1-11 恋のキューピット
隣で気絶していた宇佐美を叩き起こし、落ちついたところでもう一度事情を説明したところ、宇佐美は「面白いことになってるな」と軽いノリで言ってきた。
説明の途中で再び気を失いかけていたがその度に、両肩を強くグラグラさせたり、軽くビンタしたりしたのでなんとかなった。
足枷を外すことに協力して欲しいという件についてだが、「具体的にどうするの?」と、みかんが聞いてきた。
「まず、許嫁の人を探して欲しい。説得できればそれでおしまい。無理なら夏音の恋のキューピットになって欲しい」
「自分との恋のキューピットをお願いするって……」
「裕太って変な性格してんな……」
真面目な話をしていたつもりだが、2人はニヤニヤしながら俺をからかってくる。言いたいことはわかるが俺からアクションを起こせないんだからしょうがないじゃないか。
「じゃあ、とりあえず、織田郁李さんを見つけて捕まえればいいんだな?」
織田郁李は俺の許嫁の名前だ。その人を捕まえれば説得することは出来る。が、俺は宇佐美に対して横に首を振って答える。
「いや、織田郁李は偽名だ。入学生の名簿を見たが『織田郁李』という人物は居なかった。名字が変わったのかもと思ったが、『郁李』って人も『いくり』と読める名前の人も居なかった」
手紙の名前は本名だと思い、俺も手紙に本名を書いてしまっている。その上、向こうは本名を隠しているので仮に「君、俺の許嫁だったりする?」と聞いて回る最終手段を取ったとしても、はぐらかされてしまうかもしれない。
まあ、恥ずかしくて死ねるのでやらないけど。
「じゃあ、どうするの?」
「そこなんだよなぁ」
俺とみかんが「う~ん」と考えていると宇佐美が「こんなのはどうだ?」と案を持ち出してきた。
宇佐美の案はこうだ
宇佐美とみかんが最初から夏音の恋のキューピットになって告白できそうなシチュエーションを作る。
夏音が告白をするタイミングで宇佐美がその妨害、みかんがその様子を見ているであろう許嫁を探す。というものだった。ちなみに妨害するのは、ここで告白されても答えはNOになるから。
「妨害って……なにする気?」
「例えば、誰もいなくなった放課後の教室を舞台にするとするだろ?2人がそこでいい感じになれば、夏音ちゃんが告白すると思うから直前でドアを開けて忘れ物取りに来たーとか」
「いや、普通に可愛想でしょ。それに、あたしがどうやって許嫁の人を探すって?」
宇佐美案は数分で撃沈した……ように見えたが、
「いや、それ使えるな」