2-2 許嫁動く
1人で歩けるくらいに回復したみかんを家まで送った後、家に帰った俺は「またか」と肩を落とした。
20:30過ぎに帰ってきた俺に涼葉が、
「ずいぶん遅かったね。大丈夫だった?一応、晩御飯の準備できてるけど、先にお風呂入る?それとも手紙にする?」
最後の選択肢にはツッコミたいところだが、今回はその選択肢を選ばせてもらおうか。
今日は校外学習だから、それなりに夏音と距離を詰めていればこうなることは予想できていた。
俺が涼葉から手紙を受けとり、中を確認する。
『天野裕太君へ
本日の校外学習は楽しめましたか?私は天野君の姿を見ていられるだけで幸せです。ところで、途中で恋愛成就の神社によっていましたが、まさかあのグループの中の人から好かれていたりするのでしょうか?私は天野君が他の女性の方に惚れないと信じてもよいのでしょうか?』
……まず最初に言わせてほしい。俺が他の女子と仲良くしてるのが嫌なら姿を現せや!
そして、それよりも気になるのが、俺達があの神社に行っていたことをなぜ知っている?あの神社は夏音のイチオシスポットで観光サイトなどにはあまり載ってない。実際に俺達が行ったときには他の生徒の姿は無かった。というか、あのときはほとんど人がいなかった。
答えは簡単だろう。許嫁の子は単独行動をして、俺たちを尾行していたということだ。仮にグループ単位で俺達と同じ場所へ行っていたなら、グループ全員が俺達から隠れながら行動しなければならないからな。
とりあえず明日、宇佐美達に相談してみるか。みかんも送ったときにはすっかり元気だったので明日は心配要らないだろう。
翌日、手紙を持って学校へ到着した俺は下駄箱で上履きに履き替え、履いていた靴を中に入れ……られなかった。
そこには封筒が入れられていた。またですか……
俺はその場で封筒を開け、中の手紙を取り出す。
『最近、尾栗夏音さんと距離が近すぎではないですか?私、天野君が浮気するのは許せません。今後は控えて欲しいです
追伸:私は"泣き虫"なので優しくしてくださいね?』
ついに動いたか俺の許嫁。
しかし、この手紙にはいくつか気になる点がある。
一つは、許嫁の手紙には今まで追伸なんて無かったのに、このタイミングで初めて追伸が書かれていること。
そして、もう一つ、泣き虫の上に" "が付いており明らかに強調されていること。
恋のライバル?的な人物が現れて焦っているのだろうか。今までとは違った雰囲気のある手紙だった。
とにかく、この事も2人に話さないとだな。