1-12 頼れる妹
「それ、使えるな」
俺の言葉に2人は揃って「えっ?」と反応する。
俺のプランはこうだ。
まず、宇佐美の言う通り初めから夏音の恋のキューピットをやってもらう。ここまでは同じだ。
ただし、告白やらの後押しをするのではなく、あくまでも俺と夏音の距離を縮める程度。俺と距離が近い他の女の子が現れれば許嫁も黙ってはいないだろう。
この学校の1年生は俺たちを含めても150人、その中の女子生徒となるとその半分ほどだ。そのうち俺の側に現れるだろう。まだ、卒業までにはたっぷり時間がある。じわじわと炙り出してやろうではないか。
「そんな作戦で大丈夫なわけ?」
「わからん。でも他の作戦を思い付かない限りはこれでいく」
もともと、許嫁に説得してダメならキューピットをお願いしていたがここまで頑固な許嫁が説得に応じるとは思えない。ならば最初からキューピットを頼むまで。
結局、他の案は思いつかず、俺達は解散した。
家に帰ると、妹の涼葉が台所からお玉を持って出迎えてくれた。
「裕兄おかえり」
「ただいま涼葉。今日はカレーか?」
「うん、今煮込み中」
玄関のドアを開けたときからいい臭いがしていたので涼葉に確認してみたところやはりカレーだった。
「涼葉のカレーは美味しいから楽しみだな」
「もぅ、裕兄ったら。誉めても何もでないよ?」
そう言いながら涼葉は後ろで束ねた髪を揺らしながら台所へ戻って行ってしまった。
涼葉は俺の1つ下の妹で、今は涼葉と2人で暮らしている。父さんは仕事の都合で2年前から各地を転々としている。母さんはその付き添い。母さん曰く1人で家事の出来ない父さんを1人にしておけないとのこと。2年前に「涼葉と裕太ならこの家を任せられるわ」と言って家を出ていったのを今でも覚えている。
実際、涼葉は料理はもちろん家事全般をそつなくこなす。俺も一応、料理は出来るのだが涼葉が「自分で作った方が美味しいから」と言うので任せている。
兄妹としては仲のいい方だと俺は思うが、恥ずかしいのか涼葉はこの手の質問には「別に、普通」と答えてるらしい。そういうところも俺は可愛いと思う。
ちなみに、許嫁の件は知っていて、たまに相談にのってもらうと「裕兄は大変だね」と、同情してくれる。
夕食のときに昨日と今日のことを涼葉に話すと、いつものように「大変だね」と同情してくれた。
やっぱり涼葉は俺の癒しだ。