1-19 初デート
「えー、今日はこれでおしまい。ゴールデンウィーク明けは校外学習だから間違って学校にくるんじゃないぞ。それじゃ、さよなら」
そう言った、先生が教室を出ていくと同時に、みかんが俺に映画のチケットを渡してきた。
「裕太君、これ、今度やる映画のペアチケットあたし用事あって行けないから、よかったら夏音と2人で行ってきなよ」
「だってさ、夏音どうする?」
「いいんじゃない?せっかくだし行こうよ」
「じゃ、お2人でデート楽しんできてねー。それじゃ、あたしバイトあるんで、お先に」
「デ、デートって、もう、みかんちゃんったらー」
夏音は立ち去ろうとするみかんに向けて真っ赤な顔で反抗する。この光景も見慣れたもんだ。
「それじゃ、俺からも、食事券やるよ。デート楽しんでこいよ。じゃ、さよなら」
「もう、迅君までー」
宇佐美もいつも通りからかうとそそくさと教室を出ていった。うん、この光景も見慣れたもんだ。
みかんがからかい、宇佐美が追い討ちをかけ、夏音が赤くなる。見事な3連コンボだ。
映画の日、俺は約束の待ち合わせ場所で待っていると、夏音が時間通りにやって来た。時刻は午後3:00、映画は4:00からなので十分間に合うだろう。
そういえば、夏音の私服見るのは初めてだな、宇佐美とみかんは恋の作戦会議のときに見たけど。それに今日は一応デートということになってるし夏音はおしゃれをしてきている。俺は服のことはよくわからんが、とりあえず誉めておくか。
「そのワンピース似合ってるな」
「そ、そうかな?ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいな」
まるで台詞のような感想だったが喜んでもらえてなによりだ。
「映画面白かったね」
「あ、あぁ。そうだな」
映画を見終えた俺達は、感想を語り合いながら宇佐美にもらった食事券の店に向かっているところだ。
ちなみに映画の内容なんだが,,,,,,内容はとてもいい内容だったと思う。だが、俺にとってはそうじゃない。
俺達が見た映画は主人公のことが好きなヒロインの恋愛相談を主人公が偶然聞いてしまう。というものだった。まんま俺じゃん。そう思っていると、なかなか集中して見ることが出来なかった。
その主人公は他に想いを寄せている子がいたのだが、さまざまな葛藤の末ヒロインの女子に告白してハッピーエンド。
コメディ要素のある恋愛ものが好きな人にとっては良作のような気がする。俺はラブコメというもの自体、嫌いではないがピンポイント過ぎる設定に困惑してしまった。さてはみかん、はめたか?
なんて、思っていたが夏音とディナーを食べているうちに、どうでもよくなった。だって、ここの料理めちゃくちゃ美味しいじゃないですか。
「これ、凄く旨いな」
「そうだね。凄く美味しい」
夏音もとても美味しそうに食べている。
「今日はありがとね。裕太君と一緒で楽しかったよ」
少し恥ずかしそうに言う夏音が可愛い。思わずドキッとしてしまった。
ディナーを終えた俺は夏音を最寄りの駅まで送ると、タイミングよくメッセージの着信が届いた。
『デートどうだった?』
みかんからか、1つ聞きたいことがある。
『あの映画はなんなんだ!』
『裕太君達みたいでしょ?いいかなぁって思って選ばさせていただきました』
いいかなぁ、じゃねぇよ。っていうかお前が選んだんなら用事で行けなかったんじゃなくてもともと俺に渡すつもりだったってことだろ。
まさか、宇佐美も?
『まさか、また裏で仕組んでないだろうな?』
『ご名答』
ですよねー、まあ、しかし楽しめたのは事実だ。
あとで2人に『ありがとう』と送っておくとしよう。