2-7 お泊まり会(後編)
「わぁ。このハンバーグすごく美味しい」
「あ、ありがとうございます。みかんさん」
「涼葉ちゃんって何年生?」
「中学3年生です」
夜ご飯が出来たと涼葉に呼ばれた俺たちは、食卓を囲んでいた。
メニューはハンバーグに付け合わせのポテトサラダ。夏音たちの予想は的中だ。
「裕太はこんなに美味しい料理を毎日食べられて幸せだな」
「これでも、裕兄の好みに合わせるの大変だったんですよ」
「それは涼葉がしつこく好みの味聞いてくるからだろ?」
「っふふ。2人とも仲いいんだね」
「べっ、別にそんなことないですよ。普通です」
やはり少し照れて、視線を皆から反らしながら涼葉は答えた。
涼葉は人当たりがいい方なので初対面の皆とも既に馴染んできている。
夏音は人見知りということで少し心配していたけど安心。
むしろみかんがやたらガツガツ接していて若干、涼葉が引いているのが心配なくらいだ。
「ところで、皆さんがここに泊まることになった経緯は聞きましたけど、皆さんのご関係は?」
「あー、あたしたちクラスメイトで席も近くて結構仲良くしてるグループ的な?そんな感じ」
「ふーん、なんか意外ですね。裕兄、中学の時は女の子の友達なんて作ろうともしてませんでしたから」
「え?そうなの?」
「はい。だって裕兄はいいな……「良いなって思う子が居なかったんだよ。なんか変に気を使わせちゃうっていうかさ。それに比べてみかんたちは初日から気さくに接してくれたし」
危うく夏音の前で許嫁のことをばらされそうになった俺は慌てて涼葉の口を押さえて、言葉を被せた。
「んーーーんー」
押さえたままにしていた俺の手を涼葉がパタパタと叩いてくるのに気づいた俺は慌てて手をどけた。
「ハァーハァー……もう、裕兄なにするのよ」
状況が理解できてない涼葉に俺は耳を近づけ、小さな声で……
「あとで話すから許嫁のことは伏せてくれ」
「えっ?あ、あぁ、うん。わかった」
中学生の時は特に隠すことでもないので友達には普通に話していた。愚痴を聞いてもらうために。
当然同じ学校に通っていた涼葉もそれを知っていて、高校生になった今でも話して大丈夫だと思っていて、悪気など無かったのだろうが、今回はわけが違う。
しばらくして涼葉の美味しい料理を食べ終えた俺は涼葉とキッチンに残り、食器の片付けを手伝っている。
「で、裕兄。どうして許嫁のこと隠してるの?」
「入学式のあとの週末に話したこと覚えてるか?」
「えーと……確か、裕兄のことを好きな子がいるって話だっけ?」
「そうそう。その人って夏音のことなんだよね」
「えっ?嘘!?夏音さんが?裕兄にはもったいないでしょ」
失礼なことを言ってくれるな。
「で、前にも言った通り許嫁の人を探すのをみかんと宇佐美に手伝ってもらっているってわけだ」
「なるほどねぇ。で?夏音さんのことはどう思ってるの?」
「どうって……まあ、可愛い方なんじゃないの?」
「そっか。応援してるよ」
そう言って、最後の食器を洗い終えた涼葉はキッチンをあとにしようとしたところで、みかんがやって来た。
「涼葉ちゃん。いまから部屋に来てあたしたちと少し話さない?もっと涼葉ちゃんのこと知りたいなって思ってさ」
「はい。いいですよ」
結構みかんとも打ち解けてきたみたいで安心だな。さて、俺も部屋に戻るとするか。