2-16 夏休みの始まり
7月も残すはあと1週間。
今日は夏休みの初日。
夏休みの過ごし方は人それぞれ。
早めに宿題を済ませて残りをゆっくりと過ごす、計画的にスケジュールを組んで過ごす、部活で青春エンジョイ、なかには宿題そっちのけで遊んでばかりでラスト数日で追い込むタイプも。
ちなみに俺はというと……
「ぁ暑いぃぃ」
「まだまだ夏はこれからだよ裕兄」
炎天下の中を涼葉と2人で歩いていた。
「そうは言っても暑いものは暑いんだよ」
「じゃあ今日は私達の水着を見て気分だけでも涼しくなりましょう」
そう、今日はみかんのお願いと言うことで、みかん、夏音、涼葉の水着選びというわけだ。
「はいはい、そうしますよ」
水着売り場は屋内で冷房が効いているからそんなことしなくても涼しいと思う。とか言ったら怒るかな。
現地集合ということで、俺たちがショッピングセンターの水着売り場に到着すると、既にみかんたちは到着していた。
「おーい、おまた……せ?」
みかんたちはまだ俺たちに気づいていないようだ。そしてマネキンの着ている水着を見ながら何か話してるな。
てか、あのビキニかなり布面積少なくない?今時の高校生ってあんなの着るの?
「夏音はこれくらいがいいんじゃないの?」
「いやいや、無理だよ。恥ずかしすぎて死んじゃう」
「んー、そうかなぁ」
「そうだよ……そんなに言うならみかんちゃんが着ればいいんじゃないの?」
なんか面白そう。反射的にそう思ったのか、俺と涼葉は隠れて2人の様子を伺う。
「なんで俺たち隠れてるんだ?」
「なんでだろ。まあ、いいんじゃない?」
涼葉もよくわからずに隠れたのね。
すると、みかんがむすっと頬を膨らませた。
「夏音……」
「あれ?みかんちゃん?私、なんかまずいこと言っちゃった?」
「……」
「みかん……ちゃん?」
「夏音、この水着をあたしが着ろと?」
「ぇ?!あ、うん似合うと思うけど」
なんかみかんの様子がおかしいな。これ喧嘩になっちゃう?止めたほうがいいか?
俺が2人に近づこうとすると涼葉が腕を掴み、首を横に振った。
もう少し見てようってことか?
すると、みかんは夏音の背後に素早く回り込み……
「そんなことを言うのはこの胸かーーー!!」
夏音の胸をムニムニと揉みだした。
「ちょ?!みかんちゃん?!!や、やめてぇ~」
「あたしみたいなまな板がこんなの着れるかぁー。そんなに言うならその胸分けろぉぉ!!」
「そのくらいにしておけ」
「ひゃっぃ!!」
俺は手に持っていた冷えた缶ジュースをみかんの首筋に当て暴走していたみかんを止めた。
「ゆ、裕太君?いつから?」
「夏音はこれくらいがいいんじゃないの?の辺りからかな」
「それ最初からじゃん!!」
「いや、声かけたんだけどな。気づかなかったしなんか面白そうだったから傍観してた」
「いや、見てないで。気づくまで声かけるとか、もっと近づくとかあったでしょ」
「あー、なるほど」
もう、めんどくさいから流すか……
「ちょっとぉ、涼葉ちゃんもなんか言ってよ」
あ、俺が流し始めたのに気づいて涼葉に話を振ったな。
「ごめんなさい。私も面白そうだったから裕兄と一緒に見てた。えーと……その……胸のことは気にしなくていいと思うよ?」
涼葉……今それは言ってはいけない。
涼葉のとどめの発言に折れたみかんは夏音の胸へと飛び込み、泣きついた。