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1-5あの人

 あの人と初めて出会ったのは、中学3年生の冬。


 私立高校の入試の結果が不合格とわかり、とてもショックだった私は、公園のブランコに座り、1人で泣いていた。


 私と一緒の高校に受けたみかんちゃんは合格。一緒に結果を見に行ったのでお互いの結果は知っている。私はショックのあまり、みかんちゃんを置いてここまで来てしまった。

 手に持っているスマホのチャットアプリでみかんちゃんから何件も着信があったが、応えられずにいた。


 日は暮れ、辺りはすっかり暗くなり、公園の常夜灯だけが私のことを照らしていた。

 

「君、大丈夫?」

「えっ?……ひゃっッッ!!!」

 

 俯いて座っていたので、すぐ側まで近づいて来ていた男の人に全く気がつかなかった私は、びっくりして飛び上がった拍子に、バランスを崩し、そのまま尻餅をついてしまった。

 

「ごめん、急に話しかけて。ほら、立てる?」

「あ、はい、その……大丈夫です」


 彼のさしのべた手をとり立ち上がると、「ありがとうございます」と、お礼を言い、軽くお辞儀をした。


「で?こんなところでどうしたの?」

「えっと……実は、受けていた高校に落ちてしまって……」

「なるほど、一緒の学校を受けた友達は合格したけど君は落ちちゃったってところか?」

「えっ?なんでわかったんですか?」


 私のことを知っているわけでもないし、どうして……ま、まさかストーカー……?

 なんてことを考えていると、


「あー、実はね、君に声かける前にスマホの着信がなってたから気づいてないのかなって思って声かけようとしたんだけど、近づいたら泣いてたからチャットのメッセージでいじめられてるのかって思って、勝手に画面見ちゃったんだよね。そしたら『今どこ?大丈夫?』ってやつだったからさ……あぁ、それ以外は見てないから気にしないで、ごめん。」


「あ、それは良いです。チャット画面開いたまま泣いてた私も悪かったので。それで?どうしてそれでわかったんですか?」

「受験結果を見たあとに公園にずっといたなら、それを一緒に見に行った友達が、そのチャットの相手かなって思って。まあ、一緒に行った人が家族って可能性もあったけど、その辺は勘だな」


 凄い、探偵みたい。


「頭いいんですね」

「いや、そんなことないよ。実は君が受けた学校、俺も受けてたんだけど、俺も落ちちゃったから。だからって訳じゃないけど、元気出しなよ。まだ私立高校の受験出願はやってるし、公立の入試はこれからだから」


 落ち込んでいた私の状況を高校に落ちてしまったの一言で見抜かれた時点で受験に失敗したショックよりも、驚きの方が勝ってしまった訳で……彼の励ましの言葉でなんだか吹っ切れたような気がした私は「はい」と答えた。

 でも、気になることが1つ。


「でも、嘘はいけませんよ?」

「え?」

「私、どこの学校を受けたかなんて言ってませんよね?」

「あぁ、ばれちゃったか。ごめんね。」

「いえいえ、励まそうとしてくれたんですよね。ありがとうございます」


 彼の嘘を見抜き、意外と私にも探偵の素質が?とか考えていたら、彼が「家までは電車?暗いし、駅まで送ってくよ?」と聞かれたので、お言葉に甘えて送ってもらうことにした。


  ――――――――――――


「で?その人のことが好きになっちゃったと」

「い、いや、ススス、好きだなんてそんな……」

「いや、夏音わかりやすすぎ」

「うぅっ……」


 顔を真っ赤にし、手を体の前でパタパタと振りつつ、全力で否定したけど、一瞬で見抜かれてしまいました。

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