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2-28 愛莉のウェディング

 8月28日。夏休みも残すところあと5日というところ。俺、宇佐美、みかん、夏音は学校に来ている。

 教室の窓からはグラウンドでサッカー部の人がボールを蹴っているのがよく見える。

 そんな中、帰宅部の俺たちがなぜここにいるかというと


「夏音ちゃん、こういうの得意じゃない?やってみたら?」

「迅くん……それわざと言ってる?私よりもみかんちゃんの方が出来るでしょ」

「あたしに来たか~。じゃあ、あたしは祐太くんを推薦しようかな」

「じゃあってなんだよ。そもそもこういうのはその場にいた宇佐美が引き受けろよ」

「俺じゃ無理だからこうしてみんなに頼んでるんだろ」


 と、揉めている俺たちの教室のドアがガラッと開けられ、愛莉が入ってきた。


「もう、まだ揉めてるの?時間無いんだから早くしてよね」




 遡ること1週間前───


 夏音達の誕生日会の準備を進めている最中、ケーキの予約を宇佐美と愛莉に頼んだときのことだ。


「悪いな手伝わせちゃって」

「良いってことよ、友達の誕生日だもんね」

「今頃、祐太たちはプレゼント探してる頃かね」

「どうだろ、ボクたちが出掛けるときにいろんな雑誌見てあーでもないこーでもない言ってたから案外まだ出掛けてなかったり?」


 心外だなぁ、お前たちが出掛けた5分後には俺たちも出掛けたんだけど。


「ちょっとそこのキミいいかな?」

「えっ?ボクですか?」

「そうそう……ってもしかしてキミ男の子?」

「も、もしかしてボクのこと女の子だと思いました?」

「あ、あぁ、そのつもりだったんだけど」


 どうやら愛莉は女の子として声をかけられたらしい。結構嬉しそうにしてたって宇佐美が話してた。


「ちょっとちょっとお兄さん俺の連れになにかようですか?」

「あー、ごめんなさい。実はわたくしこういう者でして」


 その人に渡された名刺には『××××ウェディング』と書かれていた。


「これってウェディングプランナーの会社ですよね?」

「はい、実は新しいポスターのモデルを探してまして、キミにモデルをお願いできないかなと」

「ボクがですか?!やりますやらせてください」


 なんか、その場にいなくてもよっぽど女の子として見てもらえたことが嬉しかったのは伝わったよ。


「で、相手役なんだけどよかったらキミのお友達にお願いしたいんだ。なるべく自然な笑顔が欲しいからね。なんならキミの彼氏さんでも構わないよ」

「えーと、俺たち別にそういう関係じゃないですよ」

「あー、そうなの?でも赤の他人って訳じゃ無さそうだし、どうかな?」

「んー、ちなみに撮影日っていつですか?」

「8月31日の午後からだよ。それと、29日にその打ち合わせをやるつもり」


 聞くところによると宇佐美は実家(料亭)の手伝いでその日は都合が悪いらしい。


「すみません、俺は都合が合わなそうですね」

「そうか~、残念。キミのお友達にお願いできそうな人、居ないかな?」

「そうですねぇ、ボク、男友達あんまりいなくて……」

「うーん、困ったなぁ……」

「あ、ちなみに愛莉を男役としてモデルにする事ってできます?」

「ん?あぁ、確かに男装させればできなくもないか……彼女さえ構わなければだけど」

「ボクは構いませんよ、よくあることなので」

「じゃあ、決まったらここに連絡してもらえるかな。打ち合わせ前日までには頼んだよ」



 ─────


「今日中に連絡しなきゃいけないんだから」

「それならお前の大親友のすみれに頼んだらどうだ?」

「すみれならすぐに頼んだよ。そしたらこれ」


 愛莉はスマホの画面を俺に向けてすみれとのチャット画面を見せた。


『ウェディングドレスですか。いいですね。是非やらせてください』

『ほんと?じゃあ、29日に打ち合わせ、31日本番だけど大丈夫かな?』

『あ、31日は委員会の先輩達と丸1日「夏休みお疲れ会」とやらに参加しなくてはいけないので残念ですが今回はお断りします。本当にすみません』


「一応聞いとこうか。なぜここに織田さんは居ないのか」

「あー、姫香なら誕生日にあげた本を図書室で読んでるらしくてね。彼女にもお願いしようと思ってさっき図書室に行ったら、すみれとめちゃめちゃ意気投合してて話しかけられなかった。とにかく、男でも女でもいいから相手を連れてきてってお願いされちゃったんだから頼むよ」


 このとーり、と両手を顔の前で合わせられても困るんだよな。

 と、そこで愛莉のスマホが鳴った。


「はい、工藤です」


 どうやら例のウェディングプランナー会社の人らしい。


「はい……え、今日ですか?……はい、わかりました」


 な~んか嫌な予感がするんだけど。

 電話を切った愛莉に俺は訊ねる。


「なんだって?」

「えーと、やっぱりボクにウェディングドレスを着せたパターンも撮りたいんだって。だから男女1人づつ連れてきて欲しいって。しかも、担当者の都合が悪くなったみたいで今日の午後に打ち合わせするって……」

「じゃあ男は祐太で決まりだな。俺は都合悪いし」

「以外とお前の親父さんに聞いてみたらOK出そうだけどな」

「じゃあ今から聞いてみるか?」


 と、宇佐美はスマホを取り出し電話をかける。


「あ、もしもし?俺だけど……」


 まあ、本当に宇佐美がダメなら俺が行くしかないのか。俺は宇佐美の結果を待つ。


「っていう訳なんだけど。店あるしダメだよな?……え?問題ないって?」


 おやおや?

 しばらくして、通話を終えた宇佐美に俺は


「大丈夫だっただろ?」

「そ、そうみたいだな。じゃあ俺行こうかな」


 よかった~。俺は回避。

 さて、女性陣は……


「「じゃーんけーんポン!!」」


 ついにじゃんけんになったか。えーと、夏音がグーでみかんがパーっと。


「えーーームリムリムリムリ!!私じゃ無理だって~」

「って、じゃんけんって言い出したの夏音でしょ」

「で~も~」


 じゃんけんに負けた夏音はムリムリとみかんに泣きついている。


「夏音ちゃん。諦めた方が良さそうだよ」


 と、肩に手を置き、諭す宇佐美。


「じゃあ、行くよ。時間無いんだから」

「ちょ、ちょっと待って~。祐太くん助けてーーーー」


 と、愛莉は強引に夏音を引っ張って教室から連れ出していく。なんか可哀想だな。でも俺にはどうすることもできない。夏音よ、すまない。

 宇佐美もそのあとに続き教室を出ていくと、さっきまで騒がしかった教室は、俺とみかんだけが取り残された物静かな空間になった。


「ありゃ、行っちゃったね」

「良かったのか?お前こういうの引き受けそうだけど」

「え、そんなことないよ。あたしだって急にウェディングドレス着て撮影とか言われても困るよ、さすがに」

「まあ、だろうな。意中の相手でもないのにウェディングドレス着てペアショットとかお前が望むわけないもんな」

「えっ?それってどういう……」


 みかんは、動揺しながらも不思議そうに反応する。俺は立ち上がり窓の方へ歩みながら後方にいるみかんにこう告げた。


「もう、わかってるよ、みかん。お前だったんだな」

「な、何が?」


 そこで俺は振り返り、話を続ける。


「俺達が探してた許嫁だよ」

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