1-2 かくれんぼ(裕太の場合)
俺は今、体育倉庫に来ている。入学早々隠れる場所なんて思い付かないので、物が多そうなこの場所をチョイスしたわけだ。
ちなみにかくれんぼのルールだが、宇佐美が仕切って、すぐに決まった。
・鬼はじゃんけんで負けた伊須が担当。
・隠れる時間は10分
・制限時間は30分で、もし見つからずに30分たったら元の教室に全員集合。
・他クラスの教室、理科室などの特別授業の教室とその準備室、その他立ち入り禁止の場所に隠れるのは禁止。
と、こんな感じだったかな。
そして、これはおまけだが、鬼が負けたら残った人の言うことを何でも1つ聞く、逆に鬼が勝ったら鬼の言うことを何でも聞く。というルールを「普通にやってもつまんない」という伊須が追加してきた。
初対面だしジュースを奢る程度だと思ってはいるが、あの360°どこから見ても陽キャの伊須のことなので少し不安だ、見つからんようにしようか……
校庭は隠れる場所なんて無いし、体育館にはさっき行ってみたが入学式で使ったパイプ椅子などの片付けを行っていたのでやめておいた。校舎裏や屋上など普段人の来ないところは、もし探しにこられたら1発でアウトなので、体育倉庫に来てみたわけだが、よくよく考えればここもいい場所とは言えんな…
しょうがないが、もう隠れる時間もわずかだしここにするかな。
とりあえず、俺は積まれた跳び箱の中に身を潜めた。
隠れてから5分が経った。そして、俺は今、ものすごく不安です……見つかることに対してではなく、ここに隠れてることに不安を感じています……
ここに隠れたのはかなりまずかった。というのもここは体育倉庫。跳び箱の段の隙間からチラチラと外を見るが人が来る様子がない。こんなところにあと25分もいたら、いつか体育倉庫の鍵を閉められて出れなくなるっていう、あのお約束の状態になりかねない。
見つかるのを覚悟で隠れる場所を変えようかと悩んでいると、人の来る気配がした。
(あ、もう探しに来たのか?)
と、思ったが入ってきたのは運動着を着た男子生徒2名。この学校の運動部ってところだろう。2人はサッカーボールの入った籠を倉庫から持ち出していった。
運動部が活動してるならこの倉庫、しばらくは開けたままだろう。とりあえず一安心。
さらに時が経ち、残り時間は10分他のメンバーは見つかってしまったのだろうか。というか、サッカー部員の2人が来てから誰も来なくて正直、暇である。
と、そのとき。
「うーん、あと探してないところって言ったらここくらいかねー?しかし、夏音はすぐ屋上で見つかったけど他の2人はどこに隠れたのやら」
「さぁ、私も始まってからはあの2人は見てないな」
伊須の声だ、ついでに尾栗も一緒だ。見つかったのは尾栗だけみたいだな。宇佐美ナイスだぞ!
「あのね、みかんちゃん。さっきの話なんだけどね……」
「ん?あぁ、前にお世話になった好きな人の話?」
(は?尾栗に好きな人だと?)
ずっと伊須の後ろに隠れてたじゃないか。そんな内気な尾栗に好きな人だと?
てか、これ俺が聞いちゃ不味くないか?
かといって、ここから出ていくわけにもいかんな……なんとしてでもやり過ごさんと。
残り時間10分、体育倉庫が一瞬にして修羅場と化した。