1-3かくれんぼ(夏音の場合)
私、尾栗夏音は今かくれんぼ中。鬼はみかんちゃんになってしまったので1人でとても不安。
とりあえず、気を落ち着かせようと屋上に来てみたんだけど……
(うーん、ここじゃすぐに見つかっちゃうかな?)
そこにあったのは3人掛けのベンチが2つと、発電用の太陽光パネルがあるだけ。隠れられないことはないけどバレバレ。
それでも、ここに隠れるしかない。なぜなら、もう時間がないから……
体力に自信がない私は、2階の自分たちの教室から4階建てのこの校舎の屋上まで来るのに5分も使ってしまった。
今からだと3階か4階にしか戻れないが、4階は特別授業の教室しか無いのでダメ。3階には空き教室がいくつかあるけど、ここに来るまでに体力を使ってしまったので正直残り時間があやしい。
とりあえず、屋上へ出る扉は1つしかないので、そこからの死角になる太陽光パネルの反対側に行き屋上から校庭を見下ろしていた。
春の風はとても心地がよく、屋上だとますます気持ちいい。すぐそばにあるこのベンチに座っていたら、すぐに眠くなってしまいそうだ。
かくれんぼ中に気を抜いてはいけないとわかりつつも誘惑に負けてベンチに座り込んでしまった……
「……のん、おーい、夏音!!」
「……ぅん?」
「かくれんぼ中に居眠りとは随分と余裕ですなぁ~」
「あ……」
しまった……寝てしまった。まあ、どのみち屋上だと探しに来られたらすぐに見つかっちゃってたと思うし、しょうがないか。
「今、どれくらい経った?」
「えーと、5分くらいかな?校舎の中で隠れられるの空き教室のある3階だけだし、一番最初にあとで戻ってくるの大変な屋上に来たから。」
みかんちゃん、意外と頭いいんだよね。今回も、効率よく探そうとしてらっしゃる。
彼女とは、小学校のときからの友達で彼女のことはよく知っている。
彼女はそのチャラチャラした外見から、中学校のときに先生達から指導をちょくちょく受けたり、他の生徒からの印象は、『友達としては接しやすいけど、将来が心配』とのこと。
小学生の彼女を知っている私はそうは思わないが、中学生からの同級生がそう思うのも無理はない。
だけど、実際はそうでもなくて、テストでは毎回、満点近い点数を取ってるし、面倒見がよく、私が困ってるときは快く相談にのってくれる。さらに料理上手で家庭的な一面もある。
「夏音?どしたの?ぼーっとして」
「いや、みかんちゃんは凄いなぁって思って」
「ん?なんのこと?」
「ふふっ、何でもー」
私は、少しからかうように笑ってみせた。