表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/94

2-20 すみれ先生

 宇佐美の勉強はまだまだ続く。

 昨日は結局、宇佐美が必死に頑張りノルマ分を終えて解散。

 海へ行く前に宿題を終わらせるようにとみかんの与えたスケジュール通りに今日もノルマ分の課題に向かってセカセカとペンを走らせている。


 本日の宇佐美の付き添いは俺とすみれの2人。

 あのあと、すみれにダメもとで宇佐美の勉強を手伝って貰えないかと頼んでみたら二つ返事でOKがでた。


 すみれはほぼ毎日、図書室にいるので付き添い当番は固定で、俺、みかん、夏音、織田さんが1日ずつ交代でそれぞれ2回担当。すみれとみかんが2人きりになるといざこざが起きそうなので仲裁役として涼葉にはこの日に入ってもらうことに。

 これで10日後の海に間に合わせる計画だ。


 それにしても、

 俺にみかんとすみれの学年トップ3に勉強を見てもらえるとか、どれだけ贅沢なことか。


「裕太、ここ教えてくれ」

「ん?英語なら俺よりすみれに聞いてくれ」

「あのですね、私は一応図書委員の仕事でここにいるんですよ?今はほとんど人いないのでいいですけど出来れば裕太くんが教えてあげてください。少なくとも宇佐美さんよりはできるでしょう?」

「んー、善処する。だが、俺はどうも教えるのが下手らしい」

「偉そうに言わないでください」


 堂々と正直に言ったのが偉そうにとられてしまったらしい。そんなつもりはないのだが。


「それより、コンタクトに変えたのか?」

「あ、はい。その方が可愛いとおっしゃってくれたので」


 すみれはメガネをコンタクトに変えていた。うん、やっぱりその方がいいと思う。


「で?どこがわからないんですか?」

「ここだよ。過去形と現在完了の違いがいまいちわからん。この『私は道に迷った』って過去形じゃないのか?」

「それはですね。この人は前後の文からもわかる通り今も道に迷って困っています。この文を過去形としてとらえるならこの人は今、道に迷っているのが既に解決して過去の体験談を話してることになります。なのでこれは完了形です」


 おぉ、分かりやすい。

 俺は隣で説明しているのを聞いて感心した。

 宇佐美もなるほどと一応納得はしている模様。


「では問題です。私は今は無くした本を探しています。それを見た宇佐美さんが『彼女は本を無くした』と言いたいときはどちらの構文を使うでしょう」

「えーと、すみれちゃんはまだ本を見つけてなくて今に至るわけだから、完了形か?」

「正解です」


 本当に理解しているのか、簡単な例題を出して教える姿、素晴らしい。

 これなら、俺の担当していないところもかなり心強い。

 本音を言うと俺も教えることに関しては自信なかったし頼りになる。


 そんなこんなで、結局俺は宇佐美になにも教えることなくすみれのワンツーマン体制の講義が続いたのだった。


 そして、約一週間、宇佐美の勉強は特に問題なく進み……


『終わったぞ、これでみんなで海だ』


 そんな連絡がチャットで届いたとき、俺は心のなかで『よく頑張ったな』と少し笑みを浮かべながら呟いた。


「どうしたの裕兄、ニヤニヤして」

「いや、なんでもないよ」

「変なの」


 同じグループチャットで宇佐美の連絡を見ていたであろう涼葉の顔も嬉しそうにニヤついていた。

 素直じゃないのは相変わらずだな。


 さて、いよいよ海だ。夏休みだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ