2-6 お泊まり会(前編)
「えーと、宇佐美?とりあえずごめん」
俺たちは宇佐美を置き去りにして、図書館をあとにしようとしていた。
宇佐美は俺に掴みかかり涙を流しながらも暗い顔をしている。
怒らせてしまったのだろうか。
「起きたら皆いなくなってて……グスン 館内の電気も消されてて……怖かった」
とりあえず怒っている様子は無さそうだ。閉館間際で起きてよかったな。もう少し遅かったら閉じ込められていたかもしれない。
「え、えーと。俺は2人の家によってから帰るから、それじゃあまた学校で……」
「2人の家になんかようなのか?」
「あたしたち今日は裕太君の家にお泊まりするから荷物取りに行くのよん」
みかんの言葉に暗い顔だった宇佐美は
「お!いいね。俺も行って良いか?」
まるで子供のように明るさを取り戻した。
「え、お前が来ると俺の部屋が狭くなるじゃん。やだよ」
「……冗談だよな?いつもからかってる仕返しとかそういうのだよな?」
結構本気で言ったつもりだったが再び肩を掴み揺さぶってくるのがうざい。
「あー、はいはい。冗談冗談。でも涼葉に確認してからな?」
そう言いながら携帯で涼葉に電話をかけるとすぐに繋がった。
『もしもし裕兄?どうしたの?』
「あー、突然で悪いんだが。今日3人ほど家に泊めても良いかな?」
『うん大丈夫だよ。あ、でも夜の食材2人分で買ってきちゃったから追加で買ってきてもらえる?』
「わかった。ありがとう」
「私たちお邪魔しちゃっても大丈夫かな?」
「ああ。大丈夫だってさ。でも夜の食材を買っていかなきゃだから全員の家に寄ってる時間は無さそうかな。悪いけどすぐそこのスーパーに集合で良いか?」
40分後、買い物を終えた俺が店から出てくると。ちょうどみかんたちも来ていた。
「ごめーん。待った?」
「いや、今終わったとこだよ」
「なあ裕太。今日のメニューはなんだ?」
「さあ、俺も材料しか言われてないからわからん」
涼葉に頼まれたものは、鶏卵1パック、挽き肉300g、じゃがいも5個、玉ねぎ2玉、キュウリ1本。
「俺は料理しないからわからん。夏音ちゃんは料理するんだよね?わかるかな」
「うーん。挽き肉と玉ねぎと卵でハンバーグじゃないかな?」
「じゃあ、残ったじゃがいもとキュウリでポテトサラダかな。どう?裕太君」
「どう?って言われても、普段買い物と料理は涼葉に任せてるからな。まあ、当たってるんじゃないか? この材料で俺がなんか作るならその2つくらいしか作れないな」
そんな話をしながら自宅に到着。
「ただいま~」
「「「おじゃましまーす」」」
俺たちの声を聞いて涼葉がリビングから出てきた。
「裕兄お帰り。みなさんもいらっしゃい。ゆっくりしていってくださいね」
俺は買ってきたものを涼葉に託し、皆を部屋に案内する。
「と、まあ一通りこんなところかな。なんかわからないことがあったら気軽に聞いてくれ。とりあえず夕食ができるまではゆっくりしてていいぞ」
「よかったら私手伝おうか?」
「あー、涼葉はこだわりがあるみたいで基本的に料理は1人でやるタイプだから気にしなくていいぞ」
「それじゃ、お言葉に甘えてあたしたちは部屋でゆっくりしてるよ」
3人を部屋で待機させた俺は涼葉にここまでの経緯を話にキッチンへ行くと、ポニーテールで料理モードの涼葉がせかせかと手を動かしていた。
「裕兄?」
「なんだ?涼葉」
涼葉は料理の手を止めずに背中で俺に話してくる。
「まさか女の子を連れてくるとは思わなかったよ。もしかして彼女とカップル連れてWお部屋デート的な?」
「そんなわけないだろ。えーと、カクカクシカジカでな?」
涼葉に経緯を説明すると「相変わらず大変だね」と涼葉はいつも通りの反応をしてくれた。