよしとするか。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ここまでが物語の序章となります(エピローグ的な)。まだまだ、一章(恋愛相談編)は続くのでぜひお読みください。
最後に、この作品が気に入った方は高評価をお願いします。